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規制解除で再開ムード高まるNYをレポート、新しい試み「オープン・ブルヴァーズ」とは?

ACROSS 2021年夏NYC
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規制解除で再開ムード高まるNYをレポート、新しい試み「オープン・ブルヴァーズ」とは?

ACROSS 2021年夏NYC
ACROSS編集部
ACROSS

ポスト・コロナの都市のニューノーマルは、アウトドア!

「オープン・ブルヴァーズ(Open Boulevards)」

地下鉄の24時間運行を再開するほか、飲食店や小売店、劇場、文化施設なども収容人数の規制を撤廃する、と発表されたのは5月のGWのことだった。NYCのことである。その後、5月末には、市内の飲食店も店内の人数制限がなくなり、一気に街に人が溢れ出し、再開ムードに溢れるNYCの今を在住20年以上のコンサルタントYoshiさんからのCOVID-19レポート続編です。

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アムステルダム・アベニュー。オープン・ブルヴァーズの一つとして、週末に自動車の通行を禁止して、歩行者に開放している。

「オープン・ブルヴァーズ(Open Boulevards)」とは?

2021年5月12日、ニューヨーク市のデブラシオ市長は「オープン・ブルヴァーズ(Open Boulevards)」を発表した。市内10ヶ所の大通りで週末に自動車の通行を禁止して、食事の席やピクニックのテーブルを出すことができるようにするプログラムのことだ。

アムステルダム・アヴェニューなどの大通りが、5ブロックにわたり歩行者に開放され、路上でパフォーマンスも行えるというから、試験的とはいえ大胆な試みだ。

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テント型の飲食席。ハドソン・ストリート。

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センター・ストリート。レストランが多く並ぶ通り。昨年夏の早い時点からストリータリーが並んでいた。

制約は解除、マスクなしの完全再開へ

2020年3月に全ての活動が停止した「PAUSE (一時停止)」から1年と2カ月。5月17日には一年ぶりに地下鉄の24時間運行が復活し、5月19日には屋内での飲食や小売店の人数制限が解除された。8月には再開を記念するコンサートがセントラル・パークで行われることも決まった。夏の訪れに合わせて完全再開へと加速するニューヨークの通りには、再び多くの人が溢れ始めている (*1)。

人気のレストランはかなり前から予約がとれなくなっている。ニューヨークの復活を告げる何よりの証拠だ。ほんの数ヶ月前まで解雇が続いていた市内の飲食業は急速な立ち直りをみせていて、一年ぶりの外食におしよせる客の急増に応えて求人を出すものの、依然人手不足が続いている。

三度の現金給付を含む連邦政府の手厚い経済政策が奏効したのか、トンネルの出口に待っていたのは沸き立つようなオプティミズムと好況感だった。

*2020年7月の記事
https://www.web-across.com/todays/p7l7560000043cfj.html?ra=1

そのオープン・レストランツの申請データによると、2021年5月7日時点で、約11,400軒の飲食店がそのプログラムに登録している (*3)。市内にはおよそ2万5千軒のレストラン・バーが存在するとされているから、ほぼ半数の店が屋外の場所を利用して営業しているわけだ。車道の利用が許可されたレストランも多く、飲食業が利用申請した車道の面積の合計は約19万平方メートルで、セントラル・パークの約5%に相当する車道がレストランに変わったことになる (*4)。

昨年の夏から、車道のあちこちで「ストリータリー」(屋外の食事席のための建築物、street + eateryの造語) が次々と立ち上がり始めた。整然としたパリのテラス席とは対照的に、思い思いのちぐはぐなストリータリーが乱雑に並ぶ様は、美観という言葉を知らないこの街に相応しい、いかにも混沌とした光景ではある。

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ハドソン・ストリート。駐車レーンにストリータリー。

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エリザベス・ストリート。通りに簡易席を設置しての営業。

都市の未来はアウトドア!

