■チェーンストア最大手のウォルマートは8日、雑誌やテレビ局、ウェブサイト、ラジオ局を所有するメディア・コングロマリットのメレディス・コーポレーションと提携したことを発表した。
膨大なコンテンツを持つ巨大メディア企業と組むことで、ウォルマートはネットスーパー展開で可能な限りシームレスで便利なものにしていく。
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メレディスの出版物の読者数は1億2,000万人以上に上り、「ベター・ホームズ・アンド・ガーデンズ(Better Homes and Gardens)」や「フード・アンド・ワイン(Food & Wine)」などの有料発行部数は4,000万部以上、「オールレシピ(allrecipes.com)」などウェブサイトのユニーク・ビジター数は月間で1億3,500万人近くになる。
メレディスのテレビ局の番組は、アメリカ国内の11%の世帯に配信されているという。
メレディスとのパートナーシップによりウォルマートはAIなショッパブル・コンテンツを最大化でき、献立作りから食材の提供までシームレスにできるようになる。
レシピに基づく料理に必要な食材を注文できたり、逆に余っている食材からレシピの検索ができるだけではない。
ほうれん草やピーマン嫌いな子供に向けたレシピから食育コンテンツまで提供でき、TikTokによるレシピ動画、グーグル・スマートスピーカーを使った音声・画像によるレシピインストラクションまで幅広くコンテンツを使えるのだ。
ウォルマートは現在、インタラクティブ・コンテンツ制作のスタートアップ「エコ(Eko)」と提携してショッパブルレシピ動画「ウォルマート・クックショップ(Walmart Cookshop)」を展開している。
いわゆるレシピ動画のクックショップは必要な材料をウォルマートのネットスーパーを介して簡単に購入できるようになっているのだ。
ウォルマートのショッパブルレシピは2年前からレシピ動画のテイスティ・アプリと提携してシームレスなショッピングを行っている。
クックショップではセレブシェフのジェイミー・オリバー氏や女優のソフィア・ベルガラ氏、歌手のパティ・ラベル氏、ブロガーでインフルエンサーのレー・ドラモンド氏など40歳以上の有名人を起用しているのが特徴だ。
クックショップの動画は双方向コンテンツになっていることで動画の初めに「キッズ向け」「家族用」「パーティセッティング」など1つの動画でも3~4の選択肢があり、用途に合わせて選べるようになっている。
例えばジェイミー・オリバー氏のベジタブルピザでは「新しいレシピをトライします(Try new recipes)」「キッズ向け(Good stuff for kids)」「ゼロから調理(Cook from scratch)」から選択する。
「ゼロから調理」を選択するとオリバー氏がウォルマート・プライベートブランドの「中力粉(All-purpose flour)」「グルテンフリー小麦粉(Gluten free flour)」の両方を手にもち、どちらかを選択するように促すのだ。
中力粉を選ぶとオリバー氏はそれに従ってレシピを紹介していく。
動画を見ながら材料をショッピングリストに加えることができ、宅配やカーブサイド・ピックアップで注文できるようになる。
動画を見ながらネット注文すると最短1時間でレシピ動画の調理を始めることができるというわけだ。
こういったショッパブルレシピ動画もメレディスのもつ莫大なコンテンツでさらに詳細な分類を提供できるようになる。
食事やレシピアイディアも無限大に広がっていくだけでなく、利用者のライフスタイルや健康にも細かく対応できるようになる。
ウォルマートは自社内の広告事業を刷新しオムニチャネル化に合わせてメディア売上を拡大している。
クローズド・ループ・オムニチャネルでもメレディスのコンテンツを生かした広告の最適化を図れるのだ。
トップ画像:メディア企業のメレディスと組むことでウォルマートは膨大なショッパブル・コンテンツで献立作りから買い物、音声・動画によるレシピ案内、さらに食育までシームレスな体験を提供できるようになる。
⇒こんにちは!アメリカン流通コンサルタントの後藤文俊です。「人々の日常生活に本当の豊かさを提供する」というのは、流通が成熟していなかった時代の考えです。欲しい物がいつでもどこもですぐに手に入る時代になると(つまり流通が成熟すると)消費者に何がほしいのかというアイディアを提供しなければなりません。沢山のお店や売り場を作って「これが本当の豊かさだ!」と便利な商品を見せても、消費者に便利なコンテンツは提供できません。一方通行だからです。社会が成熟していることで、あらゆるものの選択肢が増えています。個人の趣味・嗜好・ライフスタイルが多様化しています。ちょっと前に使われていたバズワードで言えば、社会はロングテール化しています。若者の車離れにテレビ離れ、ブランド品が売れなくなったのもロングテール化です。既製品を大量に販売することをベースにしたチェーンストア理論が陳腐化している理由でもあります。一方で売れているモノには、先にコンテンツがあります。これを最大限に使おうとしているのがウォルマートです。
ないモノを売るという時代ではありません。買い物もコンテンツの一つであり、いかに脳に意識させずに消費者行動に買い物を組み込めるかという時代となっています。店に来させる、というだけでアウトです。
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