現役美大生・加藤理子によるOne to Oneインタビュー企画。
ADVERTISING
「あなたの背中を押すことばを集めたギャラリーを築きます!」
現役美大生、Z世代の加藤理子さんによる、同世代のクリエイターやアーティストへのインタビュー連載企画の第2弾!
2021年5月にスタートした、現役美大生かつ自身のブランド〈RICO〉の運営やYouTube/Instagram上での積極的な情報発信など、さまざまな活動をを行っている加藤理子さんが同士がインタビュアーとなり、同世代(いわゆるZ世代!)のクリエイターたちにインタビューしたものをナラティブに文章化する企画『GALLERY R』。
Vol.2は、1997年生まれで2020年にオーガニック&ナチュラルコスメブランド「ALI Organics Tokyo」を立ち上げた吉原ありささんへのインタビューです。
「私」という媒体を通して、同世代に刺激を与えたい—
オーガニックコスメブランド「ALI Organics Tokyo」立ち上げの背景にあったものとは
ファッションやビューティー業界にも環境問題が隣り合わせなことが明らかになった昨今、オーガニック、ヴィーガン、クルエルティフリー※などのワードが飛び交うが、 そのことばの意味を知っている人はどれだけいるだろうか。
(※クルエルティフリー:化粧品や日用品などの製造や開発の過程で、動物を用いた実験がなされていないこと)
オーガニックコスメの魅力を届けるため、同世代が手を伸ばしやすい環境をつくるために起業という道を選んだ吉原ありささん。 私がありささんを知ったきっかけは、Instagramだった。ストーリーを見ていると何人かの友人が、ありささんのブランドについて投稿していた。タグ付けされたページに飛ぶと、そこにはブランド立ち上げ、製品完成までの熱い思いやこだわり、苦労が綴られていた。
「誰だか分からないけど、会ってみたい!すごい!」
心を揺さ振られているうちに、ありささんからローンチパーティーのお誘いが。当日はたくさんの同世代で大盛況。製品を手に入れることはもちろんだが、たくさんの人に囲まれるありささんを見ると、私と同じく、皆ありささん本人に魅了されているようだった。
ちなみに、私の兼ねてからの夢であった連載を持つことが叶ったのは、このローンチパーティーで出会った友人がきっかけだった。周囲の同世代に影響を与え、人と人をつなぐ。そんな力がありささんにはある。まさに"吉原ありさ”が媒体になった瞬間であり、本当の意味で彼女の夢が実現していると肌で感じた瞬間だった。 “代表取締役”、“ブランド設立” 肩書きを見れば、とんでもない秀才に感じる一方で、法人設立やこだわり尽くした製品の完成までには、多くの努力や失敗、挫折、苦悩があった。SNSが浸透し、誰もが社会を動かせる時代になった今、妥協を惜しまないありささんの信念は、環境問題はもちろん、1人の女性として、人間として心を動かされるパワーがある。今回は、ありささんが経験した嬉しさ、苦しさ共に赤裸々に語ってくださった。
15分でもいいから話してみる。 でも、ネガティブな助言にはちょっと距離をおく、のがポイントかな。
吉原 ありさ(よしはら ありさ)1997年7月10日生まれ。新潟県出身。株式会社ALI TOKYO代表取締役。文化学園大学現代文化学部国際ファッションション文化学科 卒業。 学生時代は、ファッションを中心に見識を深めると同時に、メイク、美容、ウェルネスなど幅広い知識を独学で身に付ける。 学業の傍ら一般社団法人日本オーガニックコスメ協会認定JOCAオーガニックコスメアドバイザーの資格を取得、起業の準備に力を注ぎ、2020年にオーガニック&ナチュラルコスメブランド「ALI Organics Tokyo」をスタートした。
Instagram : @iam_alisa777/@ali_organics_tokyo
* * *
1.自身のコスメブランドを立ち上げた経緯を教えていただけますか?
