アパレルとコスメは、一見まったく別の商材ながら、大きな共通点があります。それは「自身をかわいく・きれいに見せるために欠かせないもの」であること。実際、アパレル企業がコスメブランドを立ち上げてライフスタイル全体を提案したり、コスメメーカーがアパレルショップに卸したりと、ビジネスとしても関係性の深い、いわば「姉妹業界」であると言えるでしょう。
そこで今回は、アパレル・ファッション業界専門の人材紹介サービスであるクリーデンスから見た「コスメ・ビューティー」の転職について、クリーデンススタッフが座談会を行いました。実際にアパレルからコスメ企業へ転職した方の事例などもご紹介していますので、ぜひご覧ください!
編:みなさんこんにちは。今回のテーマは「クリーデンスでコスメ求人が増えているワケ?!」です。まずは簡単にみなさんの自己紹介をお願いいたします。
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藤本:営業の藤本です。アパレル・ファッション企業はもちろんのこと、直近ではコスメ系の企業も多く担当しており、それぞれの業界の特徴やニーズを汲み取った上でのご提案を得意としています。
佐々木:営業アシスタントマネージャーの佐々木です。コスメ・ビューティー領域の求人戦略を担当しています。
須藤:キャリアアドバイザーの須藤です。ハンドバッグブランドの店長・VMD・人材育成経験を持ち、現在はキャリアアドバイザーとして店長職、営業、EC運営、デザイナーなど幅広く転職サポートさせていただいています。
角田:キャリアアドバイザーの角田です。前職ではオーダーメイドジュエリーを中心に扱う企業で現場からマネジメント、採用までを経験し、現在は販売や営業、デザイナーや生産管理まで幅広くご支援しています。コスメ経験のある求職者さまの転職実績もございます。
アパレル/コスメという商材の境界線が薄れてきている
編:さっそくですが、アパレル・ファッション業界専門のクリーデンスから見て、コスメ・ビューティーをどのように捉えていますか?
佐々木:大きく2点の傾向があります。
ひとつは、アパレル・ファッション企業における商材の多角化です。
近年見られているアパレルショップのライフスタイル提案、つまり取り扱う商材が雑貨やインテリア、コスメなどまで広がることで、クリーデンスでもコスメ・ビューティーを取り扱う求人が増えてきています。以前はコスメ求人はコスメ経験者のみ、という傾向が強かったですが、近年は接客力やVMDなどの「売る力」を強みに、商材を超えて転職成功させる方が増えてきています。
編:確かに洋服「だけ」を売るお店を見つける方が難しいくらいになっていますよね。
クリーデンスでも、洋服や服飾雑貨などのアパレル以外の求人が増えているのですか?
佐々木:そうなんです。「クリーデンスってアパレル専門じゃないんですか?」と聞かれることがあるのですが、「モノ」をカテゴライズして売るという価値観から、「ライフスタイル」をカテゴライズしてご提案するという価値観に変わってきていますよね。商品カテゴリーの境界線が薄れてきていることから、“ファッション”を拡大解釈し、コスメやビューティー、インテリア、デザイン家電などのを扱う求人が増えているんです。
編:そうだったんですね。ありがとうございます!脱線しましたが、ではもう一点は?
佐々木:コスメ・ビューティー系の商材は、アパレルと比べて景気の波に左右されにくいと言われています。コロナ禍において、インバウンド売上減少で打撃を受けた企業が多いのは事実ですが、その一方で、「おうち美容」などによるスキンケア需要が高まり、売上を伸ばしている企業・ブランドが多くあります。
ECからのロイヤルカスタマー化…おうち美容ニーズ…今、コスメに勢いがある理由
藤本:私もクリーデンスにおいて比較的多くのコスメ企業を担当していますが、アパレル企業とはまた違う、コスメならではの勢いを感じます。
編:具体的にはどのような勢いを感じていますか?
