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yutoriが作り出した私たちの場所――SNSでファッションをビジネスにするには?-vol.1-

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今年、ZOZOグループにジョインした株式会社yutori。そのミッションは「臆病な秀才の最初のきっかけを創る」というもので、ストリートをオンラインでプロデュースしている。統括する社長は若干27歳の青年、片石貴展氏だ。古着に特化したInstagramメディア「古着女子」を皮切りに、現在までに「古着男子」というInstagramメディアのほか、数種のブランド等、ビジネスを拡大し続けてきた。

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片石氏に話を聞くと、「SNSによるファッションの民主化」、「リッチな体験としてのオフライン」、「弱さを出せる会社」、「ロマンとそろばんの両立」など、興味深く現代を読み解く視座と経営論を語ってくれた。yutoriとは何か?片石貴展とはどんな思想の持ち主なのか?今回は彼へのインタビューを通して、その真髄に迫っていきたい。

ーーまず最初に、yutoriを起業するきっかけともなる「古着女子」の戦略を教えてください。

大手のアパレルの会社さんがやっていないことをやるっていうのが大前提としてあって、かつ小資本で僕自身ができることですね。起業したのが2年半前なんですが、起業する前に「古着女子」っていうインスタのメディアを立ち上げていました。当時は会社に在籍しながらそのアカウントをやっていて、本当お金なかったんですよ。なので、実際の開設自体もすごく少ない資金で作りました。ただ、撮影するスキルもないし、インフルエンサーとのコネクションもなかったんです。

ーーそもそも、なぜ古着だったのでしょう?

古着がもともと好きだったので、このコミュニティに対して何かを作ったらどうかと思ったんですが、インスタを見ててもそのコミュニティを代表するサービスが無かったんですね。そこで何かを作りたいなと思った時に、リポストっていう形式を思いつきました。これはある意味昔のストリートスナップみたいな感じで、みんながあげてくれた写真をキュレーションして、それをうちのアカウントに掲載して、アカウントの中でリコメンド文、そのコーデの何がいいのかっていうのを言語化してあげることにしました。そうすれば掲載された子のアカウントが育っていけば、僕たちのフォロワーも伸びるみたいな構造です。

ーー「古着女子」からどのようにyutoriの事業に拡大していったのでしょうか?

最初の方は、当時古着のアカウントやメディアがなかったので、僕らのフォロワー数が500人とか1000人という少ない時にも、5万人とか10万人とかフォロワー数の多いインフルエンサーさんが協力してくれて、最初はそこからユーザーさんが流れてきました。立ち上げた初日に500人ほどフォロワーが伸びて、1ヶ月で2〜3万人くらい伸びたんですよね。実際やっていて、これはいけるかなと思いました。そんなに難しいことやっていないけど、異常なほど成果が出てるっていう感覚を結構大事にしてて、それにフィットしてったんで、メディアを育てていって、そのあとにブランドを展開していったって感じですね。

ーーメディアを育てて、そこからブランドを展開させていったんですね。

ブランドも最初は古着から始めて、古着のセレクトをやって徐々にオリジナルに増やしていって、今はオリジナルが8割くらいなので、仕入れを含めると新品が9割5分くらいなんですけど。最初はオリジナルを作ると在庫リスクがあるので、古着で身の回りの集められる範囲からどんどん規模を拡大していって、一定の知見とノウハウが溜まってきたタイミングでオリジナルのリスクをとった、というのがざっくりとした流れですね。

――小資本でもインフルエンサーさんなどにリポストしてもらうことで、拡大していくっていうところは当初から狙っていたことなのでしょうか?

そうですね。それが一種のコミュニティになるなっていう感じがありました。「#古着女子と繋がりたい」っていうハッシュタグは、繋がりたい系のハッシュタグの中でもトップクラスで多くて、コミュニティとして成立しうる伏線みたいなものはあったけど、誰もやっていなかったっていう感じはありますね。

ーーSNSの情報は偶然の出会いみたいなものが多い気がしますが、偶然見つけてきた人に対して意識していることはありますか。

商品にしろインスタのアカウントのコンテンツの投稿にしろ、共通している考えは「キャッチーにすること」なんですよね。例えばTシャツでも文字をでかくプリントしてそれを見た瞬間にまずインパクトに残る、目に焼きつくんです。プラス、見た人にとって自分ごとと思ってもらえるようにメッセージ性を尖らせていくっていう感覚ですね。

ーーキャッチーなメッセージはInstagramとの親和性が高そうですね。

なので、もちろん服を作っているんですけど、ある意味服のボディの上で大喜利をしているというか。メッセージTとかだったら、デザインよりキャッチコピーや広告的な考えを重視していると思います。街頭広告を作るときに、ルミネの広告とかもそうですけどキャッチコピーがあるじゃないですか。同じように服もパンチライン1つで全然変わると思うんです。あるのとないのとによっても、メッセージの内容によっても。そういう広告的な思想で半分はやってますね。

ーー過去のインタビューで古着好きの女子はユーザー同士の繋がりや他者からの承認を求めてると言っていましたが、そこについてyutoriはどのようなアプローチされてますか?

