知らないブランドを知ること、ファッションの再構成 vol.3 pillings、SARTOGRAPH
pillings 2022-23年秋冬コレクション
Image by: FASHIONSNAP(Ippei Saito)
pillings 2022-23年秋冬コレクション
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知らないブランドを知ること、ファッションの再構成 vol.3 pillings、SARTOGRAPH
pillings 2022-23年秋冬コレクション
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「リョウタムラカミ(RYOTAMURAKAMI)」が新しい形の組織を作り、pillings(毛玉の意)という、いかにもニット愛が詰まっているような名前のブランドを2019年春夏にスタートしたことを、私は知らなかったため、3月18日も知らないブランド=pillingsを見るつもりでヒカリエにやってきて、入り口で知って驚いた。が、虚心坦懐な気持ちで鑑賞。そして、かつてお母さんと一緒に作品を作り、それをリョウタムラカミという名前で発表するという現代離れした(というか、ファッション界では珍しい)アティテュードを持った村上亮太さんが、その後、その特異性を失わずに、ニットの技を磨き、かつ、社会にも目を向け、人々を巻き込んで成長しているようなのを見て、なんとも微笑ましい気持ちになった。
ヒカリエでのショーの後は、ジャーナリストのための囲み取材があり(オンライン配信では、ごく一部を除いてこの機会がないことがとても残念)、村上さんは、大変雄弁だった。これもデザイナーとして発展していくためには重要なことだ。
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ショー会場には、グランドピアノが天井から逆さ吊りにされていたのが印象的だったが、この弁明もあった。いわく、ルール通りに正確に弾かなければならないピアノは、それが苦手だった自分にとっては、社会(性)のメタファー(かなり個人的な理解だ)で、かたや、その圧力の元で繰り広げられるランウェイショーは理想を表しているそうだ。
登場するニット作品は、一つ一つの完成度が高く、創作の強さを感じさせるコレクションだった。よく見ると、作品には、蟻をはじめとする虫がたくさん出てくる。フィナーレは、蟻がグランドピアノを埋め尽くす作品だった。これも、理想と現実(社会)というテーマの中に組み込まれるもので、社会性のある虫として蟻を選んだのだそうだ。話を聞くと、太宰治が好きで、社会に適応できない生きづらさを抱えた人間像がコレクションには潜んでいるようだったり、「道に迷っている人」がテーマだったり、掘るといろんなものが出てくるようだった。
しかし、そういうことを聞かなくても、ショーは十分見る側に訴えかけた。技術的なレベルの高さが、「ユニーク」「かわいい」といった即応的でない反応を引き起こした気もする。ニットという、プリミティブでありながら、サステナブルな視点からも再評価されている手法を選んだ意味は大きい。pillingsのコレクションは、既製服ではなく、オーダーメードの作品として販売されるそうで、それもまた興味深い。全体に抑えた色調、全員メガネをかけたモデルの存在感のおもしろさも、特筆したい。
Image by: SARTOGRAPH
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もう一つの正真正銘の「知らない」ブランドは、「サートグラフ(SARTOGRAPH)」だ。これは、同じ日のコレクションをオンライン配信で次々に見て、とりわけ興味を持ったブランドだった。実物を見たことがないので、レビューは印象記になってしまうが、pillingsとは対照的に、SARTOGRAPHは、サルトリア(テーラリング)という言葉を内包しているものの、1点ものではなく、プロダクトデザインとしてのファッションを作り上げようとしているようだ。JFWの公式サイトのブランド紹介のところでも「テーラリングとワークウェアの要素をミニマルな世界観によって再構築したスタイルを提案」と書かれている。
Image by: SARTOGRAPH
Image by: SARTOGRAPH
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ショーは、オレンジの衝立が並んだワクチン接種会場のような白いスペースで、アップテンポの無機的なミニマルミュージックをバックに4人のモデルが急ぎ足で駆け抜けるスタイル。これは前シーズンと同じパターンだ(ということは公式サイトで確認)。スタイリングを構成するのは、秋冬シーズンらしく、ロングコート、ノースリーブのテーラードコート、テーラードジャケット、ロングシャツ、モッズ風のスタンドカラーのコート、細いパンツとワイドパンツ、中に着たカットソーやニット類、それから、アクセサリーとしてのパーツ服、グローブ、バッグ、ベルトなどだ。色は、黒、ネイビー、グレー、ベージュに挿し色として、オレンジ、ライトブルー、グリーンなどが使われている。シャツの胸から上だけの部品のような服は、コートの上に合わせているのに、シャツを中に着ているようにも見えて、一種のトロンプルイユのような効果がある。オフィスに着ていくことを想定されて作られた日常服のようだけど、サラリーマンの服装を変えるきっかけになるかも、と想像しながら視聴した。素材や着用感、サイズ感は、今度アトリエで見せてもらう。
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