■チェーンストア最大手のウォルマートは26日、カジュアル小売チェーン大手のギャップ(GAP)と提携し、ホームデコレーションやインテリア雑貨等、ホームブランドを専売することを発表した。
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衣料販売でライバル関係にあったチェーンが、お互いの強みを生かして協業することで新たな顧客を創造する。
巣ごもり需要で拡大したホームグッズ市場にウォルマートはGAPの名前を冠した専売ブランドでシェアを取るのだ。
GAPがデザインしたホームデコレーションや食器などのテーブルトップ、ベッディング等のリネンを扱う「GAPホーム(GAP Home)」は約400アイテム。
デニム生地やカンブリック(薄手で軽量の綿または亜麻織物)、オーガニックコットン、ポリエステル繊維と混紡したリサイクル生地などを使ったカーテンやクッション、タオルなどがウォルマート・コムで6月24日から販売される。
15.88ドルのデニム柄の枕から64.98ドルのリバーシブルなキングサイズ・コンフォーター(掛け布団)など、9月からの「バック・ツー・カレッジ(Back to College)」で手頃な価格で提供する。
ウォルマートではGAPホームをネット販売から開始し、徐々に店舗にも広げていく考えだ。GAPも一部店舗で取り扱うという。
数年契約となる両社の提携についての詳細は明かされていない。
ネット販売が拡大するに伴い、新たにプライベートブランドをローンチしたり、他社と提携した専売ブランドを発表するチェーンが増えている。
ターゲットは過去5年間で30以上のプライベートブランドをローンチしており、他のブランドと提携した専売ブランドまで合わせると現在までに50以上のブランドがある。
すでに10ブランドが10億ドル以上のビジネスに成長しているのだ。
1年前にローンチしたばかりのアスレジェー・ブランドの「オール・イン・モーション(All in Motion)」も10億ドル(約1,100億円)ビジネスに成長したことを今年2月に発表した。
新型コロナウイルス感染拡大の影響により、自宅でのエクササイズやトレーニングへの関心が高まったことを背景に、機能性や低価格等の理由でターゲットのアスレジャーブランドが急成長した。
そのほかターゲットの人気PBには子供服ブランドの「キャット&ジャック(Cat & Jack)」や食品ブランドの「グッド&ギャザー(Good & Gather)」、パーソナルケア&ビューティ・ブランドの「アップ&アップ(Up&Up)」、家具を含むホームファーニッシング・ブランドの「スレスホールド(Threshold)」があり、これらは年間20億ドル以上を稼ぎ出すビッグビジネスになっている。
また今年2月にはアパレルメーカーのリーバイスと提携したライフスタイル専売ブランド「リーバイス・フォー・ターゲット(Levi's for Target)」を期間限定でローンチした実績がある。
再建途中にあるホームファーニッシング最大手チェーンのベッドバス&ビヨンドもプライベートブランドを現行の10%から30%に大幅に拡大する計画を明かしている。
ベッドバス&ビヨンドは今月10日、室内装飾や収納、キッチン&ダイニングなど1,200アイテム以上に及ぶ戦略的ブランド「シンプリー・エッセンシャル(Simply Essential)」を発表。
リストラを進めるベッドバス&ビヨンドは1年間で3分の1となる32%(約500店)も店舗数を減らしつつ、広範囲なカテゴリーに及ぶプライベートブランドをローンチしたのだ。
ベッドバス&ビヨンドに2019年11月にCEOに就任したマーク・トリットン氏はその前までターゲットのチーフ・マーチャンダイジング・オフィサー(商品開発の主任)であった。
スイスのUBS銀行は今年3月、アマゾンが昨年にファッション販売の売上高でウォルマートを抜き去り全米トップに立ったことを発表した。
アマゾンの存在感が増すなか今後も大手チェーンストアによる新たなブランドが生まれることになるのだ。
⇒こんにちは!アメリカン流通コンサルタントの後藤文俊です。昨日までは競合関係にあっても、環境や事情が変わり、今日から味方同士になるのは英語でもほぼ直訳となる「Yesterday's enemy is today's friend(昨日の敵は今日の友)」があります。ウォルマートとGAPの関係も昨日のエネミーが今日のフレンド。ウォルマートをライバルとは思わなくてもGAPの勢いのあった頃、激安王のウォルマートと提携するとは夢にも思わなかったはずです。特に古くからGAPブランドに矜持を持つデザイナーはウォルマートと専売ブランドは絶対にありえないと思っていたはず。一方で、これまで何度も店舗を大量閉鎖し、昨年もGAP本体やバナナ・リパブリックなど225店舗以上を閉店すると発表するほど追い込まれていました。いまやGAPにとって「立っている者は親でも使え」ぐらいの勢いでウォルマートとの提携となったのでしょう。「誰でも良いからそばにいる者に用事を頼む」ように、ウォルマートとの協業です。ウォルマートにとっては渡りに船かもしれませんが。
どちらが頭を下げて提携を依頼するなんてことは、アマゾン・エフェクトにコロナ禍ではむしろどうでもいいこと。「うちはアンタの社風やブランド、やり方」と合いませんと頑なにしていたら生き残れません。
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