メディアの構造としてリポストというのをとったっていうのが大きいですが、やっぱり個性的な格好をしているけど周りに同じような人がいなくて、自分がマイノリティだと感じるとやっぱり他の場所にコミュニティを作ると思うんですよね。10年前にストリートスナップがあれだけ盛り上がって、原宿のローソン前とかでよくスナップされたりとか、原宿系のクラブのイベントが盛り上がってたのも、やっぱり今いる環境で満足できないとか、今いる環境で承認されないから不安で自分に自身が持てないからこそ、「承認されたい」という普遍的な欲求がある気がしています。

ーー以前は、オフラインで少数派が集まれる機会が多かった気がします。

でも、それをこのご時世リアルな場所でコミュニティを作るっていうのもちょっと違うから、リポストっていう形式と古着女子っていうある種のカテゴリ名を背負ってインスタを運営することによって、オンライン上に当時の原宿ローソンの前みたいなコミュニティを再現したかった。最初からそこまで狙ってたわけじゃないですけど、結果的にそのような形になっていったというのは大きいです。

ーー本格的にアパレル事業を始めるに至った経緯というのは、もともと構想としてあったのか、それともやっているうちに出てきたのでしょうか?

ありましたね。そもそもやっぱり古着はめっちゃ好きなんで、たぶん自分の人生の中で何かが違っていれば、もしかしたら小さい古着屋の店長になっていたかもしれないです。服を売りたいとか服でビジネスをしたいっていうのはずっとあって、メディア作ったらそのメディアのいいね数とか保存数でどういう服が人気なのかってわかるじゃないですか。そのほうが確実に、古着でもハードロックの投稿が異様に伸びればハードロックを仕入れば良くない?みたいな感覚でメディアを作って、さらに言えば服を売るために作ったので、アパレルをやるという構想自体は最初からありましたね。

ーー展開しているアパレル事業のそれぞれの特徴を教えていただけますか?

9090s(ナインティナインティ)は90年代のストリートスタイルっていう感じで、ストリートを女の子向けにやった稀有なブランドって感じですかね。SupremeとかStussyにしろFR2にしろ、基本メンズが多い中で、女性に特化したストリートブランドっていうのは9090sが意外と、ここ最近で初めてじゃないかなと思っています。今は男性女性の比率で言うと半々なんですけど、男らしいストリートアイテムを女の子でも直感的に可愛いって言ってもらえるようにポップにしていったって感じですね。

Spoon(スプーン)は、日本のレトロなものとか、レトロカルチャー≒エモカルチャーみたいなものを今の視点でリバイバルさせて服を作っています。古着系の女の子が好きなカルチャーとかライフスタイルを服に落とし込んでいて、今後の展開としても、今仮のコピーが「丁寧すぎない暮らし」っていうのがあるんですけど、服からもうちょっとライフスタイル寄りにブランドを展開していきたいなと思っています。そういった子たちの暮らし全体に入っていくような、決してお金があるような子たちじゃないんですけど、もうちょっとライフスタイルに投資する流れが今来ていると思うので、そこまでやりたいなと思っています。

centimeter(センチメーター)は、9090sの兄貴的な立ち位置で始めたんですけど、今ちょっとどうしようかなって感じなので、なんかこの記事を見ている人の中でいいコンセプトとかアドバイスできる人がいたら教えて欲しいなと思います。

ーーコラボ企画はどういう狙いがありましたか?

一般的な狙いと同じようなものだと思いますが、ユーザーの相互送客っていうかお互いに相性いいユーザーさんに知ってもらう機会を作って、楽しんでいただける人をファンにして増やしたいです。あと、やっぱり1個1個が限定になるので、チェックしておいたらいいことあるよ、逆にチェックしとかないと限定ものとかなくなっちゃうよみたいな、そのブランドを継続して見ていただくための仕掛けみたいなイメージですね。

ーーー

中編では、SNSでのファッションビジネスの思想やオフラインとオンラインの場の使い分けなどをお聞きしました!お楽しみに!

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