大丸東京店4階に10月6日からオープンする大丸松坂屋百貨店初のショールーミングスペース「明日見世(asumise)」が、関係者向けに公開された。物販を要としてきた百貨店で「売らない」スペースを展開するという異例の取り組み。新型コロナウイルス感染拡大を機に「新しいリアル店舗のあり方を模索した」(大丸松坂屋百貨店DX推進部 大西則好部長)とし、リアルでの販売機会が少ないD2Cブランドを集積することで、既存顧客に回遊を促し相乗効果を狙うとともに、大丸東京店の課題の一つとなっていたというZ世代やミレニアル世代の新規顧客獲得を目指す。
明日見世のスペースは4階フロアのイベントスペースに配置。売場面積は約100平方メートルで、什器や装飾物にはリサイクルできる素材やユーズド家具を組み合わせた。4階フロアは「エンポリオ アルマーニ(EMPORIO ARMANI)」や「エポカ(EPOCA)」「ベイジ,(BEIGE)」といったエレガントなウィメンズブランドのほか、「ユナイテッドアローズ(UNITED ARROWS)」ウィメンズストアや「トゥモローランド(TOMORROWLAND)」といったセレクトショップが並ぶ。イベントスペースではウィメンズのファッションブランドのポップアップを開催することが多かったが、明日見世はテーマに合わせてファッションからコスメ、生活雑貨まで幅広いラインナップを展開する。
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売り場ではD2Cブランドに特化し、常時20ブランドを取り揃え、3ヶ月に1度入れ替えを行う。初回のテーマには「社会を良くするめぐりと出会う」を掲げ、 「Social good」「Essential beauty」「Breaking stereotypes」の3つのポイントに基づきブランドをセレクトした。アパレルからは「ブリング(BRING)」や「リン(WRINN)」、コスメからはスキンケアブランド「シトレア(citrea)」や日本発のヴィーガンブランド「アンナチュラリー ナチュラル(UNNATURALLY NATURAL)」など、ライフスタイルからはインナーブランド「スガノ オーガニック(Sugano ORGANIC)」やタオルブランド「ティティ(tt)」といったブランドが出店。ほぼすべての商品でテスターを用意し、あえて“売らない”形態にすることで「来店客に購入へのプレッシャーを減らし、気軽に商品を試せる場にしたかった」と大西部長は話す。ブランドセレクトには入社3年目の若いスタッフも携わった。
Image by: FASHIONSNAP
販売員についてはブランドの魅力を発信する「アンバサダー」と称し、ブランドストーリーを伝えていくとともに、顧客から得た意見をブランド側にフィードバックしていく。人材は大丸東京店で用意する。スタッフユニフォームはブリングが製作した。
購入したい商品はQRコードを読み込み、各ブランドのECサイトで購入手続きを行う。大丸松坂屋百貨店側の収益は出店手数料としている。今後は店内にAIカメラを設置し、来店客の行動データを含むパッケージを販売することや、明日見世を通じてECで購入した場合の手数料の導入など、さまざまなビジネスの可能性を検討していく。
明日見世の立ち上げに向けて大丸松坂屋百貨店は昨年末から準備を進めてきたという。D2Cブランド側は百貨店に出店することで認知向上につながるほか、大丸東京店からのフィードバックを得ることでブランド運営に役立てることができる。大丸松坂屋百貨店側はD2Cブランドの展示スペースを通じて得た知見を百貨店事業に活かしていきたい考えで、反響次第で他店舗への導入を視野に入れている。
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