ーもともとファッションやメイク、美容、健康などに幅広く関心があり、学生時代は文化学園大学でファッションの勉強をしていました。学外でも、様々な記事を読み漁る間にオーガニックコスメに興味を持ち、JOCAさん(一般社団法人日本オーガニックコスメ協会※)のオーガニックコスメアドバイザーという資格を取ったのがきっかけかもしれません。ただ、起業を目標に資格を取ったわけではなく、オーガニックコスメの良さを知り、好きになったからこそ「もっとオーガニックコスメをみんなに広めたい!」という気持ちが純粋にありました。また、当時日本でオーガニックが浸透していないと感じたことや、実際「このメディアが良いって言っていたから買おう」というような購買動機を持つ人に疑問を感じている自分がいました。ブランドの理念や、例えば動物実験をしていないといった制作背景などに共感を持って買ってもらいたいと強く思い、”私”という媒体を通してオーガニックコスメの魅力はもちろん、自分のように”好き”を磨いていく姿勢や同世代に刺激を与えられるのではないかと思い、起業に踏み切りました。
(※ JOCA日本オーガニックコスメ協会(一般社団法人) : 2007年、環境NGO「アイシスガイアネット」によって設立された団体。海外のナチュラルコスメ基準の取材に加え、国内外の化粧品企業や開発者、皮膚科医、アロマテラピスト、ハーバリストと協力し、消費者はもちろんさまざまな立場と観点からオーガニックコスメや環境を配慮したオーガニックライフの普及を目指す)
2.ローンチされた商品は、ナチュラル成分100%、ビーガン100%、植物由来100%、などとてもありささんのこだわりが詰まっているように感じますが、理由はありますか?
—ブランドの理念として「本当に良いものを、心地いい価格で提供する」ということを掲げています。 例えば、第1作のフェイスグロウモイスチャライジングバームはサステナブルな地球と私たちの暮らしを目指し、現代における“数多くの産業によってものが増加した地球”への配慮を思いに、洗顔後のスキンケアにおいて全ての工程をスキップできるアイテムを完成させました。加えて、厳しい製造過程を経て、原料に植物由来100%のナチュラルなオイルの使用を可能にしたことで、不必要な物は取り入れず機能的かつ、より高質なスキンケアを促します。 また、私自身、オーガニックやナチュラルコスメに対して価格、敷居が高いと感じていました。商品の内容はとても素晴らしいのに、一部の人にしか手を取ってもらえない現状はすごく残念ですし、ヨーロッパなどのオーガニックがより発展している国では日常に溶け込んでいるんですよね。そこで、オーガニックコスメを日本で浸透させるにはその敷居高さを拭うことが重要だと感じ、私は、“あえて”認証を取得しないことでどの世代でも手に取りやすい価格を実現させました。この高価格の背景には、認証取得をすることで大幅に原価が跳ね上がるという現実があるのです。もちろんこれだけではなく、自分が心から楽しんで使えるといった、消費者の方の直感を信じているという理由もあります。 これらの数多くの理念や願望があったからがゆえ、内容のこだわりを惜しまない、自分が少しでも妥協したものを世の中に送りたくないという気持ちにつながりました。全国あちこちを飛び回り、東京を出て山奥にまで行ったりした時もあり(笑)、ほとんどの企業に門前払いされ、体力・精神的にもすごく大変でしたが、そこまでして手に入れたものや経験は本当に価値のあるものだと感じていますし、当時は絶対に共感してくれる人がいるはずだと信じ、未来のお客様の期待に応えるためにこだわりを貫きました。
3.全国各地を飛び回ったというお話がありましたが、実際起業の知識などはどのように習得なされたのですか?
