世界中がパンデミックの影響を受けた2020年度。 世界の大手アパレル専門店各社の決算が出揃い、売上高や営業利益などをまとめる機会ができましたので、毎年恒例になりました売上高ランキングTOP10を共有させていただきます。 円建て比較にあたり、為替レートは2021年1月末の €=127.04円、スウェーデンクローナ=12.54円、US$=104.21円、英国£=142.95円で換算しています。
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尚、アメリカのTJXやROSSのようなオフプライス・ストア、また、非公開企業で欧州大手アパレルチェーンC&Aおよび中国で急成長中の越境ECファストファッションSHEIN(シーイン)あたりもTOP10にランクインする規模と思われますが、それぞれ、売上高がつかめないため、除外しております。
順位社名本社;決算期売上高前年増減営業利益営業利益率期末店舗数基幹業態
1位インディテックス(西;2021.1期)2兆5,918億円-28%1,914億円7.4%6,829ZARA
2位H&M(瑞;2020.11期)2兆3,453億円-20% 388億円1.7%5,018H&M
3位ファーストリテイリング(日;2020.8期)2兆0088億円-12%1,493億円7.4%3,630UNIQLO
4位GAP(米;2021.1期)1兆4,380億円-16%-898億円赤字3,715OLD NAVY
5位Lブランズ(米;2021.1期)1兆2,344億円-8%1,645億円13.3%2,669Bath&Body Works
6位プライマーク(愛;2020.9期)8,436億円-24% 517億円6.1%384Primark
7位しまむら(日;2021.2期)5,426億円+4% 380億円7.0%2,199しまむら
8位NEXT(英;2021.1期)5,183億円-17% 548億円10.6%491NEXT
9位アメリカンイーグル(米;2021.1期)3,917億円-13%-282億円赤字1,078AEO
10位アーバンアウトフィッターズ(米;2021.1期)3,594億円-13% 4億円0.1%645Anthropologie
経営破綻した米アセナリテール(前年7位)が消え、10位以下に控えていたアメリカ企業がランクインした格好ですが、上位6位までのランキングは2019年と変わりはありません。
以下、1位から5位について、そして、気になるところにコメントさせて頂きますね。
1位のインディテックスは
通期コロナの影響を受けて大幅減収、減益も、7.4%の営業利益率を上げたのはお見事でした。全世界の店舗でRFIDの導入と各国EC在庫と店舗ストックルーム在庫の一元管理が完了し、世界のどのアパレル専門店よりも、いち早くオムニチャネル化が完成した、と言ってもよいでしょう。EC売上比率は店舗の売上減もあって33%に。これから、同社のDXは顧客のスマホを使った店舗での拡張体験、そして、サーキュラーエコノミー(循環型経済)に力が入ります。
2位のH&Mは
第1四半期に売上、利益の改善が見れたものの、その後、3つの四半期、コロナの影響を受けて、大幅減収、減益も、何とか黒字着地した、経費コントロールと仕入コントロール力はさすがです。店舗閉鎖の影響もあり、EC売上比率は28%に。これからは、遅れていたデジタル化が回復のカギとなるか?それとも、やはり、低価格品はECでは損益が取りづらいのか?注目の1年になります。
3位のファーストリテイリングは
半期分、コロナの影響を受けながら、市場は日本、中国が中心で、欧米に比べ、回復が進んでいるため、欧州勢よりは、有利と言えるでしょう。特に国内ユニクロ事業の第4四半期の体質改善と踏ん張りは、柳井会長の執念を感じ、目を見張るものがありました。今期は、消費税分を値下げした分、同社がどう利益を確保するのかに注目です。
4位のGAPは
大幅減収赤字、GAP バナリパで228店舗閉店とリストラが続きます(GAP売上前比73.0%、BANANAは同57.5%)。店舗売上減で、オンライン売上は54%伸びて、EC売上比率は45%に(前年は25%)。
5位のLブランズは
ヴィクトリアズシークレット(VS)のリストラ後の見事なV字(利益)回復と言ってよいでしょう。営業利益額だけを見ると、インディテックスに次ぐ、世界第2位です。ヘルス&ビューティのバス&ボディワークス(B&BW)は、パンデミックに関わらず、店舗が前年並みをキープし、既存店+ECが45%増と大躍進。ECが倍増でVSとB&BWの売上が逆転。ヴィクトリアズシークレットの店舗の整理はついたようなので、今期は大幅増収増益しそうです。
以下、6位以下で、めぼしいところを付け加えますと、
しまむらがトップ10企業の中で唯一の増収増益。なんと、7位に浮上です。
これは、品揃え改革(同社らしい多品種小ロット高速回転の原点回帰)によって、かつての販売効率を回復しつつあるのが大きな要因です。
一旦、かつての販売効率まで戻った後、どこで伸ばすのかが、焦点になります。
8位のネクストは、得意の店舗網、物流網を活かし、C&Cを上手く併用しながら、オンライン売上比率が昨年の50%から65%まで高まりました。
今後、力を入れるのは、そのインフラをフル活用した、他社ブランドのEC事業(オンライン受注から配送まで)を、まるっと代行する、NEXT TOTAL Platform戦略への取り組みとのこと。面白いです。
この取り組みは、確立されたチェーンストアとして、違った意味で、世界一のインディテックスよりも先を行っている発想かも知れません。
今後、デジタルシフト後のチェーンストアのありかたの一例として、深堀りしたいと思います。
さて、まだまだ、パンデミックの影響が残る、2021年度のランキングはどうなるでしょうか。
筆者としては、インディテックス、Lブランズ、NEXTの3社に注目したいです。
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