近年、配送業や介護事業、農業といった様々な職種で、従事者への身体負荷が問題となっている。そんな状況を解決すべく開発が進んでいるのが、力作業の方の救世主となる労働軽減スーツだ。特殊な機能を持った衣服を纏うことで、身体への負担が軽くなるため、新たなユニフォームとしての普及も期待される。
こういった労働軽減スーツの開発に乗り出したのが、医療用品メーカーのダイヤ工業株式会社だ。ダイヤ工業は労働現場で腰への負担を感じる人の“運ぶ”を支援する労働軽減アシストスーツ「DARWING Hakobelude(ダーウィンハコベルデ)」を開発し、今年の7月から量産販売の展開に至った。今回はダイヤ工業の新市場開拓部門アシスタントマネージャーである池田智浩さんに、「DARWING Hakobelude」の詳しい機能についてお話を伺った。
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医療用品の開発経験を活用したアシストスーツ
医療用品メーカーであるダイヤ工業はこれまで、多様な機能のサポーターやコルセットを提供。軽量柔軟なアクチュエーターである空気圧人工筋肉を応用したリハビリ支援装置の研究開発を推進している。こういった技術を提供するなかで、「労働負担を軽減する製品を作ってほしい」という声が多く寄せられたことが、「DARWING Hakobelude」を開発するきっかけとなったそうだ。開発に際して"ウェアラブル”をキーワードに展開を模索してきたというが、市販されているアシストスーツを調べてみると、手ごろな値段の商品はパワーが足りず物足りない一方で、モーターなどが搭載された電動タイプの商品は値段が高すぎることが普及の障壁となっていた。また、重量が重く、装着すること自体が負担で、フレーム等があるため自由に動けず、用途が限られるといった、実用上の課題もあったそうだ。そこで、ダイヤ工業はオリジナルで空気圧人工筋肉と高反発ゴムを開発。つらい中腰姿勢のキープをラクにし、持ち上げ動作をアシストしてくれ、なおかつ着用中に体の動きを妨げずに負担がない製品の開発に成功した。このアシスト力と軽量柔軟性を両立した点が、「DARWING Hakobelude」の最大の強みとなる。重さは約800gほどだ。
受注生産から量産販売へ
「DARWING Hakobelude」はすでに受注生産を実施し、農家、製造業、物流業などの業種を中心に、10ヶ月で約500着もの販売に繋がっている。すでに購入して毎日使用しているというユーザーの声も届いており、「負担が減ったと実感ができる」、「これまでに色々な製品を試してみたが、この製品は非常に使いやすい」といった反響があるそうだ。
ダイヤ工業では開発はすべて内製で行われているため、「DARWING Hakobelude」の開発においても、別の医療用品プロダクトの知見やユーザーの意見を取り入れ、プロダクトに反映させることができている。また開発中のユーザビリティ評価や、これまでに展開してきた自社製品に対しての反響、新たなニーズや他社製品についての調査は、岡山県内の企業や代理店と協力して調査したそうだ。今回の量産に際しても、社会全体のアシストスーツへの期待の高まりを感じているそうだ。池田さんは「ユーザーの潜在ニーズが顕在化してきており、それに伴い様々な労働環境にフィットする製品が引き続き開発されることが期待されていますので、ユーザーの声をしっかり聞き、さらにバージョンアップしていきたいと思います。」と、コメントしてくれた。
様々な業種に向けた展開
現在の導入先は農業、製造業などが中心だが、今後は福祉分野や物流業などはさらに需要が高まってくるとも考えているそうだ。「機械化されている作業はあるものの、人の手が必要な現場は数多くあるので、労働環境で負担を感じられている人々の支えになれば」との熱い想いがあるようだ。今後さらなるアップデートの予定があり、現在はMakuakeにて、日頃手術に携わる医師と共同開発した、前傾姿勢の仕事を支えるアシストスーツ「DARWING サージカルモデル」をクラウドファンディング中だ。 アシストスーツへの期待が高まっていることを受けて池田さんは、「ダイヤ工業だからできるニッチな分野や、社会から期待していただいている事を一つずつ真摯に取り組んでいきたい。」と、語ってくれた。真摯にユーザーの課題と向き合い、作られた「DARWING Hakobelude」。さらに多くの業種への展開が期待されている、このプロダクトの今後の開発にも目が離せない。
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