藤本:大きく3点あります。一つ目は、コスメは消費期限が長く、在庫リスクが小さい点です。コロナ禍で店舗売上が厳しいのはアパレルもコスメも同様ですが、アパレルはトレンドサイクルが早く、シーズン内で売り切れなかった場合、在庫が残ってしまうリスクがあります。対してコスメは消費期限が長いため、売れ残りのリスクが少ないんです。
編:そういう視点でアパレルとコスメを比較したことがなかったです。確かにそうですね!二つ目はいかがですか?
藤本:EC売上を強化しやすいことです。コスメは一度商品を買って「肌に合うな」「気に入ったな」となれば、ECサイトで気軽に買うことができます。そのためロイヤルカスタマー化しやすく、ECを中心に安定した売上を生み出すことができます。
編:言われてみると私もずっと使っているコスメはECサイトで買っています。メルマガが届くので新商品もついチェックしてしまってますね。
藤本:そうなんですよ!最後は、コロナ禍に伴う消費者の変化です。マスク着用が日常化することで肌荒れに悩む方が増え、スキンケア需要が高まったり、リップ需要が減少する一方で、目元のメイクアップアイテム需要が高まったりと、売れ筋に変化が起こっています。そこを狙った販売戦略を立てることで、売上を伸ばすことができています。
編:そういった傾向はコスメ全体で起こっているのでしょうか?
藤本:たとえばデパートコスメは、直接お客さまにスキンケアやメイクを施す「タッチアップ」ができなくなっているため、売上影響が大きいと聞きます。一方、ドラッグストアやバラエティショップなどを販路とする、安価なコスメを扱う企業は勢いがありますね。
編:なるほど。コロナ禍でドラッグストアに足を運ぶ人が増加していることも影響していそうですね。
藤本:はい。ECもドラッグストアもそうですが、「気に入った商品を気軽に買える」ことが、今の時代においては売上を左右しているのではないかと感じています。
商材の特徴はあれど、「お客さまを輝かせたい」という根底は同じ
編:商材を超えて転職成功させる方が増えてきている、というお話がありました。具体的な事例を教えてもらえますか?
角田:年齢を重ねても扱える商材で働きたい!と転職された方をご紹介します。百貨店でレディースブランドの販売をされていた方が、ご自身が年齢を重ねるごとに、ブランドとのギャップを感じるようになり、転職のご相談をいただきました。当初はアパレルブランドの転職を模索していましたが、「幅広いお客さまがいらっしゃる」という観点からコスメにも興味を持たれ、最終的に、コスメブランドのBA(ビューティーアドバイザー)に転職されました。
編:コスメ商品も、どんな人に使ってもらいたいか?というターゲット年齢はあると思いますが、アパレルよりもそのターゲット幅が広いということなんでしょうか?
角田:仰る通り、ブランドが定めるターゲットはある程度あると思いますが、実購買層を見ると、アパレルと比べて幅広い商品が多いと思います。コスメは単に色やテイストが合うかどうかだけでなく、「肌に合うかどうか」が重要です。「シミ・シワをなくしたい」など、年齢ならではのお悩みもありますが、「肌の乾燥」「肌荒れ」「自分に合う色のシャドウを見つけたい」「顔を明るく見せたい」などのお悩み・目的は、年代に左右されません。
編:確かにそうですね。コスメだけでなくビューティー用品も、10代から80代までの方が同じ美容アイテムで「おうち美容」を楽しんでいたりしますもんね。
角田:はい。なので、「長く活躍したい」という理由でアパレルからコスメへと転職される方は、職種を問わず一定いらっしゃると思います。他にも、コスメをはじめとするアンチエイジング商品を扱うショップの本社VMDに転職された方がいらっしゃいました。
編:その方はアパレルのVMD経験者だったのですか?
角田:そうです。本社VMDの求人は数が多くないため、異業界も含めて検討していた中で、世代・客層の幅に対する期待値と可能性を感じてコスメ・アンチエイジングショップのVMDとして転職されました。また同じく本社VMDで、ご自身が落ち込んだときに気分を明るくしてくれたのがコスメだった。自分磨きによって多くの方に明るくなっていただきたい、とコスメ企業に転職された方もいらっしゃいました。
編:アパレルからコスメに転職してもやりがいを持って働けるということは、何らか共通点があるのだと思います。それは何でしょうか?
