日経MJの連載の中でも、流通業界の裏方である「物流」を考える上でいろいろな示唆を頂けることから、毎週楽しみに読ませて頂いている月刊ロジビズの大矢昌浩編集長が連載されている「物流インサイドリポート」
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9月3日(金)付のコラムは食品スーパーで進む自動発注システムに関する話題でしたが、
その中に従業員1人が管理可能な品番数やSKU数に触れられており、興味深く読ませていただきました。
まずは、以下「 」内の引用から。
「約1万アイテムを取り扱う平均的な食品スーパーでは通常、発注業務を10人程度で分担している。1人当たり1千アイテムを受け持つ。しかし、優秀な発注担当者でも一人でまともに管理出来るのは100アイテムがせいぜいとされる」
「残り900アイテムは売れ行きの変化や天候などを考慮せず、売れた分だけ機械的に発注するくらいしかできない。当然ながら精度は落ちる。」
(以上引用)
ということで、最近では、優秀な方の考え方をアルゴリズム化して、AI(機械学習)による自動発注システムの導入が進み、そこで作業時間を効率化させた担当者たちは、各自、重要な売り込み品番の在庫管理に注力することが進んでいるという内容でした。
このコラムを読んでいて、面白いなと感じたのは、アパレルや靴など、ファッション流通の世界でも、ひとりあたりが管理可能なアイテム数、品番数の限界みたいなものに、同じことが言えるよな、ということでした。
セントラルバイイングであるアパレルチェーンでは、本部側にMDやバイヤー、あるいはその各店やECサイトへの在庫配分と在庫コントロールを任されるDB(ディストリビューターあるいは在庫コントローラー)という職務がありますが・・・
それらの職務の方々やその事業の幹部の方々と話をしていると、必ず、一人が一度に何品番が管理できるか?ということが話題になります。
その裏には、現状、品番が多すぎて管理がし切れておらず、各種ロスが多い、労働時間が長くなっている、店舗の在庫管理作業が増えている、などから、
ひとりあたりが担当する売場面積やその中で展開品番数を管理可能なものにして、限られた予算の範囲内で、いかに効率のよい在庫運用ができるか、という意図があります。
これ、筆者の長年、多くの事業の仕入管理や在庫コントロール現場に携わっている立場から言わせて頂くと・・・
一度に管理し切れるのはおおよそ120品番前後まで、という仮説に行きついています。
実際、帳票上に出て来る品番数はもっと多く、それ以上管理している(つもりの)人もいますが・・・実際には、上位120品番までしかアクションがとれていないのが現実だったものです。
日経MJコラムの食品スーパーでも100アイテムという数字に近いものがあって、面白いな、と思った次第です。もしかしたら人の目診判断能力の限界なんでしょうかね。
もし、管理可能範囲を超える商品数を扱うと、どんなことが起こるか・・・
当然、範囲を超えたものは見れませんので、それらの管理は雑になりますし・・・
コラムのように1点売れたら1点(売れた分だけ)補充に終始?
そういったものに時間を取られていたら、重点販売商品の在庫戦略を考えるにも、十分な時間がかけれなければ、得られるはずの売上や粗利も失ってしまうことでしょう。
その結果、各店、各EC拠点に必要以上のSKU在庫が配分されたまま、放置されていたり・・・
必要ないのに補充されて寝かされたり・・・
気づいた時に、店舗が店間移動を行う業務が増えたり、運送費が増えたり・・・
それが後手に回ると、機会損失が増え・・・
プロパーで売れたであろうものも、値下げで消化、場合によっては売れ残って倉庫に返ってくる、
なんてこともあるわけです。
以前、ある方が、シーズン中に、そんな拠点ごと、SKU ごとに積まれている必要以上の過剰在庫って・・・
各店に眠っている埋蔵金(キャッシュ)だよね、っておっしゃっていたのが、言い得て妙だなと思いました。
ここからわかるのは、
機会ロスという言葉は、多くの場合、売れ筋の欠品と解釈され、追加発注を促されますが、
その一方で、実は、管理し切れなかった結果、各店に適正配分、配置されずに溜まっている、
つまり、放置されているSKU別過剰在庫の中にも機会ロスというものは多分に含まれているということです。
在庫があるのに販売機会ロス?
そうならないように、管理可能な品番数を知り、その中で、商売を、業務を回したいところです。
そうすれば、限られた在庫、リソースで、まだまだ、粗利も稼げるし・・・
プロパー、最終 共に消化率を高められるのではないでしょうか?
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執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩
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