5月9日の日経新聞のサイエンス面に「現代人は『引き算』が苦手」という見出しで、米バージニア大学のチームが英科学誌ネイチャーに発表した「人間は引き算の決断が苦手で、足し算にこだわる」とする説を紹介する記事が掲載されており、興味深く読ませて頂きました。
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要は、チームがいくつかの実験で、調査対象者に、問題解決のためのいろいろな問いかけをしたところ、多くの人が、「引く(減らす)」ことよりも「追加(増やす)」するで物事を解決する傾向があることに気づいた、という話です。
本文で紹介されていた例をいくつか抜粋して紹介させていただくと、
〇エッセーを改善するように頼まれると、多くの人は文章を長くした
〇レシピを改善するように言われると、人々は多くの材料を投入した
〇旅程を整えれるように頼まれると、多くの人は立ち寄る場所を追加した
など、足し算をする(増やす)行動をとる人が多かったとのこと。
一方、別の質問で、
改善にあたり、追加することも取り除くこともOKであることを伝えると引き算のアイデアが増えたそうです。
記事の後半では、専門家の方々が
「引き算の発想があっても、引く決断は葛藤を生む」「引き算は過去の労力が無駄になる負い目もある。」
ことを指摘しながら、
ウォークマンやiPhoneの例を挙げて「勇気をもって引き算を」と推奨する一方、
「注意すべきは大切なものを引き去らないことだ。重要な何かを見極められたら引き算もしやすいが、それができないから苦労する。」
と結んでいます。
社長さんや上司に「改善しろ」、と言われると、多くの人が、今のままでは物足りないのでは?と忖度し、
どうしても、選択肢や仕事を増やすこと=足し算中心に考えてしまうのは、企業現場でもよくある話ではないでしょうか?
この話を、日頃、業務改善に当たる仕事の現場で感じていることに照らし合わせて考えてみたいと思います。
1)在庫の中身の改善
在庫は金額や数量ではなく、中身(鮮度)が大事な時代。多くの現場では、過去から現在の売れ筋商品の仕入を増やそうと考えがちですが(足し算)、同時に、期限までに売り切れない死に筋商品を換金して(引き算)、未来に売れる、鮮度のよい在庫の中身に入れ替えるアクションが大事。
2)利益体質づくり
販促費の手を尽くして、伸びしろがあり、純増となる、新販路であるECの売上増に躍起ですが(足し算)、 その一方で、既存店の利益額が増える方策や不採算店舗を整理するなど、引き算による利益体質づくりが求められています。
3)未来への投資のための現預金増
先行き不透明なご時勢に、借入を増やして、しばらくの運転資金は確保されたと思いますが(足し算)在庫や資産などお金に換わるもの(埋蔵金)を換金(引き算)、回転させて、現預金を増やしたい時です。増えた現預金は、未来に利益を稼ぐ新鮮な商品仕入や生産性向上のためのソフトウエア投資に使いたいです。
4)無駄な仕事をなくして生産性向上
人員減らして(リストラ)1人あたりの仕事を増やす(足し算)ようなことが行われていますが、人件費は下がっても、生産性は上がらず、モチベーションが下がるばかり。業務棚卸で無駄な仕事を見つけて、勇気をもって止めて(引き算)、利益向上のために優先度の高い仕事に集中させる環境をつくり、1人あたりの生産性(利益)を増やしたいところです。
などなど、アイデア出ししていると、いろいろ出て来そうです。
是非、皆さんも、足し算だけでなく、引き算も選択肢に入れて、身の回りの仕事を見直してみてはいかがでしょうか?
右肩上がりでない市況においては、引き算が利益確保の決め手になることも少なくないと思っています。
執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩
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