パンデミックは私たちに人との距離をとり、外出を控えることを求めたが、同時に多くの活動が屋外へとシフトすることも促した。高層のオフィスから人が消えて、垂直の都市がストリートに溶け出した。レストランが車道を浸食し、ジムのワークアウトが駐車場で行われ、公共図書館さえ屋外に流れ出したのだ。

市も飲食店も、一体何をどうすればいいのか手探りの状態で、半ば苦肉の策として導入されたオープン・レストランツは、当初は2020年の10月31日で終了する予定だったが、飲食業と利用客の絶大な支持を得て、パンデミックが終わった後も永続することが昨年9月に早々と決まった。

オープン・レストランツとほぼ同時期に、やはり一時的な措置として導入された「オープン・ストリーツ」は、市内の一部の通りで自動車の通行を禁止し、歩行者と自転車に安全な場所を確保することを目的としたものだ。これまで83マイル (133km) 相当の通りがその対象になっている。住民の反響は大きく、今年の4月にそのプログラムは正式に法制化され、やはり永続化が決まった。急場凌ぎの一時的なプログラムが、住民の支持を得て拡大し、法律によってロックインされたことになる。

パンデミックで学んだことの一つは、ここに住む私たちにはもっと多くのパブリック・スペースが必要だということだった。公園は公衆衛生に欠かせない。怪我の功名とでもいうべきか、パンデミックを通じて通りの利用方法を短期間で変えることができた事実は、都市の未来をアウトドアに求める機運をいよいよ高めることになった。

通りを人びとの手に取り戻そう。2025年までに市内の通りの25%で自動車の通行禁止を求める「NYC 25x25」のイニシアチヴが生まれた。通りと歩道は市内のパブリック・スペースで最も大きな部分を占めている。その75%以上を自動車が占有する歪な状況を是正しよう。通りは自動車のためにつくられたわけではない。通りは自動車のものという誤った固定観念を払拭するところから始める必要がある。

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ブルックリンのヴァンダービルト・アヴェニュー。オープン・ストリートが大成功しているネイバーフッドの一例。

集中から分散化へ?

ストリータリーと歩道の席が加わったことで、飲食店の席の数はここ一年で大きく増えたことになる。ホスピタリティはこれまでと同様に、いやこれまで以上に、再開するニューヨーク経済の中心を担うことになるのだろうか。ユニオン・スクエア・カフェやシェイク・シャックの経営者として知られるダニー・メイヤーが、ニューヨーク市経済開発公社の会長に就いたのも気になるところだ。

それでも全ての飲食店が再開を謳歌しているわけではない。オフィスが多いミッドタウンのレストランは、通勤客が消えたため客足も消えたという。ロンドンでは昨年春に同じことが指摘されていた。ロンドン中心地のオフィスで働く人たちを相手にサンドウィッチ店を展開して急成長したプレタ・マンジェは、一夜にしてそのビジネス基盤を失い、「プレタ・エコノミー」の限界が指摘された。

その一方で、ブルックリンやクイーンズの居住地区にあるカフェやレストランは、自宅で働く人が増えたことによって客足が増えている。ブルックリンの五番街の両脇にはストリータリーが所狭しと並び、クイーンズのジャクソン・ハイツでは、オフィスに行かなくなった人のためにレストランが働く場所を提供してもいる。マンハッタンと違って、観光客が消えた影響を受けることもなかった。

再開に伴い、従業員をオフィスに戻す企業が出てきたが、オフィスと自宅の両方を使い分ける「ハイブリッド型」の働き方が今後も続くという見方は強い。それは従来のオフィス街から働く場所を分散しうる。そしてそれを追いかけるように、飲食店も従来のマンハッタンへの集中から分散化する可能性がある。 

オフィス市場そのものに変化の兆しは見ることができる。オフィス需要が急減するなかで、ミッドタウンのオフィスをアパートに転換することを促す準備が進んでいる。既存のゾーニング法の範囲内で、運用ルールを変更することで対応する予定だ。パンデミック期はもちろん、再開に続くポスト・パンデミック期においても、青写真が意味を失う世の中で、迅速に様々な策を試すことが求められていると言えるのかもしれない。 

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