「#GOVOTE」「#GoToVote」「#選挙に行こう」
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さまざまな社会課題に敏感と言われているZ世代だけでなく、クリエーターらを中心に盛り上がる「選挙に行こう」ムーブメント。
10月31日の衆議院議員総選挙に向けて、デザイナーやクリエーターらが自発的にポスターやステッカーなどを作成する動きが活発化している。
きっかけは、古くからの知人でクリエイティブカンパニー「メソッド」の代表の山田遊さんのSNSだった。
いま行くべきはTRAVELか、EATか。いや私たちは「選挙」だと思う。投票に新しいキッカケを作る非公式選挙グッズのポップアップストア「Go To VOTE」。選挙運動期間限定 OPEN。
そう書き込まれたSNSには速攻で多くの「いいね」が付けられていた。
ポスターは無料で配布中!
お店やおうち、お部屋で貼ってね。
具体的には、広告や商品開発のデザインの傍ら、自身の制作活動を続けているグラフィックデザイナー/イラストレたーの古谷萌さん( @study_and_design )による、日々直面する現代社会が抱える問題や矛盾に対し、自ら情報発信していこうというプロジェクト「vermilion(ヴァーミリオン)」ということで、「GO TO VOTE」というポスターやTシャツ、ステッカーなどを作成。もう終了してしまったが、東京ミッドタウンの「21_21 SHOP」では22日まで、また、メソッドが運営するギャラリー「CIRCLE」では投票日の前日の30日まで展示・販売されている。
ポイントは、Tシャツやステッカーは有料だが、ポスターは「取りに来てくれたら渡すので貼ってね!」と無料。そこには、「投票に行こうよ!」というメッセージを掲げて生まれたインディペンデントなアクション=アドボカシー(Advocacy)である点が新鮮だった。
その数日後の10月19日(火)にSNS等のタイムラインで知ったのが「#選挙ポスター2021」だった。目的はいたってシンプルで、31日に行われる衆議院議員総選挙の投票率を上げること、投票について改めて考えることだという。
投票に行くことを呼びかけるポスターを制作、またそのポスターを家や街中に貼ったり、SNSで拡散したりして、投票について身近な人と対話しよう、というもので、サイトをフォローしていたら、「私も参加しました!」「賛同します!」と、毎日参加するクリエーターさんが増え、あっという間に50人以上にもなっているのが興味深い。
また、実際に貼られたお店は北は北海道苫小牧市から南は沖縄豊見城市まで、カフェや書店、雑貨店など40以上。リンクを確認して、近所にお住まいの方はこれを機に見に行ってみてはいかがだろうか。ちなみに、ファッションのお店でもある京都の「コトバトフク」にも貼られているらしい。各店主によるリアルな写真も多数投稿されており、クリエーションの制作者として参加した人と、実際に貼ったり持ち歩いたりすることで伝える人がメッセージに共感し、じわじわと盛り上がっている様子がうかがえた。
同プロジェクトを主催するのは、2020年7月より表現活動や政治について対話するオンライントーク「表現と政治」を主宰しているグラフィックデザイナーの平山みな美さんと、同じくグラフィックデザイナー/イラストレターの惣田紗希さん、編集者の岡あゆみさんの3人。参加しやすいように、ポスターのサイズ(A4)や解像度、保存形式なども丁寧に説明されていて、プロアマ問わず、「表現したい」という誰もが参加できるようしくみを整備した点も素晴らしい。なかには、セブンイレブンのネットワークプリンターに設定までして、その番号さえ入力したら、誰もが自由にプリントアウトできるようにしているイラストレターさんもいる。
他にも、「渋カル祭。」にも参加していただいたことのある、世界で活躍する日本人のパフォーマンスユニット「TRIPPLE NIPPLES」のメンバーの1人は「VOTE」という文字をデザインしたピンバッチを制作。知り合いに無償で配布しており、筆者は、ファッションジャーナリストの倉田佳子さんから分けてもらった。1つは、編集でアルバイトをしてくれている美大生にあげることにした。
「わあ、この書体かわいいですね!」こういう、クリエーションへの素朴な反応からメッセージが伝わっていくのは気持ちいい。
そもそも「アドボカシー」って何?
