ファーストリテイリングが展開する「ユニクロ」と「ジーユー」の看板
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ファーストリテイリングが2021年8月期の通期連結業績を発表し、売上収益が前期比6.2%増の2兆1329億円、営業利益は同66.7%増の2490億円となり、増収増益を達成した。グレーターチャイナを中心に海外ユニクロ事業が好調で、北米は赤字幅が半減し、欧州では黒字化した。柳井正代表取締役会長兼社長は「不安定な状態ですがグローバルで商売をやってきて良かった。日本だけの商売は非常に難しくなるのではないか」と総括し、2022年8月期以降もグローバル展開を加速させていく考えを示した。
海外ユニクロ事業は、売上収益が9301億円(同10.2%増)、営業利益が1112億円(同121.4%増)となった。好調のグレーターチャイナでは、売上収益で5322億円(同16.7%増)、営業利益で1002億円(同52.7%増)を計上し、過去最高の業績を収めた。既存店とEコマースともに売上高が増加したほか、値引率と原価率の低減などの影響により、営業利益率は19.2%と前期から4.3ポイント改善された。韓国では若干減収したが、営業利益は黒字に転換した。米国では通期で減収となったものの、粗利益率の改善や不採算店舗の閉店など固定費の削減、在庫水準の適正化といった収益構造の改革を進め、下期で初の黒字化を達成。今後、黒字体質が見込めるという。欧州では大幅な増収となり、計画を上回る水準で推移した。一方で、その他アジア・オセアニア地区は、ベトナムで7月から新型コロナウイルス感染再拡大により全店舗が臨時休業するなどコロナのマイナス影響を大きく受け、減収減益となった。
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同社は海外ユニクロ事業のグレーターチャイナにおける戦略として、売上収益1兆円達成を掲げている。現地では成長著しいローカルブランドの存在が脅威となっているが、柳井社長は1級都市以外の地域にも積極出店していることから「今から(ユニクロの)知名度が上がっていけば売上は伸びていく」と見解を示した。
国内ユニクロ事業の売上収益は8426億円(同4.4%増)、営業利益は1232億円(同17.7%増)だった。上期は好調だったものの、第4四半期(6〜8月)はコロナに加えて天候不順の影響で売上が計画を下回る状況が継続。在庫処分を強化したことから下期は減益となり、7月に発表した直近の計画に対して売上と営業利益ともに若干下回った。通期のEコマース売上高は、前期比17.9%増の1269億円(売上構成比は15.1%)。2年前比では約50%伸びた。
ジーユー事業は、売れ筋商品の欠品による機会ロスや一部の商品がトレンドを捉え切れず売上が計画を下回り、シーズン末に在庫処分を強化したことから増収減益となった。赤字が続くグローバルブランド事業はJ Brand法人の清算益に加え、セオリー事業の業績改善により赤字幅が大幅縮小した。
2022年8月期の通期業績は、売上収益で2兆2000億円(同3.1%増)事業利益で2800億円(同9.6%増)、営業利益で2700億円(同8.4%増)の増収増益を目標に掲げる。海外ユニクロ事業ではグレーターチャイナを中心に店舗数が130店舗純増する計画で、上期と下期ともに増収増益を目指す。今年11月には北京初のグローバル旗艦店の出店を予定している。国内ユニクロ事業は業績が一時的に低下する見込みで、在庫の適正化や値引き販売の抑制、経費の効率化を図り、「事業構造を変革させる年」と位置付ける。グローバルブランド事業は赤字からの脱却を図る。全社で掲げる事業戦略としては、2017年から取り組んでいる「有明プロジェクト」を通じて「情報製造小売業」への変革を引き続き進めるとともに、事業と一体でサステナビリティの取り組みを加速させる方針。ECと店舗が一体化したOnline to Offline(O2O)型店舗の開発を進めていく考えも明かした。
同社は、中国・新疆ウイグル自治区の人権問題をめぐる問題で新疆綿の取り扱いについて対応を度々迫られたが、10月14日に公表したステートメントで「これまでも申し上げた通り、縫製工場と素材工場については、自社と第三者による監査で問題がないことを確認している」「ユニクロでは、自社の調達チームが生地や糸について、指定し、どの紡績工場で生産されているか把握したうえで調達している」と改めて明記し、今後より高いレベルのトレーサビリティを確保していくことを表明した。
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