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「ドン・キホーテ」展開会社が米老舗高級スーパーマーケット「ゲルソンズ」を買収

「ドン・キホーテ」展開会社が米老舗高級スーパーマーケット「ゲルソンズ」を買収

在米28年のアメリカン流通コンサルタント
激しくウォルマートなアメリカ小売業ブログ

■日本でディスカウントストア「ドン・キホーテ」を展開するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(Pan Pacific International Holdings:PPIH)は24日、ロサンゼルスを中心に展開する老舗高級スーパーマーケット「ゲルソンズ(Gelsons)」を傘下にもつ企業を買収することを発表した。買収金額は明らかにしていない。

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1951年創業で今年7月には創業から70周年を迎えるゲルソンズはTPGキャピタルが運営している。

富裕層が集まる地域を中心に南カリフォルニアに27店舗を展開している。

ゲルソンズが17店舗を展開していた2014年、当時の親会社だったアーデングループ(Arden Group)からプライベート・エクイティファームのTPGが3.94億ドル(約420億円)で買収した。

投資企業のバックアップを受けていたことで2015年には南カリフォルニアから撤退した食品スーパー「ヘイゲン・フード&ファーマシー(Haggen Food & Pharmacy)」から8店を買収し、南はサンディエゴから東はパームスプリングスまで店舗を拡大していった。

アップスケールの食品スーパーとなるゲルソンズの従業員数は現在、2,900人近くとなっており、2020年12月期の売上高は8.72億ドル(約9億円)だ。

 では高級食品スーパーのゲルソンズはアメリカではどのように見られているのだろうか?これを見るには約7.5万人の読者を対象にアンケート調査した、コンシューマー・レポート誌によるスーパーマーケット総合評価ランキングを参考にするべきだ。

2019年コンシューマーレポート誌8月号では食品スーパーやスーパーセンター、メンバーシップ・ホールセール・クラブなど96社を対象にに「総合的満足度スコア(Overall satisfaction score)」と13件の項目別に分かれている。

100点満点となる総合的満足度スコアは80点が大変満足で、60点がやや満足との評価だ。

一方、13の項目には「クリンリネス(Cleanliness of store)」「価格競争力(Competitiveness of prices)」「プリペアドフードの新鮮さ(Freshness of stre-prepared foods)」「接客対応(Helpfulness/attentiveness of employees)」「レジスピード(Checkout speed)」「青果の品質(Produce quality)」「青果種類の多さ(Produce variety)」「精肉の品質(Meat/poultry quality)」「PB品質(Store-brand quality)」「健康的なオプションの品揃え(Selection of healthy options)」「オーガニック食品の価格競争力(Prices of organic options)」「地産品の品揃え(Selection of locally produced products)」「エスニックフードなど海外品の多さ(Variety of international products/multicultural foods)」と多岐にわたっており、読者アンケートから最悪~最高の5段階で評価している(なお当ブログでは分かりやすいように最悪を1、最高を5と数値で表現する)。

 総合的満足度スコアで91点を獲得し首位にたったのはテキサスを地盤にするHEBのセントラルマーケット。2位は90点となったニューヨークのウェグマンズ、3位は89点となったオハイオ州クリーブランドを中心に展開するヘイネンズ(Heinen's)だ。

そしてゲルソンズは日本でもよく知られているトレーダージョーズやマサチューセッツ州にあるマーケットバスケットと同位となる4位(87点)に入っている。

ゲルソンズの項目別の評価では高級スーパーマーケットということもあり「価格競争力」が1と、上位スーパーの中では際立って悪い評価を受けている他、「オーガニック食品の価格競争力」も2で悪い。「健康的なオプションの品揃え」と「エスニックフードなど海外品の多さ」は4。

しかしそれ以外の「クリンリネス」「プリペアドフードの新鮮さ」「接客対応」「レジスピード」「青果の品質」「青果種類の多さ」「精肉の品質」「地産品の品揃え」の8項目は最高の5となっている(「PB品質」は評価の対象外)。

つまり商品価格をそれほど気にしない富裕層に向けては最高の食品スーパーであるといえるのだ。

ゲルソンズにはそれを象徴しているユニークなサービスがある。11店舗で行っているシップン・ショップ(Sip ‘n’ Shop)だ。ワインバーや寿司バーがある店舗でお客はお酒を飲みながらゆっくりバーでくつろぐ一方、代わりにスタッフが手数料なく買い物を代行するのだ。

 PPIHはドン・キホーテを中心に日本ではユニーや長崎屋などのスーパーを傘下に置く。海外事業はハワイ州を中心にマルカイなど米国に38店舗を展開しているほか、東南アジアでもディスカウント店や商業施設を運営している。

 南カリフォルニアではネット通販最大手のアマゾンが昨年9月、ロサンゼルス郊外に同社が開発した食品スーパー「アマゾン・フレッシュ(Amazon Fresh)」をオープン。アマゾン・フレッシュは現在までにロサンゼルス郊外で6店舗を出店しておりさらに4ヶ所の出店が判明している。