須藤:この仕事をしている方の多くは、「キレイになって喜ぶお客さまの顔が見たい」という思いを少なからずお持ちだと思います。そこは量販店で家電を売る、スーパーで食材を売る、保険を売る…などとはまったく異なる、アパレル・コスメならではの共通点であり、楽しさだと思います。
藤本:実際、アパレルとコスメをそこまで区別せずに転職を考えている方がここ数年で増えた印象があります。まったく異なる未知のものにチャレンジする!というよりは、大きなくくりとして「好きなものに囲まれて働きたい」と考える方が多いのではないかと思います。
角田:情報収集するツールも近しいですよね。ファッション誌やInstagramなどのSNSはもちろん、若い世代の方はYoutubeも。若い人気Youtuberが、コスメアイテムやメイク術の紹介をしつつ、それに合わせたコーディネート提案をしている配信を見かけるたび、改めて「ファッションとコスメってセットなんだな!」と感じます。
須藤:一方、同じオシャレになるためのアイテムでも、アパレルは「身に付ける」、コスメは「肌に直接塗布する」とその使い道は大きく異なるため、コスメの方がよりセンシティブであることは間違いありません。お客さまの肌のお悩みを解決して差し上げたり、メイクのご要望が叶ったりしたときの手ごたえは、コスメならではのものだと思います。
角田:少しネガティブな話にもなってしまうのですが…以前、コスメブランドの販売をしていた方のご経験で、商品が肌に合わずお客さまのお怒りを買ってしまった、という話を伺ったことがあります。その方はコスメからアパレルに転職されたのですが、コスメのほうがより身体に与える影響が大きいぶん、お客さまへの責任をより強く感じた、と仰っていました。
編:大変なご経験を…それだけ責任感を伴う仕事でもあるということですね。
角田:そうですね。ただ僕も前職でブライダルジュエリーを扱っていたので少し分かるのですが、責任が伴う仕事は、それだけやりがいも大きいということです。お客さまのセンシティブなお悩みを解決して差し上げたい、もっと良い肌を手に入れていただきたい、という思いが仕事の楽しさに繋がっている気がします。
須藤:「売れるものを扱う」というモチベーションもある気がします。私が前職で服飾雑貨の販売員をしていたとき、同社のコスメ部門のほうが業績好調で、スタッフのモチベーションも高く、羨ましかったのを覚えています。
編:商材に関わらず、売れる楽しさは小売業の醍醐味ですもんね。
須藤:そうなんです!販売職はもちろんのこと、どの職種の方も、関わった商品が売れることが一番嬉しいと思うので。
デジタルマーケティングはコスメ業界が一歩リード?!
佐々木:売れる楽しさ…というキーワードで、別の職種の話になるのですが良いですか?
編:はい、お願いします!
佐々木:序盤で藤本も話していましたが、コスメはECサイトでロイヤルカスタマーを醸成しやすいため、アパレルと比べてECシステムやデジタルマーケティング、CRMの仕組み作りに力を入れている企業が多くあります。
編:実際に採用も強化しているということですか?
佐々木:はい、そうです。現段階で言えばアパレル以上に「攻め」の姿勢なので、デジタル・マーケティング領域で手腕を発揮したい方は、コスメ企業の求人を見てみると良いかもしれません。
編:実際にお預かりする求人にも、アパレルとコスメで違いはあるのでしょうか?
