市場としても大きく成長し、クリエイティブな中国ドメスティックブランドやグローバルブランドの参入もめまぐるしく増えている中国アパレルマーケット。そんなマーケットで、早い時期からブランドを生み出し長年運営してきた中国ドメスティックのカジュアルブランドたちは成長の鈍化あるいは衰退を迎え、以前通りのブランド運営では立ちゆかず、変革を迫られている。

そのためにリブランディングを行うブランドも多く、スポーツアパレルブランドの李寧（LINING）のようにリブランディングの成功によってZ世代や90年代生まれマーケットを中心に再成長を遂げたブランドもある。そんなリブランディングのための取り組みは、ブランドによって様々だ。

リブランディングのタイミングでブランド表記も変更

中国の大手アパレル美特斯邦威（通称Metersbonwe）の傘下ブランドME&CITYを全面リニューアルした。ブランド名自体をME&CITYからMECITYに変更し、LOGOやキービジュアルのテイスト、店舗デザインも刷新を図っている。2021年7月8日に上海の兴业太古汇モールで秋物の立ち上がりとしてのポップアップイベントを行い、中国現地の俳優女優陣も誘致し、このタイミングでブランドの新しい方向性を発信した。いわゆる”手頃だけどそこまでパッとしないブランド”という印象が年々強くなってきた中、改めてラグジュアリー感を打ち出し、高見えさせることでコストパフォーマンスのよさを改めてバリューとして訴求している。

デザイナーズブランドとのコラボで新しいブランドバリューを発信

また、2000年代からカジュアルブランドとして高い知名度を誇る太平鸟（通称PEACEBIRD）のレディースPEACEBIRD WOMENは、 上海ファッションウィークの常連で、独自の可愛らしさの解釈で人気を博すデザイナーズブランドSHUSHU/TONGとのコラボレーションによるカプセルコレクションを発表した。「校园女孩的窃窃私语（女生徒たちのひそひそ話）」をテーマに、白シャツなどのクラシックなアイテムにSHUSHU/TONGのアイコニックなリボンや襟を活用して、独特な世界観を発信している。カプセルコレクションの評価は高い一方で通常ラインも商品・ビジュアルともに刷新を図り始めている。単純な若返り化ではなく、ブランドとしての立ち位置をもう一度模索している最中といったところだろう。

新しい試みのためのアトリエを開設

また、1997年創立で2014年に上場も果たし、現在は4500店舗を超える海澜之家（通称HLA）もブランド価値の向上には予断を許さない。周杰伦（ジェイチョウ）などの中華圏で絶大な人気を芸能人も多数イメージキャラクターとして起用し、高い知名度を誇るHLA。高い知名度の一方で、センスのいいブランドという評価は多くないHLAは2021年から、上海 静安寺に新しくできたSOHO型商業施設”现所”にアトリエを構えた。クリエイターの多い環境である现所に構えたのはハイエンドラインHLA PLUSを生み出していくためのアトリエスタジオ。これまでの延長線上とは違う試みを行っていくための空間といえる。

ブランドによって取り組みはさまざまだが、現状に甘んじることなく、不断の挑戦が必要だという状況は一致している。

マーケットの成長、若年層の価値観の変化が大きく続く限り、ブランド側の挑戦も続いていくだろう。

兒玉キミト