■アメリカの大手チェーンストアはアマゾン・プライムのようにサブスクリプションサービスをローンチする事例が相次いでいるが、コンビニエンスストア最大手チェーンもサブスクを開始した。
ADVERTISING
北米に約1.4万店を展開するセブン・イレブンは19日、宅配手数料が無料となるサブスクリプション「セブン・ナウ・ゴールド・パス(7NOW Gold Pass)」を始めたことを発表した。
ピザやホットドックなどのホットフードやコーヒーやコーラ等の飲み物の宅配サービスが無料で受けられるセブン・ナウ・ゴールド・パスは月額5.95ドルとなる。10ドル以上の注文が必要だが、セブン・イレブンが扱う約3,000品目の商品が対象となる。
多くのサブスクリプションに特典があるように、セブン・ナウ・ゴールド・パスでも1件の注文毎に例えば人気のフローズンドリンク「スラーピー(Slurpee)」が無料(小サイズ)になるなど無料商品がつく。
また会員になるとポイントカード「セブン・リワード(7 Rewards)」のポイント付与率が2倍となる。セブン・リワードはセブン・イレブンでアプリを介して買い物するとアプリ上でポイントを貯められるのだ。
アプリを介して買い物をすると会員には一部、ディスカウントも提供されるという。他のサブスクリプションと同様、14日間の無料お試し期間もある他、今後も特典が付加されそうだ。
ここ最近、大手チェーンストアは次々にサブスクリプションをローンチしている。
スーパーマーケット最大手チェーンのクローガーは昨年11月、サブスクリプション・サービス「ブースト(Boost by Kroger)」を発表した。
クローガー本社のあるオハイオ州シンシナティの他、コロンバス、ジョージア州アトランタ、インディアナ州インディアナポリスなどで始まったブーストは年会費59ドルと99ドルのメンバーシッププログラムだ。
35ドル以上の買い物で59ドル会員は24時間以内の宅配サービスの手数料が無料となり、99ドル会員は最短2時間の宅配手数料が無料となる。
2つのサブスクリプションには食品スーパーに併設されている約1,600ヶ所のガソリンスタンドでのディスカウント特典もある。
入会者にはミールキットのホームシェフやクローガーPB、マレーズ・チーズなど100ドル相当の商品が進呈されるのだ。
その3ヶ月前には競合で全米第2位のスーパーマーケットチェーンであるアルバートソンズもサブスクを開始した。
年会費99ドル(月額は12.99ドル)の「フレッシュパス(FreshPass)」はカーブサイド・ピックアップの「ドライブアップ&ゴー(Drive Up & Go)」と、対象となる地域の2時間宅配サービスが手数料無料(最低購入額30ドル)で何度でも受けられるサブスクリプションだ。
フレッシュパスでは、アルバートソンズのオーガニック食品のプライベートブランド「オウ(O)」や無添加食品PB「オープン・ネイチャー(Open Nature)」が5%引きとなる。
フレッシュパスに加入すると初回のみだが75ドル以上の買い物には20ドルの値引きとなる特典がある。フレッシュパス会員用に毎月、値引きも実施されることで年間に数百ドルを節約可能だとしている。
フレッシュパスにもポイント・プログラム「アルバートソンズU(Albertsons U)」があり、支払い金額に応じて還元する。貯まったポイントは買い物時に値引きに使えるほか食品スーパー併設型のガソリンスタンドでも利用が可能となる。
アルバートソンズUは、フレッシュパス会員用に毎月の無料品進呈や誕生日プレゼントなどの特典がある他、加入すると初回のみで25ドル以上の買い物で5ドル引きとなるオファーも含まれる。
サブスク会員には付与率も増加する機会も与えるのだ。
チェーンストア最大手のウォルマートには2020年9月から開始したサブスクリプション・サービス「ウォルマート・プラス(Walmart +)」がある。
年間98ドル(月額12.95ドル)となるウォルマート・プラスはアマゾン・プライムに対抗する有料のメンバーシップ・プログラム。
スーパーセンターにある食品や日用品、オモチャ、家電品などを対象に無制限で無料で当日宅配を受けられる他、ガソリン割引や店内での買い物時で利用者が商品バーコードを専用アプリでスキャンしながら決済を終える「スキャン&ゴー(Scan & Go)」も特典となっている。
ウォルマート・プラスはローンチ直後、配送無料の条件にしていた購入額35ドル以上を撤廃し、昨年6月には処方薬の割引特典を付加している。
この特典ではウォルマートの薬局で処方薬を購入すると一部の処方薬が無料となるほか、その他数千種類の処方薬が最大85%引き、平均65%引きで購入できる。
昨年の年末商戦では、ブラックフライデーやサイバーマンデーのセール開始時間で、4時間早いアクセス優先権をプラス会員に与えた。プレステ5など人気商品もプラス会員は入手できる機会を与えられていたのだ。
食品以外ではベストバイやベッドバス&ビヨンドでもサブスクリプションを提供している。相次ぐサブスクリプションのローンチで、サブスクを軸にした成長戦略が浮き彫りとなっているのだ。
⇒こんにちは!アメリカン流通コンサルタントの後藤文俊です。何度も強調しておきたいことは大手チェーンストアの成長戦略は多店舗展開よりDXであり、サブスクリプションだということです。日本の流通ビジネス関係者にこれについて強調しすぎることはないと思っています。なぜなら遅れているから。後藤が当ブログで「これからはサブスクだ」と主張して以来、大手チェーンストアは次々にサブスクリプションをローンチしています。チェーンストアを学んできた方の中にはこれを受け入れられない人もいると思います。なぜなら、これこそが後藤が喩え話として用いる「巨人ファンが阪神ファンになる」ような受け入れがたい変化だからです。自分も回りも容認できる変化は、変化でありません。流通関係者でも特に年配者が眉をしかめるようなことが、変化となるんですね。最もわかりやすいのが専門家となる流通コンサルタントです。これまでチェーンストア理論を教えてきた先生方にとって「阪神ファンが巨人ファンになる」ほどの変化レベルのサブスクなんて到底受け入れられません。
高齢のコンサルタントがこれまで言わなかったことを言い始めた時が日本でも変化を目の当たりにする時です。ただこれはまだ先です。
ADVERTISING
PAST ARTICLES
【激しくウォルマートなアメリカ小売業ブログ】の過去記事
RANKING TOP 10
アクセスランキング
銀行やメディアとのもたれ合いが元凶? 鹿児島「山形屋」再生計画が苦境