 アメリカの食品スーパーがネットスーパー展開に加えストアアプリなどIT武装に投資行う必要がありデジタル・トランスフォーメーションが急務となっている。流通ITでは5年~10年遅れている日本の小売企業が、アメリカの高級スーパーマーケットの舵取りが注目される。

トップ画像:ゲルソンズ・マンハッタンビーチ店。アップスケールの食品スーパーとなるゲルソンズの従業員数は現在、2,900人近くとなっており、2020年12月期の売上高は8.72億ドル(約9億円)だ。

高級食品スーパーのゲルソンズはアメリカではどのように見られているのだろうか?約7.5万人の読者を対象にアンケート調査した、コンシューマー・レポート誌によるスーパーマーケット総合評価ランキング(96社対象)では日本でもよく知られているトレーダージョーズやマサチューセッツ州にあるマーケットバスケットと同位となる堂々4位だった。

ゲルソンズの項目別の評価では高級スーパーマーケットということもあり「価格競争力」が1と、上位スーパーの中では際立って悪い評価を受けている他、「オーガニック食品の価格競争力」も2で悪い。高級スーパーだけにワインも数百ドル以上する高額ワインも常備されている。

ゲルソンズにはワインバーや寿司バーがある店舗でお客はお酒を飲みながらゆっくりバーでくつろぐ一方、代わりにスタッフが手数料なく買い物を代行するサービス「シップン・ショップ(Sip ‘n’ Shop)」がある。日本の格安店がこういった高級スーパーをどのように運営していくのか?ネットスーパー展開が著しい食品スーパー業界でどう生き残るのだろうか?

⇒こんにちは!アメリカン流通コンサルタントの後藤文俊です。結論から先に断言するとパン・パシフィック・インターナショナル・ホールディングスは非常に高くつく買い物をしたということ。後藤はこれまでアメリカで討ち死にした、多くの日系小売業を見てきました。直近でもオンラインストアの「バイ・コム(Buy.com)」を11年前に買収して進出した楽天が昨年アメリカにあるネット通販事業から撤退した事例があります。雑貨店「無印良品」を運営する良品計画の米子会社「ムジUSA(MUJI U.S.A.)」(2006年に米国事業に進出)が昨年7月、連邦破産法11条を申請しアメリカから撤退しました。2012年に進出したニトリUSA(Nitori USA,Inc.)の「アキホーム(Aki-Home)」は6店舗から現在は2店舗のみ。500店舗展開とぶち上げていたニトリも残念ながら撤収まで45分(井上陽水です)といったところです。日本では「ユニクロ」のファーストリテイリングが上場来高値をつけて話題になっていますが、アメリカではまだ利益がでていないでしょう。

⇒アメリカに進出する企業はどこも調子がいいのは当たり前ですが、同時にどの企業も日本のトップがアメリカにやってきてまで陣頭指揮をとるようなことはしていません。子会社は日本に意思決定でお伺いをしなければならず、その場で即断即決できないから変化に遅れるのです。しかもアメリカと日本の流通業界には大きなタイムラグがあります。移動手段で喩えれば馬車と自動車ぐらいの違いがあります。馬車しか知らない人たちに自動車を作りたいと訴えても「何を言っているんだ?」ぐらいの反応でしょう。ところで後藤はグループで数兆円となる小売チェーンのトップも指導してきました。日本で名経営者と言われている人でもアメリカの流通最先端の事情については無知です。これではアメリカに進出後、日本から(さらに現地のことを知らない)部下を派遣するわけですから勝てるわけがありません。ゲルソンズに限って言えば、顧客は富裕層で高い年齢層。で、多くの顧客はアマゾン・プライム会員でしょう。不可逆的になっているネットスーパーでアマゾンと戦わなければなりません。

⇒アマゾンはアマゾン・フレッシュのリアル店舗展開を急いでいます。ウォルマートと同様、いずれ店舗に併設するMFCにも本格的に着手するでしょう。アマゾンはロボット配達も視野に入れています。食品スーパーは歴史的に利益率は薄く、ゲルソンズは売り場にワインバーなどをもち逆に高コストです。PPIHの代表取締役社長でCEOである吉田直樹さんのところにはゲルソンズCEOのロブ・マクドゥーガル氏から「ヘイ、ナオキ、お金を送ってくれ」とのお金の催促が次々にくるはずです。理由は無論、IT武装やネットスーパーへの投資のためです。アメリカではすでに日本のように店に集客して売上を上げるような展開ができません。カーブサイド・ピックアップや宅配の利用で売り場離れが起こっています。果たしてこういった現地の最新事情を日本在住の経営者がどこまで理解しているのか?ましてや日本のディスカウンターがワインバーなどをもつ高級スーパーをどこまで口出しできるのかは本当にわかりません。PPIHにとって巨大な金食い虫を生んでしまったということです。

 アメリカに進出する日本の企業には本当に頑張ってもらいたいのですけど...これまで多くの(情報不足による)玉砕を目撃してきたので残念ながら冷ややかになりますね。

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