パンツより長い歴史のあるファッションアイテム、スカート。軽やかな着こなしが楽しめるシーズンとなり、各ブランドにも様々なデザインのものが登場しています。スカートの種類にはフレアーやタイトなどの形と、ミモレやマキシなどの丈の長さがあり、時代によってトレンドは変化していますが、特に丈については、“景気が良いとスカート丈が短くなる”と議論されたことがあるほど、時代背景との相関性が強いと考えられていました。そこで今回は「スカートの丈」に注目。スカートの起源はもちろん、どの時代にどのようにしてスカートに丈が登場したのかを紐解いていきます。また、ブランド名の付いた「シャネルレングス」についても解説します。
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スカートの起源
スカートとは腰から下を筒状に覆う、脚のない独立した腰衣のことを指します。ファッションの歴史において、スカートの起源は古代エジプト人が腰に巻いていた「ロイン・クロス」だと言われています。時代や身分によって様々な丈や巻き付け方があったようです。そして次第に、布の端を縫い筒状にし、ウエストに紐を通したものが登場。中世までは男女共にこのスカートの原型となったものを着用していました。
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時代とともに変化するスカート
中世ヨーロッパで、馬に乗る際などに機能性が高いことから男性の間でパンツが流行。スカートは基本的に女性のものとして扱われるようになり、装飾性や美しさが重視されていきました。さらに洋裁技術が進むと円形裁断が考案され、膨らみのあるスカートが貴族の間で好まれるようになります。スカートのふくらみはどんどん誇張されていき、コルセットで腰を絞るシルエットが流行したこともあり、ロココ時代のスカートの膨らみは最高潮だったと言われています。この時代のスカートは、中にフープを入れ膨らませており、釣鐘スカートとも呼ばれました。
スカートに丈が登場
19世紀になると女性解放運動の気運が高まり、女性がスポーツを楽しむようになったことでスカートの丈が次第に短くなっていきます。そして戦後には、社会進出を行う女性が増加し、スカートの丈はふくらはぎ、膝下と徐々に上昇。1960年代にはミニスカートが大きなブームを巻き起こしました。1965年以降にはマキシも登場するなど、時代と共にファッションの多様化が進んでいきました。
多様化の中で生まれた「シャネルレングス」
様々な時代背景と相まって変化してきたスカート。だからこそ現在では多く丈が存在し、新しいトレンドを生み出し続けています。そしてそのブームを生み出しているのは、やはりファッションブランド。その象徴と言えるのが「シャネルレングス」ではないでしょうか。「シャネルレングス」とは、ニーレングスより少し長く、膝がちょうど隠れるくらいの丈のことを指します。新しい女性の生き方を象徴する丈としてミニスカートが登場しても、ココ・シャネルは女性の膝を最も醜い部位であり見せてはいけないという独自の哲学を守り抜き、ちょうど膝が隠れる丈の「シャネルレングス」を打ち出しました。このように聞くと、ココ・シャネルが「女性らしさ」に捕らわれているように聞こえるかもしれませんが、実際は女性が自由に生きていくために着心地や機能性を追求したシャネルスーツを打ち出すなど、常に女性の自由のためのデザインを生み出し続けるデザイナーでした。そのため、Diorが打ち出したロング丈のニュールックに強い反発を示したという話もあるほどです。機能性やデザイン性はそのままに、女性としての美しさを残した絶妙なスカート丈は、まさに「シャネルレングス」と呼ぶに相応しいCHANELの美学が反映された丈と言えるでしょう。
まだあるスカートの丈の種類
スカートの丈には、ブランドの名前が付いた「シャネルレングス」のほかにも様々な呼称が存在します。どれも聞き馴染みのあるものばかりだと思いますが、その成り立ちについては、知らないことが多いかもしれません。代表的なものをいくつか紹介していきます。
ミニ一般的には膝上10~20センチ程度の太もも丈のスカートのことを指します。1950年代の後半に、ロンドンのチェルシー地区のおしゃれな女子たちを中心に既製品のスカートの丈を短くリメイクして着るファッションが流行。ファッションデザイナーのマリー・クワントが目を付け、若者向けにミニスカートを提案しました。1965年に同じくファッションデザイナーのアンドレ・クレージュがオートクチュールのパリコレでミニスカートを発表したことにより世界的なブームとなります。
マイクロミニ1965年に発表されたミニスカートが世界的に大流行する中で登場したのが、更に丈の短い膝上30cmのマイクロミニです。マイクロ(micro)は直訳すると“微少・微細”という意味合いで、小さいというギリシャ語に由来するとされています。ヒップがギリギリ隠れるほど極端に短い丈のスカートですが、イギリスのスーパーモデル・ツィッギーがポップに、ヘルシーに着こなしたことから大衆の間でも大きな人気を集めました。“景気が良いとスカート丈が短くなる”という説は、この高度経済成長時代の好景気の際にミニスカートが社会現象になったことが、印象として強く残っているためだと言われています。
ニーレングスニーとは膝の意味で、スカートはもちろん、コートやドレスの最も標準的な丈とされている膝丈のこと。膝頭からそのもう少し上くらいまでの長さのことを指します。ロングやミニを語る上で、基準となる丈とも言えるでしょう。正確な年代は不明ですが、1926〜1928年頃には膝下スカートが登場していることから、同年代頃から着用されていたと考えられます。
ミモレ(ミディ)ミモレとはフランス語で「ふくらはぎの中央部」という意味。ミモレ丈とはまさに、ふくらはぎのちょうど真ん中あたりの丈のことを指します。2014年に日本でも大流行したのは記憶に新しいですよね。そして、似ている長さにミディがありますが、ミディはミモレより少し短めの丈。その呼称は、1960年代末に少しずつ浸透して広まっていったようです。
マキシ中世まではくるぶしが隠れる、もしくは裾が床に着くくらいのマキシ丈が主流でした。そのため、丈としての歴史は古いと考えられます。しかし、マキシという呼称としてはミニスカートの大流行に対抗するように1965年以降に生まれたとされています。最大限に長い(マキシマム)の略語で、くるぶしが隠れる程度の丈を差します。
ちなみにロングスカートとは、ミニスカートに対して用いられるもので、丈の長いスカート全般を指す名称です。ふくらはぎより下の着丈になるスカートを差すと覚えておくと良いでしょう。また“景気が良いとスカート丈が短くなる”という説には、景気が悪いと素材節約のためにスカート丈が短くなる、という逆説もあります。現在では価値観の多様化も進んでいるためどちらとも言いづらいですが、スカートの丈が生まれた背景には、女性の生き方や思想が大きく関わったと考えられそうです。
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