種子鋏&伊東屋のペン
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本明:新聞の記事とか気になる箇所に線を引いて、スクラップしているんです。そのときに使っているペンとハサミです。伊東屋のオリジナルのペンに、大人の鉛筆シリーズの替え芯。芯が柔らかくて線が引きやすいんです。
F:スクラップは何年くらいしているんですか?
本明:たぶん20年はやってますね。40冊くらいになっているから。情報をなるべく知識として残しておきたいので、例えば「こうやったら儲かる」とか「これはやっちゃだめだ」みたいなものをメモしていたり。一回読んだ記事もスクラップして寝かせておいて、半年後とか1年後に見返すんです。そうすると、これは外れてるやんとか、なんでこの人この時こんなこと言ったんだみたいなことを分析できて。そうすると判断の精度がだんだん上がってくると僕は思っているんですよ。
F:伊東屋のペンは年季が入っていますね。
本明:5年くらい使ったので先が曲がっていて、なかなか芯が出てこない(笑)。だから今年新しいものを買い直しました。書かないと忘れるタイプなので、使用頻度はとても高いです。それこそ立花隆さんみたいな頭の良い人は忘れないんだろうけど。そう言えば、あの人の文藝春秋をやめるときの本が読めないっていう文章を読んだら涙が出ましたね。
F:ハサミにも拘りがあるんですか?
本明:種子島のハサミで、何故これを使っているかというと種子島って鉄砲が伝来したので鉄が凄く有名なんです。だからこのハサミはめちゃめちゃ切れるんですよ。
F:種子島で購入したんですか?
本明:種子島までは行かないですが、鹿児島の刃物屋で買っています。京都の「有次」にも知り合いがいて、行ったら色々買っちゃう。だから家に殺人鬼かというくらい包丁があります(笑)。妻がニューヨークに住んでいて、一人で暮らしているということもあってすぐに錆びるんですよ。だから「平常一品」のコーティングしているものをよく買っています。まな板はイチョウの木のものを使っているんですけど、イチョウの木の幹の真ん中は赤身で外側が白い。赤身は油分が多いので水切れが良くてカビにくいんです。
種子島本種 池浪刃物製作l所 種子鋏(たねばさみ)黒仕上げ 6寸木箱入り 鹿児島県指定伝統的工芸品
ブランド: 種子島本種 池浪刃物製作l所
メーカー: 種子島本種 池浪刃物製作l所
価格: ¥6,160(2021/12/13現在)
北星鉛筆 大人の鉛筆 替え芯 5本入り 赤 OTP-200RD 2個セット
ブランド: 北星鉛筆
メーカー: 北星鉛筆
価格: ¥604(2021/12/13現在)
コップ&やかん
本明:これは夏ぐらいに買いました。コップは取手なしを今年買いましたが、取手があるものも持っています。
F:なぜ今回は取手なしを?
本明:取手なしのほうがすぐに掴めるから良いんじゃないかなと思って。実際に取手なしのほうがよく使っています。
F:これで何を飲むんですか?
本明:毎年しそジュースと梅ジュースを作っているんですよ。しそを煮込んで、酢と砂糖を入れて、それをずっと寝かして。梅ジュースは梅と角砂糖で作っています。お酒を飲まないので、梅酒じゃなくて梅ジュースなんです。
F:年中しそジュースと梅ジュースを飲んでいるんですか?
本明:そうですね。冬は暖めて飲んでいます。そのときは古伊万里の蕎麦猪口のような大きな物で飲んでいて、蕎麦猪口も結構な数があります。兎にも角にも集めるのがどうしても好きなんですよ。で、よく割ります(笑)。例えばコンビニとかで点数を集めたらフランダースの犬とかラスカルの皿が貰えるとかあったじゃないですか。ああいうのって落としても割れないんですが、古伊万里は割れる。京都の八坂神社の近くにある「いづ重」っていう鯖寿司のお店があるんですけど、古伊万里のうつわが壁に並んでいて金継ぎしているんですよ。そういったものが好きなんですよね。
F:美術品は買いますか?
