決算会見を開いた三陽商会 大江伸治社長
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三陽商会が発表した2021年2月期通期の連結最終損益は、49億8800万円の赤字だった。最終赤字を計上したのは2016年度から4期連続。2020年5月に同社の社長に就き再生プランに取り組んでいる大江伸治氏は、前期の実績について「黒字化達成への基礎固めができた」と振り返り、今期(2022年2月期)は事業構造改革を引き続き推進しながら基礎収益力の回復を目指す。
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今期の通期予想は売上高440億円、営業利益1億円と黒字化達成を掲げるが、新型コロナウイルス感染収束の目処が立たないことから最終損益はブレイクイーブン(損益ゼロ)を目標に据える。前期比では増収増益となるが、2019年比では売上高、営業利益ともに2割強下回る見込み。具体的な施策として在庫コントロールの強化や販管費の削減に加えて、期初の仕入れを70%に抑え、残りの30%は保留枠として期中に投入を判断していく。品番やSKUの削減にも引き続き取り組み、集約型MDに転換する。
EC売上高は2019年比10%増の76億円と予想。現在の自社ECはプロパー価格の商品構成比が20%未満と"セールのプラットフォーム"と化しているため、今年3月からプロパー販売を強化し、粗利を9億円改善する予定だ。EC化率は12%から17%に上昇する見通し。
百貨店チャネルでは前期に160店舗を撤退しており、店舗数減少に加えてコロナの影響による集客の回復遅れを踏まえ、百貨店の売上比率は63%から57%に縮小する見込み。直営店については出店強化の考えで、今期は「マッキントッシュ ロンドン(MACKINTOSH LONDON)」初の旗艦店を出店するほか、都市型商業施設に向けたユニセックスライン「マッキントッシュ フィロソフィー "グレーラベル"(MACKINTOSH PHILOSOPHY "GREY LABEL")」、ブランド複合型店舗「サンヨー エッセンシャルズ(SANYO ESSENTIALS)」の店舗拡大を計画する。
不採算事業の「ラブレス(LOVELESS)」と「キャスト:(CAST:)」は前期にリストラクチャリングに徹底的に取り組み、ラブレスは販管費をほぼ半減し、営業赤字を3億円まで縮小。今後も計画達成の状況をみながら事業継続・撤退を判断するという。キャストに関しては「今期でブレイクイーブン達成が見え始めた」(大江社長)と手応えを語った。
また、今期中に2025年2月期に向けた中期経営計画をまとめる方針。現時点では売上高520億円、売上総利益率55%、販管費率45%、営業利益率10%をイメージしており、新規事業・ブランドの導入も検討していく。M&Aの可能性も匂わせた。
同社は2015年春夏シーズンを最後にバーバリー社とのライセンス契約を終了して以降、苦境が続いている。立て直しを進める大江社長は「事業規模で言うとバーバリーショックを脱却できたとは全く言えない。現在のブランドポートフォリオではカバーに至っていないし、当面補填していくのは困難」と見解を示した一方で、今期ブレイクイーブンを達成できた場合は新たな収益構造を構築できたという意味で「ショックから抜け出したといえるのではないか」とコメント。今期は「何が何でも黒字化を確保したい。オフェンスとディフェンスを適宜に使い分けながら必要とされる判断をし、施策を実行していきたい」と意気込みを語った。
なお、報道陣からの新疆綿の取り扱いに関する質問では、一部のブランド商品で使用していることを明らかにし、「CSR観点を十分踏まえた上で、不適切と判断した場合は原産地の異なるものに切り替えるなどの対応をしていきたい」と答えた。具体的なブランド名については差し控えた。
■三陽商会 2021年2月期連結業績
売上高:379億3900万円(前期は688億6800万円)
営業損益:89億1300万円の赤字(同28億7500万円の赤字)
経常損益:90億3600万円の赤字(同28億9900万円の赤字)
当期純損益:49億8800万円の赤字(同26億8500万円の赤字)
※2020年2月期は決算期変更に伴う14ヶ月の変則決算
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