バーチャルフィッティングは衣服だけでなく、ピアスやメガネといったアイテムでも展開されてきた。そこにジュエリーの試着体験をもたらしたのが「ENCODE Koala」だ。従来の2D画像を当てはめる試着とは異なり、手を自動でトラッキングすることで、あらゆる角度から装着イメージを確認することを可能としたWEBアプリケーションである。
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このサービスを提供したEncodeRing株式会社は、2016年の創業から3Dを活用したジュエリーの製造に取り組んでおり、デザインアプリケーションの提供や3Dデータの製造の効率化など、現実の商品とデジタルデータの融合に尽力している。今回、代表取締役の角村嘉信さんに、ENCODE Koalaのサービスとデジタルフィッティングの可能性についてお伺いした。
実際の試着感を追求
「ENCODE Koala」は、指の位置を読み取ることで、リングの3Dモデルを試着することができるWEBアプリケーションだ。操作は非常に簡単で、自分の指をカメラに写すとアプリケーションが指を認識し、3Dモデルのリングが装着される。リアルタイムで指をトラッキングするため、指の角度や向きによってリングの角度も変わり、よりリアルな試着を体験することができるという。
その特徴は「世界初のAIをベースとしたジュエリーの試着シミュレーション」にあり、様々な角度から立体感のある試着イメージを確認することができる。現在開発している技術は、生成した3Dモデルを原寸大で表示し、サイズの装着感も具体的にシミュレーションできるようになるようだ。
気になる点は、試着できるリングの種類だろう。現在、デモページで公開されているものは、EncodeRing株式会社でデザインしたものであり、連携しているジュエリーデザイナーや3Dデザイナーが作成・公開したものとのこと。しかし、すでに3Dモデルを所有している企業については、その3DデータをENCODE Koalaのページにアップロードすることで、すぐに専用の試着ページを作成できるようになっているという。
本サービスは専用のアプリケーションを使用する必要がないため、SNSの投稿やウェブサイト、ネットショッピングやカタログからスムーズに試着ページに移行して試着することができる。
バーチャル試着の課題を克服するために
今日使用されているジュエリーの試着アプリは、手を撮影し、撮影した写真にリングの画像を重ねて確認するという2Dによるものが一般的だった。しかし、この方法では実際の装着感とは異なり、立体感のない試着イメージになるということが問題だったという。
2016年の創業以来、EncodeRing株式会社は一貫して3Dを活用したジュエリーの製造に取り組んできた。3Dモデルの自動生成から製造オペレーションの効率化など、ジュエリー製造に関するシステム化を進めるなかで、上記のバーチャル試着の課題を発見したとのこと。
実際、この課題を克服するためにはいくつかの壁があったようだ。当初は、マーカーベースのARを活用しようとしたが、マーカーを試着すること自体が面倒な作業であるため、画像認識を応用することになったという。だが、すぐに課題が解決したわけではなかった。マーカーを使用せずに指を探知させるためには、そもそも特徴点が少ない指をどのように認識させるかが課題としてあったからだ。これに対し、昨今のHMD(ヘッドマウントディスプレイ)などで使用されるハンドトラッキングの技術が進化したことにより、それを応用することで実現可能になったようだ。
創業時からジュエリーに関するノウハウを蓄積しているからこそ開発できた技術であり、今回のサービスによって自宅で装着できるようになれば、ジュエリーのEC化を加速する契機になることが期待されている。
バーチャル試着がもたらす新たな未来
ECでの販売を進めるうえで、バーチャルフィッティングは不可欠な技術である。実際、ENCODE Koalaの魅力は3Dの試着イメージを得ることができるだけでなく、まだリアルに存在していない商品を試着することができることにある。そのため、カスタマイズされた商品の未来を切り開くものとしても考案されたものであるという。
これまでオーダーメイドのジュエリーの作成には、3DCADやラフスケッチによってお客とのコミュニケーションを図ることが一般的だったが、実際に物が出来上がったときにイメージと異なるという問題が発生していた。
しかし、昨今のデジタル技術の向上によって、バーチャルとリアルの境目がどんどん薄まっていくことで、現物とイメージのギャップを解消できることが予想されるという。
「ENCODE Koalaのようなバーチャルフィッティングの登場は、アプリやサイト内でデザインした1点ものを、よりリアルに試着でき、注文から短期間で商品が受け取れる、マスカスタマイズの世界の実現に貢献できるものであると考えております」
すでにジュエリーとテクノロジーを共存させる試みは進んでおり、音声波形から自動でアクセサリーをデザインする技術の提供やディープラーニングを用いたAIの開発によって、多様なリングのデザインとデジタルコンテンツの融合が図られているという。それにより単純に物を販売するだけでなく、より幅広い多種多様な体験を提供できるようになる。
「お客様が手軽に楽しくデザインを行い、試着をし、ただモノを買って終わりではなく、その先のデジタルコンテンツを楽しむといった、一通りのパッケージを構築してまいります」と語ってくださったように、今後デジタル技術の発達によって私達の購買体験がどのように変化していくのか楽しみである。
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