クラシックなアイテムと精密なテーラリング、アウターウェアとイブニングウェアの大胆かつ意外な組み合わせで審査員を魅了し、LVMHプライズ2022のセミファイナリストに選出された「メリル ロッゲ(Meryll Rogge)」。デビューから4シーズン目を迎えたばかりにもかかわらず、既にネッタポルテ(NET‑A‑PORTER)やエッセンス(SSENSE)、ノードストローム(Nordstrom)、マックスフィールド(Maxfield)など、一流の小売店で取り扱われている。日本国内初となるメディア関係者向けの展示会がPred PR主催で開催されたことで、国内でもじわじわと注目を集めている。
同ブランドのデザイナーを手掛けるメリル・ロッゲは、アントワープ王立芸術アカデミー在学中に「マーク ジェイコブス(MARC JACOBS)」でキャリアをスタート。その後「ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)」のデザインチームに在籍。4年間ウィメンズ部門のチーフデザイナーとしてコレクションに携わった後、世界的パンデミックの中、2019年に自身のブランドを立ち上げた。
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大阪の気鋭セレクトショップ「ヴィジットフォー(VISITFOR)」は、同ブランドの2シーズン目から取り扱いを開始。2シーズン目となる2021年春夏コレクションが発表されたのは2021年1月。コロナ禍の影響で新しいブランドの買い付けを控える店舗が多い中、メリル ロッゲとの取引を決めた経緯についてディレクターの西脇智子氏は「当時は今よりも先行きが見えず、市場も読めなければ今後のファッション業界がどうなっていくかもわからなかった」と振り返る。その上で「そんな中デビューしたメリル ロッゲは今後の『ファッションの希望』とも思える意欲的なもののように感じた。強烈に新しい感覚のデザイナーが現れたことを私たちを含め、多くのバイヤーやジャーナリストが見て感じ取ったのでは」と付け加えた。
メリルロッゲの特徴の1つに、1型1色のみの展開が多いという点が挙げられる。1型に対して複数色を用意する一般的なブランドとは一線を画す同ブランドのクリエイションを西脇は「誰かのクローゼットを覗き見ているかのよう」と形容。続けて、同ブランドの魅力について「良い意味でブランドビジネスやシステムを感じさせず、誰しもが通過したファッションへの目覚めを感じさせる」と話した。
メリル ロッゲが提案するアイテムは、大人になった今、忘れかけていた感覚を巧みに表現するアイテムの数々だと感じます。アルバイトをして購入した憧れのブランドの服を大事に着ていた記憶や、母親のクローゼットからブローチを借りた日のこと、駅前の雑貨屋でカラフルな靴下を選んだことなど、誰しもが共感するであろう「服に目覚めた時の衝動」「日常的に経験したファッションへの憧れや自己主張」を思い出させてくれるのではないでしょうか。
ーヴィジットフォー ディレクター西脇智子
サッカーユニフォームを彷彿とさせるドレスや、一見毛布をまとっているかのように見えるアウターなど、アイテムの随所に再構築的なアプローチが取り入れられているのも魅力の1つだが、あまり難しく考えずに感覚的に楽しむことができるのも多くの人がメリル ロッゲに惹かれる要因だろう。同ブランドが提示する「ファッションを楽しむためには難しい解釈や、言葉での説明は必要ない。服を使い、愛することは言葉で説明する必要がない」というメッセージは、2022年春夏コレクションのテーマ「All talk!(口先だけの人!)」にも通じる。
また西脇は、同ブランドのルックブックにも注目。「メリル氏が提案するスタイリングは思いがけない組み合わせだが、意外と誰もが知っているものを使用している。きらびやかなイブニングドレスやクラフト感のあるニット、ワークウェアなど、あらゆるファッションディテールは、メリル氏のデザインを通せば決して懐古的にはならず、創造的なスタイリングになる」と分析。「素材や品質に対するこだわりやシルエットの追求はすべての人を満足させると思う」と付け加えた。
ヴィジットフォーでは、シャツを約6万円〜10万円、ボトムを約10万円から、アウターを約30万円から販売しており、決して安いとは言えない価格設定であるにもかかわらず、消化率が非常に高いという。フラワープリントが施されたカットソーや、ニットなど幅広いジャンルのアイテムが早々に動き、特に2022年春夏シーズンのアイテムは既に消化率80%と売れ行き好調だ。また、男性からの反響も多く、アクセサリーやキャップなどの小物アイテムを中心に買い求める人が後を絶たないそうだ。同店では引き続き2022年秋冬コレクションの展開も予定している。
ヴィジットフォーで特に人気のあるアイテム
Image by: visitfor
現在、メリル ロッゲの国内セールスを担当する企業はいないが、今後の日本国内外での活動に注目が集まる。
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