本明:僕は使うほうが好きなので、日用品を中心に買っています。靴は履かないものもたまにありますが、それは商売の一つなので。”無いもの”が好きなんですよ。今年買ったわけじゃないので持ってこなかったんですけど、ナイキのスタッフにだけ配ったレザージャケットがあるんですけど、それを働いていた人に売ってもらったり(笑)。そういったものにしか価値がないんじゃないかと思ってしまうので、変なものばかり集まってきます。
F:実用に優れた工芸品が好きなんですね。ヤカンは何に使っているんですか?
本明:これで毎朝お茶を淹れて飲んでいます。
F:洋食器は買わないんですか?
本明:洋食器は興味ないんですよ。大正硝子とか江戸切子とかどうしても和物に。だから美術品だったら浮世絵が好きですね。
F:和服は興味ないですか?
本明:襤褸や刺し子はたくさん持っています。若い人は興味ないと思うけど、僕はそういうものは裏切らないと思っているので。今の生地は裏切りますけど、昔の生地は絶対に裏切らない。だから面白くないかなと思って今回は持ってきませんでしたけどデニムとかも買っています。でもダブルエックスのデッドストックとか言っても、持っている人は何人もいるだろうしなと思って。
F:買ったものは全て家に置いているんですか?
本明:家じゃなくて倉庫ですね。
F:アメリカの家に送ったりは?
本明:妻や子どもに見せたらゴミだと思われるからダメですね(笑)。このヤカンも「いくら?」と聞かれたので1万2000円くらいと嘘をつきました。本当は6万8000円なんですが、バレたら怒られるので(笑)。
F:記事が出たらバレてしまいますけど(笑)。
本明:そうですね(笑)。でも日本に来た時だけですから、「これなに?」「これいくら?」「ヤカンあるのに何で?」って聞かれるのは。僕はそんなに舌が肥えているわけではないので気のせいかもしれないですけど、安いヤカンだと美味しくないんですよね。これは沸くのも早いような気もします。
井筒俊彦「意味の深みへ」&鈴木大拙「無心ということ」
F:以前から読書好きと言っていましたね。年間何冊ぐらい本を買うんですか?
本明:買うのは300冊くらいで、読んだのは120〜130冊くらいです。
F:今回のベストバイは井筒俊彦と鈴木大拙の書籍。
本明:鈴木大拙の幼友達が京都学派の西田幾多郎なんですが、西田幾多郎に感銘を受けた三木清たちが明治時代の思想を作りましたが、その大元になっているのが西田幾多郎ではなく鈴木大拙のこういった本だったんだと思うんですよ。今でいうフッサールやハイデガーとかの現象学のアイデアで、それを日本っぽく哲学したのがこういう人たち。井筒俊彦はアジアを全てまとめようとした人ですよね。岩波文庫のコーランは井筒俊彦が訳しているんですよ。
F:買うのは哲学書が多いですか?
本明:何でも読みますよ。金や土とかの話も好きですし、詩、小説、株などなんでも。
F:ビジネス書を読むことも?
本明:読みます。ちゃんとセオリーがあってマーケティングをしている人は参考になります。野中郁次郎が日本では一番好きです。あとは漫画も読みますよ。今年だったら怪獣8号とチェンソーマン。
F:漫画は意外でした(笑)。
本明:怪獣8号とチェンソーマンには似ているところがあって。冒頭から意味がわからないんですよ(笑)。例えば、最初からいきなり悪霊が出てくるとか。意味がわからないんですけど、今の世の中ってこんな感じなんだろうなと。意味がわかったらみんな読まないんだろうなって。実はそういったところは結構参考にしているんです。だから僕たちの活動も意味がわからないことが多かったんじゃないかなって。
F:最近だと各地で開催していた「カレー会」は変わった取り組みだなと思っていました。簡潔に言うとカレーを食べながらスニーカーについて語る会ですよね?
