■経済誌のフォーチュン誌は12日、今年で24回目となる「最も働きがいのあるベスト企業100(100 Best Companies To Work For)」を発表した。
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同ランキングは、フォーチュン誌と働き方に関する研究機関「Great Place to Work Institute」と連携し米国企業(従業員数1,000人以上で創業7年以上)を対象に従業員の仕事に対する満足度、給与体系、福利厚生制度、ダイバーシティなどを考慮し働きがいで格付けしている。
今年はパンデミックにより、従業員ケアや公平性、会社への信頼度などを基に危機的対応まで反映した内容となっている。特にコロナ禍での従業員の心と身体と財務の健康に地域社会へのインパクトまで網羅した。
通常は75%の従業員フィードバックに25%の給与や福利厚生などの分析になっているが、今回はパンデミックにより分析項目を変更。60%の従業員フィードバックに40%は従業員ケアから地域社会に行ったサポートまで精査したのだ。
同ランキングに名を連ねることが「一流企業の証」と言われている一方で、今年は「一流企業の真の姿」を浮きぼりにした、興味深いランキングとなっている。
小売業界でトップになったのはスーパーマーケットのウェグマンズ。
ウェグマンズは4年前、「最も働きがいのあるベスト企業100社」に20年間連続で選ばれた企業に贈られる「働きがいのあるレジェンド企業(Great Place to Work Legends)」となっている。
ニューヨークを中心に7州に104店舗を展開するウェグマンズは前年の3位から4位に後退したもののホワイト企業の地位は不動だ。
5.3万人が働くウェグマンズのダイバーシティは女性従業員率が54.2%と昨年から上昇しマイノリティ率も昨年の24.2%から25.8%と増加した。
ウェグマンズのCEOには2017年からコリーン・ウェグマン氏が就任している。2005年からCEOを務めていたコリーンの父、ダニー・ウェグマン氏は会長職。1916年創業のウェグマンズではコリーンが四代目のCEOとなり、同社では初の女性CEOとなっているのだ。
コリーンの妹で同社シニア・バイス・プレジデントのニコル・ウェグマン氏がいる。ウェグマンズでは父から娘への事業継承が上手くいっているだけでなく食品スーパーとしての危機的対応も一流といえるのだ。
14位には国内に約2,000店舗を展開するディスカウンターのターゲットが入っている。圏外から上位にランクインしたターゲットは従業員数が40万以上となる大手チェーンストアだ。
売上を20%も上げるだけでなくパンデミック初期には従業員への時給を2ドルもアップし、最低賃金も時給で15ドルに引き上げたのだ。
スタッフへの心身の健康に配慮したことや65歳以上のシニアや妊婦のスタッフに対して全額有給休暇を与えていることも評価されている。
24位には北カリフォルニアで家族経営で展開するナゲットマーケットだ。サクラメントを中心に13店舗のナゲットマーケットを含め、全16店舗の食品スーパーを営むナゲットは、競合他社も行っている時給当たり2ドルの危険手当だけではない。
コロナ禍では外部のセキュリティ企業を採用し、マスク着用を拒否して怒る顧客に従業員が直接対応することがないようにしたのだ。
医療保険を100%付与するだけでなくストレスフルな職場環境を改善しようとする姿勢で昨年の79位から24位に大幅にランキングをあげたのだ。
42位にはフロリダを中心に1,264店舗を展開する食品スーパーのパブリクスだ。
創業が1930年のパブリクスは現場スタッフの福利厚生等に心のケアであるメンタル・ヘルス・ケアを含めたことやコロナ感染したスタッフに全額有給休暇を与え、検疫を受けなければならなくなった従業員にも補償を行ったのだ。
地産地消を拡大しながら、団体への寄付を通じて地域の飢餓にも取り組んでいることにより昨年の36位から順位が上昇した。
一方、残念な結果となっている小売企業はコンテナストアだろう。コンテナストアは4年前の30位から3年前に93位と落ち込み、一昨年から圏外となってしまった。
圏外に落ちる直前までコンテナストアは19年間連続して選出されていたのだ。あと1年ランキングに残っていればレジェント企業となっていた。
また、3年に55位だったビルトア・ア・ベア・ワークショップや同じく3年前に88位だったノードストロームも2年前から圏外になっている。
4年前まで常連だったホールフーズ・マーケットやクイックトリップ、イケアは今回も入っていない。
今年から圏外となった小売企業にはREI(昨年は60位)とカスタムインク(92位)がある。
また従業員幸福度を世界トップレベルに引き上げた靴のオンラインストアのザッポスは今年も選ばれなかった。
日本人に企業ファンが多いザッポスは2011年に6位をピークに2012年に11位となった。2013年は31位、2014年は38位、2015年は86位となり落ち続け2016年以降はランク外となっている。
ザッポスは2014年、組織全体に権威と意思決定を公平に広げる「ホラクラシー(Holacracy)」に移行。
従業員が働きやすくするため階層構造や上下関係を失くしたものの、なじめないことを理由に従業員満足度が下がっており改善も見られずコロナ禍の危機対応も評価されていないのだ。
その他、今回ランキングに選ばれた小売企業にはカーマックス(36位)やオフプライスチェーンのバーリントンストアズ(69位)、コンビニチェーンのシーツ(83位)がある。
トップ画像:レジェント食品スーパーのウェグマンズ。真のホワイト企業はコロナ禍でも強かった!
<小売企業のランキング>(カッコ内は前年順位)
4 ウェグマンズ(3)
14 ターゲット
24 ナゲット・マーケット(79)
36 カーマックス(20)
42 パブリクス(39)
69 バーリントン・ストアズ
83 シーツ(80)
⇒こんにちは!アメリカン流通コンサルタントの後藤文俊です。人はいい時にあるより悪い状況にあるほうが、その人らしさが浮き彫りになるものです。企業も同じでしょう。リーダーシップとは危機的状況に直面したときに本当の力が試されるのです。そういう意味でいうと今年のフォーチュン誌「最も働きがいのあるベスト企業100(100 Best Companies To Work For)」の記事は大いに注目に値します。全世界で影響を受けなかった人がいないというような100年に1度あるかないかのパンデミック。コロナ禍で企業がどう対応したのかは、企業のあるべき姿を具現化したものだと思いますね。今回選出された企業は社員全員が本当に胸を張ってもいいレベルといえるでしょう。日本のメディアも危機対応に優れた企業については取り上げざる得ないでしょうね。で、やっぱりというか、レジェンドは強かった。食品スーパーのウェグマンズはランクを一つ落としただけ。パンデミックでも実質的に高評価は変わらないという真のホワイト企業。口先だけでなく何をしたかが求めらます。
残念なのは...ここでは取り上げません。単に「ヤバイよ!ヤバイよ!」というより、危機的状況に陥った時の素早い対応が一流かどうかを左右します。
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