ー実際、起業に関する知識は全くなく、周りに起業した人もいなかったので、一から手探りでした。当時は学生だったうえに大学の卒業公演の準備もあったので、朝から晩まで課題や練習に追われている中で時間を見つけて交渉しに行き、寝る間を惜しんで学校に行く日もありました。企画書と題した夢物語のような資料を手に、JOCAさんやたくさんの大人に見てもらったり、化粧品を委託できる会社に100~200件、片っ端からメールや電話を繰り返し、何とか爪痕を残さないとという気持ちで当時はやっていましたね。でも、今考えると”無知”だったからこそこれだけ頑張れたのかなと。逆に、少しでも起業に関する知識があったら怖くてできなかったかもしれません。結局はその後に打ちのめされることになるので、あくまで結果論ですけどね(笑)ただ、”無知”って恐ろしいようで最強。知らなかったからこそ一歩を踏み出せたんだなと思います。
4.励みになったものや頑張れた理由はありますか?
ー一度、自分のやりたいことやプランを業界のお偉いさんにお話しした際に、頭ごなしに批判された時があって、いつもなら、自分に必要な助言だけ取り入れたり、批判的なものからは距離を置いたりしていたりと上手いこと前向きに捉えていたのですが、当時製品作りや会社自体のことでいろいろ苦戦していた事情が重なり、精神的に不安定になって、友達に泣きながら「もう無理なんじゃないか…」と話したことがありました。その時に「そもそも前提として、あなたはすごく大変で難しいことに挑戦しようとしている。だから、できるできない関係なく、自分で決めたことなら貫くしかない!」と言われ、その言葉によってすごく背中を押されたし、自分もやるか否かの迷いではなく、腹をくくって、借金しようがホームレスになろうが決めたことは果たそうと思えました。
5.先ほどお話に少しあったように、起業されるまでにたくさんの企業の方へお話を持ちかけたと思うのですが、そのうえで大事にしていたことはありますか?
ー例えば、私だと会社のお偉いさんや40、50代の方とお話する機会が多かったのですが、先述のように、資料を見てはっきりと「無理だ」「実現不可能だ」と指摘されたときもあれば、話を聞く以前に門前払いされた時もありました。いただくお言葉に対して理解できないことも何度もありましたが、落ち着いて考えたら、彼らは彼らの時代で、彼ら自身のやり方で乗り越えて成功した人なので、言ってることに正解や不正解というものはないんです。だから、指摘するのではなく、いただいたものを1つのデータとして受け止めていました。一旦受け取ったうえで、自分の思いや考えをつくっていき、私も私でこれからの時代を生きていくために新しいことをしようという気持ちでいましたね。
ただ、「絶対無理だからやめな」「これはこうだから」というような、その人の価値観の押し付けに対しては線引きをしていました。一見冷たいように感じますが、それは自分を守るための行動ですし、全ての意見を鵜呑みにするのではなく、相手の意見の根拠を考えたうえでリスペクトを持ってのことです。私の性格上、そういうマイナス的、ネガティブな言動にエネルギーを吸い取られてしまうため、そこの線引きは大事だと思っています。
6.そのほかに、起業するまでで意識していたことはありますか?
ーそうですね。起業するまでは、「15分でもいいから話してみる」ことを大事にしていました。その少しずつの積み重ねが人脈や知識につながり、起業することができたのだなと感じています。私自身マイペースなので、当時は重い腰をようやくあげるというような日もありましたが、「ちょっとだけでいいからやろう」というマインドの変化が、持続できた良い原因かもしれません。あとは、自分の直感を信じることも大事にしていました。世の中たくさんの情報が出回っていて、情報ってすごく便利で財産ですが、時には情報過多で混乱を招くこともあります。そのような時は、直感で自分が必要だと感じたものや自分の意思に従うのも大切ですし、仮に失敗してもそれは経験になるので、全く怖いことはありません。
あなたにとってのベストな生き方をしていたら、それが100点満点!
もっと、夢ややりたいことを言葉にしてみるといいと思います。
7.自分の中で大事にしているもの、ありささんにとっての自分らしさとは何ですか?