本明:そう。先週は北海道でやったんですけどやけに盛り上がりますよ。お店の人が早く帰ってくれと思うくらいに(笑)。
F:日課だと言っていたウォーキングはまだ継続している?
本明:そうですね。家から明治神宮外苑のイチョウ並木まで行って1周して帰ってくると4.8kmなんですよね。走ると息が上がって考えることができないので、1km10分ぐらいのペースで歩くのがちょうど良いんです。ちょっと汗をかきながら考え事ができる程度のペースというか。でもこの頃はやりにくいんですよ。アトモスを売却してから野村証券の人たちが家の前に朝の4時とかでも待っているのでね。若い人ではなく知り合いのおっちゃんに運用してもらいたいのでずっと断っているんですが。
F:改めて売却の決め手は何だったんですか?
本明:別に売っても売らなくてもお金には困っていなかったんですけど、ずっと一緒にやっている人から「今が一番良いんじゃないですか?」と提案を受けて。スニーカーも波があるので、もし今回の波が落ち着いたらもう一回盛り上がるまで何年もかかるからって。ナイキも売れるものばかり作っているからプレ値がつかなくなってきている。皆んな飽きてきちゃってるんでしょうね。
F:ナイキ以外のブランドが盛り上がって市場を支えていく可能性は?
本明:「ホカ オネオネ(HOKA ONE ONE)」や「オン(On)」といった、今までノーマークだったものが注目される可能性はあるかもしれません。メーカーさんと話をしていて思うのが、売れたという成功体験があるので昔のモデルのバージョンアップばかり出そうとしている。みんながみんな同じ方向を向いて昔のモデルばかりにフォーカスしているから、ちょっと違った靴を求める人が増えるんじゃないかなと。実際に「オールバーズ(Allbirds)」は、売り上げは350億円くらいだったのに株価は1300〜1400億円になっているじゃないですか。だからこれまでとは全然違ったところから出てくる可能性も大いにあるので、気をつけて商売しないと足元を掬われると考えています。
F:浮世絵を集めていると聞きましたが、今年は買いましたか?
本明:少しだけ。月岡芳年を集めていますが、本当に集めるんだったら歌川広重か葛飾北斎だよね。でも歌川広重の「名所江戸百景」でも全部で119枚ありますが、良いものを集めるとたぶん3〜4億円くらいかかると思うんです。葛飾北斎の「富嶽三十六景」で46枚。「神奈川沖浪裏」だけでも7000万円とかだろうから。集められないよね(笑)。
F:本明さんなら買えそうですが(笑)。
本明:いやいや。あとは時間が厳しい。やっぱり集めることに集中しないと。浮世絵を集めている人は浮世絵屋にいってオーナーと3〜4時間喋って、次のお店行って3〜4時間喋っている。そういう付き合い方をしないと欲しいものは出てこないんでしょうね。一番良いのはコレクターの人が手放すときに全部買うことで、それくらいしか集めようがない。でも海外のコレクターが1000億円以上のお金を使って集め始めているから、もうどうしようもない感じになっている(笑)。
F:実際にコレクターの人からまとめて買ったことはありますか?
