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イケアがカタログの音声版を展開、「ながら聞き」を推奨

イケアがカタログの音声版を展開、「ながら聞き」を推奨

在米28年のアメリカン流通コンサルタント
激しくウォルマートなアメリカ小売業ブログ

■世界最大手の家具チェーンのイケアは10日、YouTubeなどに「IKEAカタログ」の音声バージョンをアップした。

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IKEAカタログの発行を終了したホームファーニッシング最大手はデジタル版カタログをいつでもどこでも「ながら聞き」できる、耳で聞くサービスを提供する。

目や手を使わず耳だけを使用した音声版は、家事や作業に忙しい人にも最新版のイケア家具を知ることが可能となる。

YouTubeやスポティファイ(Spotify)、オーディオブック(Audio Book)のサイトにアップしているのはフロントとバックページを含めた288ページに及ぶデジタル版カタログのオーディオ・バージョンだ。

IKEAカタログ音声版はフロントページから279ページまで。プロローグを含め13のチャプター(章)、トータルで約4時間に及ぶ内容で構成されている。一つのチャプターは10分~25分の長さにまとめられているのも音声版の特徴だ。

オーディオ・バージョンでは女性ナレーターがカタログにある画像の風景や家族、家具のセッティングを解説。画像に書かれている文章や家具や価格、また本文を読み上げるスタイルとなっている。それぞれの家具に番号が振られた注釈のパートは省かれている。

その一方で、家具について注意すべきポイントは効果音を入れて、新たに加えられているのだ。

例えばチャプター4(Chapter 4)では軽快な音楽とともに「第4章は、そのクラスで一番となる『トップ・オブ・ザ・クラス』です。カタログは60ページから75ページになります」と始まる。

ナレーターは「(60ページの画像には)オープン・コンセプトで、キッチン&リビングルームのくつろぐ5人家族が見えます」と解説し「パパはキッチンで中学生になる息子さんに宿題を手伝ってあげていて、ママは899ドルのソファに座って次男君に読み聞かせをしています」と続くのだ。

「年長のお姉ちゃんはスマートフォンにヘッドフォンでクールに音楽を楽しんでいます」と説明し「次ページにある小さな画像にはソファの反対側にある暖炉とテレビなどが写っています。テレビユニットは149ドル」とのナレーターだ。

ここで効果音が入り、壁掛けテレビでの組み立てについてしっかり壁に固定するよう注意を促している。このあとはトップ・オブ・ザ・クラスのタイトル下にある本文が読み上げられる。

 イケアは昨年12月、70年近く発行してきた冊子「イケア・カタログ(IKEA catalog)」の制作を終了することを発表。消費者の多くがネットを使って買い物するようになり、家具販売でもカタログなどの印刷物の必要性が薄れつつある時代の流れに合わせたのだ。ペーパーカタログのコストをオムニチャネル等のIT投資に充てる。

イケアがカタログを最初に発行したのは創業者のインヴァル・カンプラード(Ingvar Kamprad)氏がイケアを創業して8年目となる1951年。当時のカタログは全68ページで28万5,000部が印刷され、スウェーデン南部で配布された。

1998年にはビジネス・オフィス用の家具のみを掲載した特別版で、インターネットで入手可能な最初のカタログ「イケア・アット・オフィス(IKEA at office)」を発行した。2000年には印刷版とオンライン版を発行し、最盛期となった2016年には32ヶ国語からなる69バージョンが制作され、延べ2億冊のカタログが50以上のマーケットで配布されたのだ。

イケアは数年前からネットで注文してお店でピックアップするボピス等、オムニチャネル化に注力したことからカタログ需要も低迷していた。

これによりイケアのオンライン売上高は直近の決算で前年比45%増となり、ホームページ等へのアクセス数も40億件以上を達成。また拡張現実(AR:Augmented Reality)を利用した新モバイル・アプリ「イケア・プレイス・アプリ(IKEA Place app)」を導入するなどモバイルなどのネット上での顧客体験を充実させている。

3年前に導入したイケア・プレイス・アプリはAR技術を活用して、部屋の中に実寸大の家具を「設置」できるアプリだ。使い方は机やソファ、コーヒーテーブルなどイケアのほぼすべての製品が対象となるイケア・プレイス・アプリの使い方はカタログから商品をタップしてスマートフォンを部屋にかざすだけだ。部屋のどこにでもデジタル家具を仮想化して置けるのだ。

なおイケアにはイケア・プレイス・アプリの他に、数年前まで別機能になっていた「イケア・カタログ・アプリ(IKEA Catalog app)」を統合した家具販売でストアアプリの「イケア・ストア・アプリ(IKEA Store app)」がある。

 イケアでは70年に及ぶイケアカタログの歴史を記念した、最後の冊子を2021年の秋に発行する計画がある。

 イケアは世界30カ国に375店舗をもち、アメリカ国内にはニューヨーク・マンハッタンにオムニチャネルで最適化を図った約500坪の小型フォーマット「イケア・プランニング・スタジオ(IKEA Planning Studio)」を含め、52店舗を展開している。

 家具カタログの音声配信というイノベーションは今後、デジタルカタログと音声の統合に進化するかもしれない。

トップ画像:IKEAカタログの60~61ページ。チャプター4(Chapter 4)では軽快な音楽とともに「第4章は、そのクラスで一番となる『トップ・オブ・ザ・クラス』です。カタログは60ページから75ページになります」と始まる。

⇒こんにちは!アメリカン流通コンサルタントの後藤文俊です。IKEAカタログ音声版では最初、何を血迷ったのか?と思いました。ナレーターを使ってカタログにある内容を解説するのは極めてニッチな人たち(例えば盲目や文盲の人たち)にしか受けないと思ったのです。ただデジタル・カタログのイノベーションにおいて、序章と考えれば納得がいきます。文章の読み上げは意外に脳に優しいのです。写真が並んでいるカタログも、そこにある文章を読もうとしたら結構、労力が必要だったりします。例えばデジタルカタログの特定のページを開いてタップしオーディオが流れるようになれば、文字を目で追いながら聞いていられます。家事で忙しい人などはタブレットでデジタルカタログを表示しながらオーディオ版を聞くことでながら聞きができます。ながら聞きしながらタブレットに映っている画像をチラ見するのです。モバイル・アプリで表示するデジタル・カタログで、オーディオまで統合できたら聞いてみたいと思うものです。ナレーターに人気俳優等の選択オプションまであれば付加価値もでます。

 AI時代には人気ナレーターも自然な合成音声になります。いずれ大人気の女優やイケメン俳優、声優までデジタルカタログを読み上げるようになります。

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