■スーパーマーケット最大手チェーンのクローガーは4日、ネットスーパー専用倉庫としては最大級となるセントライズド・フルフィルメントセンター(Centralized Fulfillment Center:CFC)の稼働を開始したことを発表した。
インターネットで生鮮品などの食品を注文しピックアップや宅配サービスなど、急増するネットスーパー需要に対応する。
ADVERTISING
ソフトオープニングで3日から受注を始めたのはオハイオ州モンロー地区にある335,000平方フィート(約9,380坪)の自動配送センター(6266 Hamilton Lebanon Rd, Middletown, OH 45044)だ。
イギリスのネットスーパー最大手のオカド(Ocado)と提携したロボット物流は2019年6月に着工し、総工費5,500万ドル(約60億円)をかけて完成した。
世界最先端となるCFCには約400人が働き、4月初めのグランドオープニングに向けテスト受注を行っていくという。
CFCでは生鮮品から日用品まで約5万品目の在庫を保管・処理する能力を持ち、最新の人工知能(AI)やロボティクスの技術を活用しながら24時間稼働する。ロボットは50アイテムを約6分でピッキングから配送準備まで完了する。
CFCのセントライズド(Centralized)は一点に集中させるという意味であり、近隣にある複数のスーパーのネット注文を一括して受けることになるのだ。モンローCFCはオハイオ州にケンタッキー州やインディアナ州まで対応する。
CFCを展開することは、売り場と干渉せずにネットスーパーの受注を効果的且つシームレスに対応できる。一方、売り場を倉庫と兼用するネットスーパー展開ではスタッフによるピッキング作業が買い物客の邪魔になるだけでなく、受注過多では売り場の品薄を招いてしまう。
セール品などネットスーパー用に大量にピッキングされれば欠品となり、お店に来てもお客はセール品を買えないことになる。逆に来店客が先にセール品を購入すれば、ネットスーパー用にピッキングできず代替品となる。代替品は多くの場合、店にとって多大なコストを発生するのだ。
したがって食品スーパー最大手チェーンのクローガーでは、店の売り場とは別にネットスーパー用の倉庫を持つことになる。
巨大となるCFCはイニシャルコストが莫大となり、稼働まで時間を要するというデメリットがある。モンローCFCは5,500万ドルもかかり、着工から稼働まで2年近くもかかっているのだ。
一方、CFCとは別に同じくロボット物流だが規模は小さく、低コストで展開できるマイクロ・フルフィルメントセンター(Micro-Fulfillment Center:MFC)がある。
ウォルマートやアルバートソンズなどが展開するMFCは店舗併設もしくは店舗近隣に設置され300坪前後で稼働する。初期投資を最小に抑え、着工からわずか数ヶ月間で稼働できるため、食品スーパーではCFCよりも注目されているのだ。
なおクローガーは完成したオハイオ州モンロー地区のCFCの他、フロリダ州グローブランドの37.5万平方フィート(1.05万坪)CFC、ジョージア州フォレストパークの37.5万平方フィート(1.05万坪)CFC、テキサス州ダラスの35万平方フィート(9,800坪)CFC、ウィスコンシン州プレザント・プレイリーの35万平方フィート(9,800坪)CFCを建設中だ。
クローガーは昨年1月、6ヶ所目となるメリーランド州フレデリックの35万平方フィート(9,800坪)CFCを発表。他にもミシガン州ラムルスに最小となる13.5万平方フィート(3,780坪)CFC建設を明かしている。
最近では今年1月、アリゾナ州フェニックスに20万平方フィート(5,600坪)CFCを建てることを発表した。クローガーはオカドと提携したCFCを最大20ヵ所まで増やす計画なのだ。
クローガーが4日に発表した第4四半期(11月~1月期)では売上高が前年同期比6.4%増となる307.4億ドルだった。しかし経費が嵩んだため7,700万ドルの赤字に転落している。
既存店・売上高前年同期比は10.6%の増加だった。宅配サービスが前年同期比で249%も増加したことで、ネットスーパーを含むデジタル売上は同118%の増加となっている。
⇒こんにちは!アメリカン流通コンサルタントの後藤文俊です。クローガーのセントライズド・フルフィルメントセンター(Centralized Fulfillment Center:CFC)が稼働を始めたことで、ネットスーパーの新時代に突入しました。オカドグループと提携していることでクローガーではCFCを「オカド・シェド(Ocado Shed)」と呼んでいます。英語の「シェド(shed)」は「納屋」「小屋」を意味しますが、オカド・シェドは約1万坪にもなります。モンローCFCは一括集中の物流倉庫ということで、3つの州で展開する食品スーパー(数百店になる)のネットスーパー物流倉庫として稼働するのです。まだ詳細は明かされていませんがCFCのネットスーパーではラスト・ワン・マイルもしくは店まで運ぶミドル・マイルはどうするのか?です。ロボット化されたCFCでは確かにピッキングから配送準備まで短時間で完了します。その後ですね、課題は。オハイオ州モンローから離れた、ケンタッキー州やインディアナ州に住む利用者には短時間で宅配等できませんからね。
CFCやMFCのメリット・デメリットを考慮するなら、インスタカートによる代行ショッパーの店内ピッキングを含め、ネットスーパーの物流は3つをあわせ持つハイブリッド型になると思います。
ADVERTISING
PAST ARTICLES
【激しくウォルマートなアメリカ小売業ブログ】の過去記事
RANKING TOP 10
アクセスランキング
銀行やメディアとのもたれ合いが元凶? 鹿児島「山形屋」再生計画が苦境