TENTIAL 中西裕太郎代表取締役CEO
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クラウドファンディング「マクアケ(Makuake)」で初日に340万円を調達し、2週間後には大台の1000万円を突破したサンダルに注目が集まっている。開発したのは、スポーツテクノロジーに特化したITベンチャー企業TENTIAL。これまでにコンディショニングインソール「TENTIAL INSOLE」やリカバリーウェア「BAKUNE」を手掛け、いずれもニッチな商品ながら売上好調を維持している。代表取締役CEOの中西裕太郎氏はかつてプロサッカー選手を目指していたアスリート。ものづくり未経験の同氏はどのようにして事業を軌道に乗せることができたのか。
◆きっかけは夢への挫折とオバマ元大統領の言葉
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中西氏は高校時代にサッカーインターハイに出場経験があるほどの実力を持っていたが、狭心症を患ったことでプロへの道が閉ざされた。ITに転向した契機は、当時米大統領を務めていたバラク・オバマの言葉にあるという。「病気にかかって"スポーツ以外の道で大物になるには"と模索していたときに、半分冗談で大統領の道を考えたんです(笑)。その時にオバマ大統領の『ゲームを買うのではなくプログラミングを学ぶべきだ』というスピーチを見たことがプログラミングを学ぶきっかけになりました」。
プログラミングは初めてスポーツ以外で評価された経験になった。「僕のように、スポーツの世界から引退した選手にも新しいキャリアの選択肢として提供したい」という思いから、プログラミングスクール事業を展開するインフラトップ(現DMMグループ)の創業に参画。ベンチャー企業の経営ノウハウはこの時に修得した。その後退社し、リクルートを経て2018年2月にTENTIAL(当時の社名はアスポール)を設立。「オンラインユーザーを囲っていれば事業転換しても成功できる」という考えから、最初の事業としてスポーツ情報メディア「SPOSHIRU」を立ち上げた。
◆ニッチなインソールからスタートしたD2C
「自社を海外に匹敵する、アシックスやミズノの規模にしたい」。2019年にはメディア事業に加え、スポーツウェルネスブランドを展開するD2C事業をスタートした。第1弾商品として販売した「TENTIAL INSOLE」はメディア事業で得たユーザーの声を反映し、アスリートのインソールを手掛けた企業と手を組み、足のトラブルにつながるとされる「浮き指」の改善にアプローチする商品として開発。インソールという商材はニッチな要素が強いが、「インソールはシューズとは異なり、切ってサイズ調整ができるし、在庫管理におけるSKUを絞ることができる」と中西氏はビジネス面でのメリットを語る。
インソールはビジネスマンだけではなくスポーツ選手からも好評を得て、現在はゴルフ用、革靴用、キッズ用とバリエーションを拡充。2019年8月の発売から2年弱で累計約2万枚を販売した。ゴルフ用インソールに関しては毎月300〜400足分が売れているという。
同社はインソールに続いて、5本指ソックス「TENTIAL SOCKS for BUSINESS」やリカバリーウェア「BAKUNE」、通気性に優れたマスク「TENTIAL MASK」などを展開。BAKUNEはマクアケで1ヶ月で約900万円の支援を達成し、豊島と共同開発したリカバリー効果のある素材は厚生労働省からも許認可を受けた。2021年1月期は新型コロナウイルス感染拡大による消費の変化も影響し、年商が4.4億円に増加したという。
◆インソールをサンダルに
今回発売したサンダル「HAITE」はコンディショニングインソールの開発ノウハウを活かした商品で、アーチサポート構造を施し、少ないエネルギーで前進できるインソールを設計した。サイズはXSからXXLまで6種類、カラーはブラックとネイビーの2色を用意。5月31日にクラウドファンディングで販売を開始すると瞬く間に目標金額をクリアし、現在はBAKUNEで記録した調達額を大幅に超えている。ブランドのユーザー層はスタートアップやベンチャー企業で働くアクティブな30〜50代が多いが、HAITEに関しては医療や製造業関係者からの購入も多いという。来春には製品をアップデートし、カラーバリエーションも拡充する予定だ。
Image by: TENTIAL
◆ヘルスリテラシーが低い日本を変える
「コンディショニング」をテーマに、今後はBAKUNEで使用している素材を活用して腹巻きやアイマスクなどの開発を検討している。また、「良質な睡眠」をサポートする商品として入浴剤の発売に向けて準備を進めているという。これまでにファンドやスポーツ選手などから累計3.2億円を調達しているが、追加で新たな資金調達を行う予定。現在掲げる最大の目標は、3年後のIPO実現だ。「僕らの事業は日常の身体ケアを最大化するのがコンセプト。コンディショニングの市場規模は今後拡大すると思うので、20〜30年後にはこの領域を席巻できるように進めていきたい」。
先進国の中でも日本はヘルスリテラシーが低く、健康に対する情報も少ないと中西氏は指摘する。「"本当にいいもの"を作っている会社はいっぱいあるが、社会に届いていない。僕らはそのギャップを埋めていきたい」とし、"ヘルスケア版ゾゾタウン"のようなECモールの立ち上げの準備も進めていく。
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