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モードノオト 2021.09.05

カラー 2022年春夏コレクション

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Image by: FASHIONSNAP

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ファッションジャーナリスト
麥田俊一

 切符はいらない、不思議な列車で、いじけた街を、出ようぜ俺と...恋の列車はリバプール発、夢のレールは二人で描いて行こう...と、柄にもなく、センチなフレーズを心に浮かべたのだった(『恋の列車はリバプール発』作詞 矢沢永吉、作曲 相澤行夫)。品川駅より同じ京急電鉄の下り列車に揺られての帰途。これで今日は京急の同じ区間を二度往復したことになる。この真っ赤な車輌は、私の幼少の頃よりの馴染みの列車だ。幼少期を過ぎるまでは、私方より横浜に出るにはバスか京急しか交通手段がなかった。遠くは漁師町で行商を拾い、下世話な盛り場や色街で酔客を吐き出すこともあって、当時の車中は、他の私鉄とは少しく違ったガラの悪さを特徴としていた(随分と昔の話だけれど)。たとえば、日ノ出町や黄金町(いずれも私の人格形成にとっては切っても切れぬ歓楽街)が浄化され、各駅の周囲が再開発されるにつれて、車中や駅の風景も随分と変わり、昔の面影はなくなってしまった...と、なにを今更、そんなことはどうでもいいのだ。品川発、「カラー(kolor)」の夢の列車は愚かな感傷を路傍の石ころ然と、線路の傍に置き去りにした。

 「カラー」の東京でのショー(2022年春夏コレクション)は、楽天「by R」の支援で参加したRakuten Fashion Week TOKYO 2022 S/Sの最終日(9月4日)に発表された。既に各所の報告記事にてその概要は報じられている筈なので、この稿では私が得た小感にとどめておく。ショーのために誂えた貸し切りの4輌列車(京急電鉄デハ1000形)の中は、両隣と間隔を開けた座席指定になっていた。偶さかに私は優先席に振り分けられた。さして混んでいない車中にあって不思議と両隣が開くのが私の常だから慣れたものである。

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 これよりショーの舞台となるに違いない列車に乗車していながら、車窓には、同じ区間を通常ダイヤで疾走していく快特電車の乗客の姿が映る。普段は見慣れた景色だが、今は普通に車中の人となっているわけではないことに少しく違和感を覚える。実際のショーが開始した京急蒲田駅に向かう中途の駅で停車した折である(特別列車なのでダイヤグラムの都合上必要だったのだろう)。何処で聞き及んだのか、幾人かの「撮り鉄」がプラットホームより我々の列車にレンズを向けてきた。通勤、通学などの日常的な移動手段とショーと云う非日常との面白いギャップに、車中の人は浮かれ気味になる(私が乗車した車両だけだろうか)。この懐かしくもワクワクする感覚は、勿論、普通のショー会場では味わうことの出来ぬもので、遠い昔の遠足や修学旅行のノリに近く、乗客(招待客の面々)はいい大人のくせして皆一様に陽気になって口々に騒いでいる(与太リストの私もついつい悪ノリをしていたのだけれども)。皆が皆、デザイナー(阿部潤一)と演出家(若槻善雄)が周到に用意した術中に見事に嵌ったわけである。それは合成画面や動画では味わうことの出来ぬ、実際のショーと云う現実であり、その場に居合わせた我々(それも限られた人数)にしか共有出来ぬスペシャルな時間であったことを差し引いても(パブリックな空間を会場にすることでアナクロニズムと云われようが)、粋なエンターテインメントだった。秀でたエンターテインメントは、作者の全力疾走であり、一気に飲み乾すカクテルである。強く効き、すぐに終わる。熱を出して、冷めても、後に残る。

 たとえば、野性と洗練、粋と頑迷、都会と田舎、男性性と女性性、スポーツとテーラード、アウトドアとエレガンス...相反する様々な要素を、ある程度の許容範囲の内に矛盾なく収めたコレクションは、一足先にパリメンズのオンライン形式で発表した男物に、更に女物を足した、飛び切りプレーフルなピースの寄せ集めだった。恰も現実と非現実の境界を交差するように、普遍的な服のコードを「カラー」流儀の新たな文脈に置き換えている。重ね合わせ、捻り合わせ、巻き込み、上下や裏表を反転させ...複数のジャケットやコートの様々な部位や縫い目は、パズルのピース、それも普通のジグソーパズルではなしに、三次元のパズルに於ける一片のピースの役割を担っていて、種々のピースの集合体は、個性を映し出すツールとして表現されている。歪に、それも最小限の大きさで切り取られた服の部位をアイコン的に使った継ぎ接ぎの歪んだ断片の重層構造は、アングルに応じて様々なルックスを愉しむことが出来る設計である。

 一着の服のキワはもう一着と交叉して互いに照応し合い、細部は捻られ、混じり合い、時には調和を打ち砕き、時には服の境界そのものが姿を消してしまうと云った設計。パーツが組み合わされて生じるポップで強い色彩の衝突は、抽象的な油絵の中に見られる、強靭な筆触を盛った線的画面構成のようにも思える。こうしたコラージュは複数の相反撥する力が陰に陽に卍巴になっていて、一着の服と云う完成形を軸にグルグルと無限の追い駆けっこをしているように見えて愉しい。阿部の言葉とは、理論で繋がる言葉ではなく、意味を破壊し、その都度の偶然の中で動いていく言葉だ。否、それは必ずしも偶然より産まれ、恣意的な言葉と云うべきではない。その意味は、着る側の自由に委ねられるべく、彼にとっての必然の言葉なのだ。遊び心のある美しさ。そしてそれは、屡々破壊的なものである。(文責/麥田俊一)

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