ー型にはまらないことと、すごい人であろうとしないこと。友だちと話していても「ありさってすごいね」「誰でもできることじゃないし、起業なんてすごすぎ!」と、ありがたいことばをかけてもらうのですが、実際、私ってすごく不器用だから、みんながパッとできることも自分だけ時間がかかったり、できないなんてことたくさんあるんです。でも、”起業家” だったり”代表取締役" というような肩書きがつくと、そのフィルターを通して見られているのは事実。確かに起業家としても生きるけど、あくまでも私は私だし、”吉原ありさ”として生きたい。だから、私に会った時やSNSなどを通じても「こんな普通の人でもできるんだ」「起業ってすごいけど、実際ありさに会ったら普通の人だったね笑」くらいに思ってもらいたいですね。
8.これからの目標はありますか?
ーブランドを大きくすること。そして、”自分”という媒体を通して、自分のように”好き”を追求する人が増えて欲しいです。具体的には、将来はみんなが知っているようなブランドを目指したいです。「あー!あそこね!知ってる!」というような、日常的に登場できたら嬉しいですね。
9.本企画の読者へメッセージをいただけますか?
ーあなたは、あなたにとってのベストな生き方をしていたら、それが100点満点。人間、時に周りばかりがうまくいって、自分だけがって思う時もあるけど、皆んなそれぞれの道で辛いことや大変なことを経験しているからまったくそんなことない。自分がどれだけ失敗しても、絶対にそれは通らないといけない道だし、無駄になることなんて本当に一つもありません。
10.最後に、ありささん自身がブランドを経営していくうえでも個人としてでも、他者と関わっていく中で大事にしていることや読者に向けてのアドバイスも頂戴しても良いですか?
ー背伸びしないで、素でいることを大事にしています。アドバイスとしては、もっと夢ややりたいことを”ことば”にしたらいいのになあと感じます。謙虚な人や後先考えたら恥ずかしくて言えないっていう人も多いと思いますが、チャンスってどこにあるか分からないし、何ならその辺にいっぱい転がっているのにシャイな気持ちが勝って言えないのはすごく勿体無い。私自身、10人に自分のやりたいことや思いを話したら人生変わると思っていて、どんな形でも自分の夢をアウトプットできる場があること自体がとても素敵なことだと思います。確かに、私自身も人間なので、心の内で「こう言われたらどうしよう。」「こうジャッジされたらなあ…」とマイナスに考えてしまったり、他人と比較してしまうこともあるのですが、一周回って、「今はどんなにちっぽけだと思われようがいいじゃん!」と自分に言い聞かせ、奮い立たせることが大事なのかもしれません。
化粧品は、私たちをより美しくし、新しい自分への遭遇や自信という最大のパワーを与えてくれる。そんな私たちの日常を豊かにしてくれるコスメやビューティに多くの人関心を抱いていることは、みんなが期待や可能性を寄せているからに違いない。事実、私もその1人だ。しかし、コスメはファッションとは違い、私たちのからだに密着するものである。だからこそ、本来であれば丁寧かつ慎重に、多様な意味で「自分にあったもの」を選択しなければならないが、数溢れるコスメをひとつひとつ体験し、比較してやっとそれに出会うことができるのが現実だ。
「本当に良いものを、心地よい価格で届けたい」そんなありささんの思いは、1本のフェイスバームにぎゅっと詰め込まれ、世に溢れ出るコスメの中で力強く、まさに「ビューティ」ということばに相応しい輝きを放つ。不必要なものを取り入れない、対症療法(表面化した症状を直接抑え込むといった一時的な効果)ではない根本的な健康への配慮、誰でも簡単に手軽にできるケアなど、まさに消費者目線でつくられた製品からは、ただのビジネスではない、ありささんが本当に実現したかった夢や優しさ、努力が感じ取れる。Ali Organics Tokyoは、私たちの肌だけではなく、心までに潤いを与えてくれる、そんなとびっきり“ビューティ”なブランドだと思った。
インタビュー・文:加藤理子
ADVERTISING
PAST ARTICLES
【ACROSS】の過去記事
RANKING TOP 10
アクセスランキング
銀行やメディアとのもたれ合いが元凶? 鹿児島「山形屋」再生計画が苦境