本明:浮世絵ではないですがあります。例えば医者の蔵に入ると、昔の医者は全部瓶の中に薬品を入れていたから瓶がたくさん出てくる。大正ガラスとかも1個だと大したことないけど、100個あると話が変わってきますから。「シュプリーム(Supreme)」のボックスロゴTシャツを初代から全部集めたものがサザビーズ(Sotheby’s)で1億円超えで落札されましたが、1枚だったら10万円くらいですけど全部揃うことで価値が大きく変わる。例えばキューピーの人形でも300個並んでいたら凄いじゃないですか。そこまで集めるには凄く時間がかかるけど、お金と時間を注ぎ込めるのがマニアだし、そこがマニアの凄いところ。僕は商売が好きだから商売のオタクなんです。お金よりもお金儲けが好き。だから正直言ってどの通帳預金にいくら入っているか把握していない。フットロッカーへ売った分のお金も妹が銀行と話して決めてくれたんだけど、僕その通帳持ってないもん(笑)。
F:そりゃ野村証券の人も朝から待ちますね(笑)。
瑞穂の豆大福
本明:旅行に行くたびに、ご当地のものを食べに行っているんですが、多分僕はそれに一番お金をかけています。だから北海道に行っても行きは飛行機で帰りはだいたい電車。道中で色々食べながら帰ってくる。京都の「まるき製パン所」とか、盛岡の「福田パン」、広島の「もり」のお好み焼きとか。今日は原宿にいるので「瑞穂」の豆大福を持ってきました。原宿って名物がないんですよ。クレープは持っていけないし。だから原宿といえば「瑞穂」の豆大福だと思っています。
F:どれくらいの頻度で買っているんですか?
本明:10日に1回2個ぐらい買って自分で食べています。本当は、ご当地料理を東京に持ってきたり、海外に持って行って商売したいんですよ。鹿児島の「しろくま」は一度事務所に行って、東京でやらせてと頼んだことがあるんですけど、ダメだと言われました。
F:一番好きな食べ物は何ですか?
本明:京都にある「みよしや」のみたらし団子ですかね。お店は20時頃から不定期で営業しているんですが、めちゃめちゃ美味い。
F:ミシュラン一つ星のレストランなど高級店にも行きますか?
本明:絶対行かない。僕は安くて庶民的なところが大好きです。
F:都内を廻ることもありますか?
本明:ありますよ。谷中とか浅草とか。冬になると浅草に大学芋をよく買いに行っています。どうもそうしないと感度が鈍るというか。街も生き物だから、見ておかないと小売は上手く行かない。今原宿から新大久保に人が取られているので、よく新大久保にも行っています。何が原宿と違うのかを見て分析する。だから近くのご飯屋さんはほとんど行ったと思います。
今年を振り返って
F:今年の買い物を振り返ると、去年から変化はありましたか?
本明:特にないですね。靴は珍しいものがあれば買うというスタンスですし。でも今年は特に無いものブームだったから、去年と比べるとヴィンテージスニーカーの価格が2倍以上になっている。
F:それはナイキだけですか?
本明:ナイキだけ。ナイキのスニーカーがクリスティーズ(Christie's)などに出品されるようになり美術品みたいになってきた。アディダスは、ナイキの靴より歴史はあるのに、アディダスの靴の方が探しやすいんですよね。
F:マニアが少ない?
本明:そう。アディダスに皆んなが飽きちゃっているし、上手くいってない証拠だと思う。一次マーケットで上手くいかないものはヴィンテージでも上手くいかない。だからブランディングをしっかりしている「パタゴニア(Patagonia)」とかは、ヴィンテージ市場もだんだん高くなっています。
F:他に価値が高まりそうなものってなんだと思いますか?
本明:今、狙っているのは水沢ダウン。毎年水沢ダウンの10万円のものを買って寝かせているんですよ。あとまたデニムがきそうかなと。既に「リーバイス(Levi’s®)」のデッドストックは全然買えないような状況だけど、「リー(Lee)」とかもボチボチ売れそうだなと思っています。
F:来年買いたいものは?
本明:靴にデニムに、まあ”無いもの”を買いたいです。
本明秀文
Foot Locker atmos Japan 合同会社
atmos グローバル担当 / CEO兼チーフクリエイティブオフィサー
1968年生まれ。米フィラデルフィアの大学を卒業後、商社に2年間勤務。1996年、テクストトレーディングカンパニーを設立し、裏原宿にスニーカーの並行輸入店「チャプター」を開く。現在「アトモス」をはじめ、「アトモス ピンク」や「トーキョー23」などを運営。
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