佐々木:細かく言えば企業ごとに異なりますが、コスメがデジタルマーケティングやCRMなどの経験者を求める求人が多いのに対し、アパレルはまだECサイト運用など、どちらかというと「体制を構築する」ための募集が多い傾向にあります。もちろん、これからアパレルもデジタルマーケティングに力を入れる企業が増えてくると思います。
藤本:PRなどの仕事となると、人脈込みの強みが求められるため、異なる商材の行き来は難しいかもしれませんが、デジタルマーケティングやCRMなどは専門性を発揮しやすい職種なので、商材や業界を超えた転職も十分可能です。
須藤:今ちょうどご支援させていただいている方も、国内ファッションブランドのデジタルマーケティングを経験し、ビューティー器具を扱う企業で今選考中です。企業からの評価も高く、商材が異なっても汎用的なスキルを活かせる職種だと思います。
編:確かにそうですね。特にウェブやマーケティング系の職種の方は、業種や取り扱う商材よりも、「この会社でどんなことができるか」「自身の強みが発揮できるか」という点を重視する方が多いように思います。
藤本:そうなんです。ただ、誤解を恐れずに言うと、コスメ企業はやはりコスメ経験者を求めている、というのがホンネです。たとえばECであればSKU数がまったく違うなど、コスメならではの特徴を分かっている人のほうが即戦力として期待できるからです。
編:そこはアパレルも同様ですよね。では、コスメ未経験の方がチャレンジするためにはどういうことが必要でしょうか?
藤本:コスメ経験者ももちろんですが、経験がない方は特に、業界研究・企業研究をしっかり行うことです。応募する企業がどんなコンセプトでどんな商品を扱っており、どれだけの売上があるのか。店舗やECでどんな販売の仕方をしているのか。どんなプロモーションを行っているのか。様々な角度で情報収集するようにしてください。
アパレル・コスメの共通点や違い、特徴を知ることで、キャリアの可能性も広がる
編:コロナ禍の影響はまだまだ大きく、思うような求人と出会えない…競争率が高くてなかなか面接通過しない…とお悩みの方も多いと思います。また、純粋にこれからのキャリアをどうしていこうかと考えていらっしゃる方もいらっしゃるでしょう。今回のお話が、そんな方々にとって何かのきっかけになるかもしれない…という願いを込めて、最後にメッセージをお願いします。
角田:誰もが当たり前に年を取っていく中で、人に見られることがなくなることはありません。そのとき、どんなにいい服を着て素敵なものを身に付けていても、ご自身の魅力がないと着こなせません。人そのものに直接的に影響を与えられるのは、コスメの大きな魅力。ニーズは年齢や性別を問わず、人の数だけあります。そこに関われることは、大きなモチベーションになるのではないかと思います。
須藤:「この人をかわいくしてあげたい」「この人の魅力を輝かせてあげたい」という思いは、人の内面にまで影響を与える素敵な仕事です。そこにやりがいを持って仕事を続けていきたい方は、ファッションもコスメもどちらも面白さを感じられると思います。コロナ禍で思うように転職活動が進んでいない、という方もいらっしゃると思いますが、ぜひ可能性を広げて考えてみてはいかがでしょうか。
佐々木:EC売上拡大に加え、メンズコスメの領域も右肩上がりに伸びており、コスメは成長ポテンシャルがある業界だと感じています。誰もが身近な存在であるコスメ。個人的に好きな方もきっと多いと思いますので、「ずっとアパレルにいたけど、コスメってどんな業界なんだろう?」と少しでも興味がわいたら、ぜひ色々と調べてみることをおすすめいたします。今まで知らなかった色んな発見があり、今後のキャリアの可能性も広がるのではないでしょうか。
藤本:知人からの受け売りなのですが、「希望は適性のうちのひとつである。」という言葉があります。自分の経験や知識をふまえた「これがいい!」「これが合うと思う!」という思いは、あくまで可能性のひとつにすぎず、実は自分の知らない適性がたくさんあるんだよ、という意味です。クリーデンスには、アパレルをはじめ、雑貨やコスメ、インテリアなど広く「ファッション」「ライフスタイル」というくくりでさまざまな企業の求人があり、お一人では見つけられない「知らなかった適性」が必ずあると思います。「実はあなたの強みや思いは、この仕事でも活かされるのでは?」という新たな適性を見つけるお手伝いができればと思います。これからのことを明確に決められていない方ほど、ぜひご相談いただきたいです!
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