岐阜のカジュアルウェアメーカー、ガゼールが民事再生法を申請して経営破綻した。
負債総額は20億7000万円と伝えられている。
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株式会社 ガゼール – 信用交換所 (sinyo.co.jp)
2021年2月期の年商は21億9300万円だが、ピーク時の93年には90億4600万円の売上高があった。主要な販路は大手専門チェーンや量販店だった。
カジュアル業界のベテランによると、ガゼールは不振によってかなり前から各社から与信を厳しくされており、先日経営破綻したコイケを通じていろいろと商品を製造していたという話があるという。
コイケが経営破綻したことでガゼールの破綻もその影響があったと見られると話していた。
岐阜という土地は縫製工場も多いが、アパレル企業も多い。
ただし、知っている人にとっては、おなじみのアパレル集積地の一つだが、業界人でも馴染みのない人も多く、そういう点においては岐阜にアパレルが集積していることを知らないという業界人も多い。
その原因は何故か?というとガゼールの報道でも触れられているように、販路が、低価格専門チェーン店、大手スーパーマーケットに集中していたからである。
そして今もその構図はほとんど変わらない。
アパレル業界の中でも低価格専門チェーンや大手スーパーマーケットに馴染みのある人にとっては岐阜アパレルというのは、おなじみなのだが、そういう販路とは全く縁がなく、やれラグジュアリーだ、最先端セレクトだ、などしか見ていない人にとっては、岐阜アパレルなんて見たことも聞いたこともないという具合になってしまう。
岐阜アパレルは、実は90年代後半にシンガポール(社名)やホワイトラインなどが相次いで倒産し、危機を迎えた。
理由は、ダイエーやマイカルといった大手スーパーの経営破綻によるものである。また一部のジーンズチェーン店の破綻も手伝った。ジーンズカジュアルチェーン店のカジュアルトップスは岐阜カジュアルアパレルから多く仕入れている。
現在、残っている岐阜アパレルは90年代後半の危機を乗り越えた企業ばかりなのだが、販路はその当時とほとんど変わっていない。
ガゼールを例に見てもわかるように、この30年間で大きく売上高を減らしている。ガゼールに限らず岐阜最大のアパレルだった美濃屋もピーク時から大きく売上高を減らしている。
理由は、彼らの主要販路が不振だからである。
低価格衣料品は今もしっかりと残っているが、彼らが得意とする大手スーパーマーケット各社の衣料品は苦戦し続けている。
またライトオン、マックハウスに代表されるジーンズチェーン店や、大手紳士服チェーン店のカジュアルなども苦戦し続けており、当然そこに卸売りをしている岐阜アパレルの業績も低くなってしまう。
もちろん、岐阜アパレルも無策ではなかったはずで、様々なチャレンジをしているだろうが、残念ながら目に見えた成果は出ていない。
大手セレクトショップ各社にもいろいろとアタックはしているのだろうし、好調アパレルのOEM生産なんかも請け負っている。
ただ、業界人の固定観念というのはなかなか強固なものがあり、新しい販路は簡単には開かれない。
以前、釣り具のダイワのアパレルが小規模ながらもセレクトショップなどで人気を博しているという話を紹介したが、それが上手く行った理由は、ビームスが営業を担当しているというところも大きい。
物を売るには「営業担当者」と「見せ方」が重要 – 南充浩 オフィシャルブログ (minamimitsuhiro.info)
ダイワの営業マンが営業をかけても、ほとんどのセレクトショップは門前払いだろうが、あのビームスが営業を代行すれば、とりあえず話くらいは聞いてみようかというセレクトショップは増える。
人間の判断基準なんてその程度の物である。
もちろんビームスのBtoB案件が全て成功しているわけではなく、失敗した事例なんかも業界内部からは聞こえてくるが、ダイワの場合は上手くはまった。
岐阜アパレルも新たな販路開拓の努力はあったが今のところ結実していない。
また岐阜アパレルの水甚のように、量販店平場の5900円防寒ブルゾンブランドだった「ファーストダウン」を高額ブランドへ変身させようとする取り組みもある。
ブランドイメージを転換させるにはかなりの時間と労力と投資が必要になるため、すぐに結果が出るというわけではない。ファーストダウンも成功するにはかなりの時間がかかるだろう。
このように考えると、現在残っている岐阜アパレル各社も業績が急激に伸びるということは考えにくく、今後も良くて現状維持、現実的には徐々に規模を縮小せざるを得ないのではないかと見ている。
岐阜の地場産業の一つだったアパレルだが、最終的にどれほどの企業が生き延びられるのかと思うと、なかなか悲しいものがある。
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