医療用医薬品「ヒルドイド」を製造販売する製薬会社のマルホが1月21日付で、健栄製薬が販売する乾燥肌治療薬「ヒルマイルド」の販売差し止めを求めて大阪地方裁判所に仮処分申請を行った。これに対して健栄製薬は25日、マルホによる仮処分命令申し立てが「あたかもヒルマイルドという商標の使用が違法であるかのような誤った印象を持たせる可能性がある」とし、法律に則って闘う覚悟だと表明した。
マルホが1954年から販売しているヒルドイドは、血行促進や皮膚保湿効果のあるヘパリン類似物質を有効成分として配合した医療用医薬品。アトピー性皮膚炎などの治療薬として使用されており、購入には医師の診察と処方箋が必要だ。
ADVERTISING
ヒルドイドについては、血行促進や皮膚保湿の効果から美容目的で購入する人が増加し、本来の治療に必要な人に処方できなくなるといった医療現場の圧迫が近年問題となっていた。こうした背景から、ドラッグストアなどで気軽に購入できる一般用医薬品およびOTC医薬品としてヘパリン類似物質を配合した商品が、ここ数年で様々な企業からも展開されるようになった。マルホからもコーセーとの共同開発で昨年9月にヘパリン類似物質を含んだ高保湿スキンケアライン「カルテ ヒルドイド」を一般用医薬品として発売したが、東京都が「消費者が医療用医薬品のヒルドイドと誤認する可能性がある」と指摘。現在は「カルテ HD」にライン名を変更し、製品パッケージの表示も切り替えて販売している。
ヘパリン類似物質配合の一般用医薬品の例
・カルテHD(コーセーマルホファーマ)
・ヒルマイルド (健栄製薬)
・ヒルメナイド(matsukiyo※「マツモトキヨシ」オリジナルブランド)
・アドライズ 保湿シリーズ(大正製薬)
・ヘパコートクリーム(ドクターシーラボ)
など
健栄製薬のヒルマイルドは2020年6月から販売し、9月からKing & Princeの永瀬廉を起用したテレビCMの全国放映を始めたことなどから一気に知名度をあげた。乾燥肌向けの商品を気軽に購入できるようになったことに対する肯定的な声のほか、一部では商品名やピンク色を基調としたデザインがヒルドイドと似ており、医療用医薬品と誤認して購入する可能性を指摘する声も上がっていた。
マルホ側は「ヒルマイルドの販売等が、ヒルドイドに係る当社の商標権の侵害及び不正競争防止法2条1項1号に定める不正競争行為に該当する」とし、申立てを行ったという。商標権侵害の具体的な焦点については「係争中につき回答不可」としている。
この訴えに対し健栄製薬は、「『ヒルマイルド』は特許庁に正式な手続きで商標登録を行った上で販売しているため商標権を侵害しておらず、申立ては不当である」という立場を取っている。
ADVERTISING
RELATED ARTICLE
関連記事
READ ALSO
あわせて読みたい
RANKING TOP 10
アクセスランキング
銀行やメディアとのもたれ合いが元凶? 鹿児島「山形屋」再生計画が苦境