

■ドイツ銀行は14日、ウォルマートのサブスクリプション・サービス「ウォルマート・プラス(Walmart +)」の会員数が3,200万人のぼるとの予想を発表した。
1年前から始まった年間98ドル(月額12.95ドル)となるウォルマート・プラスは、アマゾン・プライムに対抗する有料のメンバーシップ・プログラム。
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スーパーセンターにある食品や日用品などを対象に無制限で無料で当日宅配を受けられる他、ガソリン割引や店内での買い物時で利用者が商品バーコードを専用アプリでスキャンしながら決済を終える「スキャン&ゴー(Scan & Go)」も特典となっている。
ドイツ銀行の調査によるとウォルマート・プラスは遅い成長が加速していく転換点を迎えている。
6月と7月の調査対象では25%がプラス会員に加入しており、その前の月が19%だったことからプラス会員になる人が増えていると予測しているのだ。
一方で競合サブスクリプションとなるアマゾン・プライムは57%となっている。
両サブスクは多くの部分で被っており、年会費98ドル(月額12.95ドル)のウォルマート・プラス会員の86%は、年会費119ドル(月額12.99ドル)のアマゾン・プライムに加入している。
会員属性も似通っておりウォルマート・プラス会員の61%は年収5万ドル(約550万円)以上で、アマゾン・プライムはそれが63%となる。
ウォルマート・プラス会員の33%は年収が10万ドル(約1,100万円)以上に達しており、アマゾン・プライムも28%が同じく高所得者レベルとなっているのだ。
昨年9月にローンチしたウォルマート・プラスは3ヶ月後には配送無料の条件にしていた購入額35ドル以上を撤廃した。
今年6月には処方薬の割引特典を提供すると発表。ウォルマートの薬局で処方薬を購入すると一部の処方薬が無料となるほか、その他数千種類の処方薬が最大85%引き、平均65%引きで購入できるのだ。
ドイツ銀行の調査ではウォルマート・プラスの加入者が6月以降で伸びていることで処方箋のディスカウント特典が奏功しているのだ。
つまり生活習慣病やアレルギー、精神疾患などで日常的に処方薬を服用している人にとっては、ウォルマート・プラスの処方薬割引は大きなメリットとなり広くアピールしていることになる。
テック業界ニュースサイトのリコード(Recode)が入手した内部資料によると、ウォルマートの役員はパブリクスやターゲット、アルバートソンズ、さらにはインスタカートに対して相当な焦りを感じていることを明らかにしていた。
100ページに及ぶ市場分析はコンペ前に行った2月の説明会でウォルマートが広告代理店各社に配布した資料。
資料にあるスライドには「成長の原動力であった食品で、我々のシェアが急速に失われている」とあり、その横にはパブリクスやアルバートソンズ、ターゲットなどの競合企業のロゴが並び、競合店が伸長しながらウォルマートが縮小している統計も記載されていた。
食品についての別のスライドには「ウォルマートは(他社を)リードしておらず、品質価値をプラスしなければならない」と掲載していたのだ。またウォルマート・プラスについても、更新率は上向いているものの改善の余地がまだあると指摘されていた。
調査会社コンシューマー・インテリジェンス・リサーチ・パートナーズ(Consumer Intelligence Research Partners:CIRP)によるとアマゾン・プライム会員数は1.42億人と見ており、ウォルマートがサブスク会員数でアマゾンを脅かす存在になるのはまだ時間がかかると見ている。
ただし、サブスク料金の安さや今後増えると予想されるサブスク特典によって、アマゾンはうかうかしていられないのだ。
4,700店以上あるリアル店舗を生かした店舗網で、スピード宅配の対象地域の拡大もアマゾンにとっては脅威となる。
ウォルマートは1月、ロボット物流のマイクロ・フルフィルメントセンター(Micro-Fulfillment Center:MFC)を本格的に拡大していくことを発表した。
顧客体験の向上によって、小売業界のサブスク勢力図も大きく変化することになりそうだ。
トップ画像:ウォルマート・ファーマシー。ウォルマートは6月、ウォルマート・プラスで処方薬の割引特典を提供すると発表。プラス会員がウォルマートの薬局で処方薬を購入すると一部の処方薬が無料となるほか、その他数千種類の処方薬が最大85%引き、平均65%引きで購入できるのだ。これが奏功し、プラス会員数が急増した?
⇒こんにちは!アメリカン流通コンサルタントの後藤文俊です。当ブログで何度も強調しているようにアメリカでは、チェーンストア理論が陳腐化しています。多店舗展開ではもう成長に寄与しません。アメリカより5年~10年遅れている日本では、店舗を増やすことにまだ「ご利益がある」という人もいるようです。一方でチェーンストア最大手のウォルマートは2年連続で店舗数を減らしながらも既存店・売上高が連続で伸びています。これは、チェーンストア理論の信奉者にとって受け入れがたい「不都合な真実」かもしれません。チェーンストア理論を正しく実践して日本で成功しているニトリは、1,000店を目指してアメリカに9年前に進出しました。が6店舗まで拡大した後、現在は2店のみ。日本で大人気の雑貨店チェーン「無印良品」も昨年8月、アメリカの子会社を破綻させて米国内の店数を一気に縮小しました。流通先進国では、多店舗展開ではなくサブスクリプションによる成長となっているのです。で、サブスクで重要になるのは顧客体験であり、追加される特典なんですね。
若い頃から怖い先生によってチェーンストア理論を刷り込まれ、洗脳されている人もアメリカの先進事例から学び直さなければなりません。いくつになろうが、学びに終わりはありません。
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