■家電量販店のフライズ・エレクトロニクスは24日、恒久的に事業を停止することをホームページにアップした。
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突然の営業停止は消費者の購買行動の変化に加え、コロナ禍により店舗売上が激減していることが要因。
今年で創業36年となるフライズ・エレクトロニクスは9州に31店舗を展開しており、今回の発表により全店舗がこのまま閉鎖となる。
フライズは一昨年の12月にジョージア州ダレース店を閉鎖し、昨年1月初めにはパロアルト店を閉店。
3月にはロサンゼルス郊外にあるアナハイム店、11月もサンフランシスコ・ベイエリアにあるキャンベル店を閉鎖していた。
家電量販店としては極めて広い店舗面積を誇るフライズ・エレクトロニクスが1年ちょっとで4店舗を閉鎖し、フライズの将来性が危ぶまれていた。
ツイッターやフェイスブックなどのSNSでは買い物客が撮影した、空っぽになった商品棚の画像がシェアされており、倒産が近いのではと危惧されていたのだ。
フライズの事業精算により5万平方フィート(約1,400坪)から最大で18万平方フィート(約5,000坪)の店舗が空き家となる。
フライズエレクトロニクスはジョン、ランディ、デビットのフライ3兄弟が1985年5月、当時パーソナルコンピューターのセールスをしていたキャサリン・コルダー氏とともに北カリフォルニアのサニーベール地区に1号店をオープンしたのが始まり。
創業者兄弟の父親が1972年までサンフランシスコでスーパーマーケット・チェーン「フライズ・スーパーマーケット」を経営していたこともあり(現在はクローガー傘下となりフライズ・フード&ドラッグの店名)、フライズ・エレクトロニクスもスーパーマーケットの商慣習を応用したユニークな特徴を持っていた。
特徴的なのはメーカーやベンダーに棚貸し(エンドリース)を行い、この賃料から新聞に週5日も広告を掲載していた点だ。
フライズ・エレクトロニクスはパソコンや家電、ソフトウェア、ホビー商品、食品、雑誌(一部にアダルト誌も)まで扱い「ポテトチップスからコンピューターチップス」の品揃えを強みにしていた。
特にコンピューター上級者をターゲットにしていたことで、パソコン周辺機器やアクセサリー、パーツ類の品揃えが他社を圧倒していたのだ。
広くて深い品揃えにより来店客数も少なくなかった。したがってお客の目に留まりやすいエンド棚を無名ブランドの商品を扱うベンダーにリースしやすかったのだ。
3,000坪を超える売り場では数百ヶ所にも棚貸しができたため、ほぼ毎日広告を出せる賃料を稼げていた。毎日の広告に無名ブランドの激安商品を掲載できたことで、客数が増えるという循環にもなっていた。
ロスリーダーとしてコーラから一部のナショナルブランドの家電品を広告掲載し、一方で高機能・高性能の無名ブランド品(高粗利商品)も多数扱うことで利ざやを稼いでいた。
フライズ・エレクトロニクスの際立った特徴として店舗ごとに一つのテーマで内装が統一されているところがある。
ロサンゼルス郊外にあるウッドランドヒルズ店の「不思議の国のアリス」や「1950年代サイエンス・フィクション(宇宙人襲来)」のバーバンク店、3月に閉鎖された「NASAとスペースシャトル」のアナハイム店などがあり、店内のオブジェには隠し監視カメラを仕掛けて盗難防止にも役立てていた。
2004年にオープンした「アトランティス」テーマのサンマルコス店からテーマ店を止め標準した店舗に統一したのだ。サンマルコス店では建築費だけでなく、巨大な水槽や珍しい魚などのコストが莫大で大きな負担になったためと言われている。
なおフライズ・エレクトロニクスでは2006年の不動産バブル以降、新規出店を凍結していた。
圧倒的な品揃えと安さでお客のプライドをも呑み込んでいたフライズ・エレクトロニクスもアマゾン・エフェクトで弱体化され、コロナ禍でとどめを刺された形となった。
店の広さが足かせとなり、オムニチャネル化などデジタル・トランスフォーメーション(DX)にすぐに動けなかったことが災いしたのだ。
トップ画像:ロサンゼルス近郊バーバンク地区にある「1950年代サイエンス・フィクション(宇宙人襲来)」をテーマにしたフライズ・エレクトロニクス。フライズの崩壊は広い店舗が縛りとなりDXに俊敏に動けなかっただけでなく、カスタマーサティスファクション(CS)の向上を怠っていたことが要因だ。
⇒こんにちは!アメリカン流通コンサルタントの後藤文俊です。フライズ・エレクトロニクスは店舗の広さ、つまり品揃えの広さや深さが武器になり、時代とともにそれが弱点になった失敗事例です。一言で言えば変化対応ができなかったということ。最大5,000坪にもなる売り場が、フットワークの軽さを台無しにしたのかもしれません。そしてもう一つはフライズが極めて強かった時代から、カスタマーケアやカスタマーエクスペリエンスを全く気にかけていなかったということ失敗要因として断言できます。フライズのカスタマーサービスはネットで炎上したり、裁判になるほど悪評が定着していました。しかし彼らは顧客のプライドを飲み込む「深い品揃えと安さ」で全く気にしていなかったのです。これは大きな教訓を教えてくれます。シアーズの崩壊の時と同じ様に、斬新なアイディア商法やマーケティングもカスタマーファーストを常に向上させなければ優位性を失っていくということ。これは新興のITやサブスク企業に言えますね。スタートアップも成長フェーズに応じてCSを研磨していく必要があります。
例えばアメリカ視察でも自分らと同じ業種・業態・業界を見ていてもダメなんですね。消費者の変化に合わせるには家電店も食品スーパーを研究すべきということ。顧客ファーストの米国ではフライズの陥没は必然だったのですね。
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