「アドボカシー」とは、「擁護・代弁」や「支持表明」といった意味で、政治的、経済的、社会的なシステム・制度に対して何らかの影響を与えることを目的とした個人やグループによる活動の総称といわれている。
振り返ると、日本では、2005年前後に、世界の貧困問題に対して広がった「ホワイトバンドプロジェクト」や、イラク戦争への抗議から「NO WAR!」というメッセージをポスター、Tシャツ、ピンバッチなどが街を行き交う若者たちのあいだでも浸透したのだった。
前者は、もともとはイギリスのGCAPという貧困撲滅を目指そうと活動していた団体による「腕に白いものを巻き、貧困撲滅の意思を示そう」というキャンペーンが始まりで、先進国を中心に、PR会社がホワイトバンドプロジェクトを立ち上げ、それに賛同した複数のNGOが連携。「ほっとけない世界のまずしさキャンペーン」へと発展したのだった。おそらく、日本ではこれが政策提言した初めての「アドボカシー」活動といえるだろう。
*詳しくは、8月に上梓した書籍:『ストリートファッション1980-2020 定点観測40年の記録』(PARCO出版)の「ブーム解説27:カルチュラル・クリエイティブ」(P211)を参照ください。
一方、東日本大震災直後の節電への意識の高まりに、「Soup Stock Tokyo」の開発・運営を行っているスマイルズの代表遠山正道さんが、アートディレクターの森本千絵さんや大塚いちおさんらと制作した節電ポスター「わたしたちにできること。」というポスターが、あちらこちらの飲食店等で貼られていたことも思い出す。
こういった動きに対して、売名行為ではないか、プロモーションだ、といった声は、当時も今回もある。しかし、先に紹介した「#voteposter」のプロジェクトに賛同し、実際に貼っているお店の人たちのコメントを見ると、そんなことより、「なんとかしないと!」「選挙行こうよ!」という突き抜けるような思い、強いモチベーションからの1人ひとりのピュアなアクションがネットワークされ、広まっていることがわかる。
共通するのは、「もっと選挙を身近なものに!」
そんな「もっと選挙を身近なものに」と、辻愛沙子さん、田代伶奈さん、牧野圭太らが立ち上げたのが、一般社団法人 GO VOTE JAPANだ。日本における投票率を1%でも高めようと結集。今回の衆議院議員総選挙(衆院選)を皮切りに、誰もが選挙を自分ごと化し、興味を持ち、語り合うことのできる社会を目指すという。
ポスターや、「#私が選挙に行く理由」といったハッシュタグを用いたキャンペーンのほか、11月 1日には、「GOVOTE MARKET」というECをローンチ。ウテナや木村石鹸、YOAN、ヘラルボニー、ALL YOURSら賛同企業の商品を「投票率割引」を適用し、販売するのだそうだ。万が一、投票率が100%になったら無料になる?かどうかは不明だが、とにかく新しい動きであることは確かだ。
いよいよ31日の選挙を目前に、SNSでは、「#VOTEOURPLANET」(私たちの地球のために投票しよう)や、「#だから選挙に行かなきゃ」、「#投票ステッカー」など、プロ、アマ問わず、これまでにないほど「選挙に行こう」ムーブメントが高まっている。
他にもいくつかの質問に回答していくことで、自分に合う政党がわかるという「政党マッチングアプリ」もいくつも登場し、話題になっている。共通するのは、「もっと選挙を身近なものに」ということなのだろう。
前回、第48回衆議院選挙の投票率は53.68%。20代の投票率はわずか33.85%。民主主義・選挙支援国際研究所(The International Institute for Democracy and Electoral Assistance)によると、日本は世界で139位だったそうだが、さて。10月31日の投票率はどうなるのだろうか?
さまざまな社会課題への関心が高い、といわれているZ世代、30代の子育て世代、アラフィフの団塊ジュニア世代は? 次回、11月の「定点観測」では、通常のインタビューに加え、「選挙に行きましたか?」という問いも投げかけてみたい。
[構成・文/高野公三子(本誌編集長)]
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