■コロナ禍により昨年は多くのチェーンストアが閉鎖となった。アパレルのチェーンストアが展開するショッピングセンターばかりでなく大都市の商業地区でも消費者が巣ごもりしていることで空き店舗が目立って増えているのだ。
公共政策シンク・タンクの「センター・フォー・アーバン・フューチャー(Center for Urban Future)」の最近の報告によるとニューヨーク市は昨年、ドラッグストアのデュアイン・リードやサプリ販売チェーンのGNC、ワイヤレスサービスプロバイダーのメトロPCSなどの店舗が閉鎖や撤退に追い込まれたことでチェーンストアの数は13.3%も減少した。
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これによりニューヨーク市でも特にマンハッタンの主要商業地区で賃貸料が低下傾向となっているのだ。
マンハッタンを含めてニューヨーク市にある17の街区の不動産賃料をモニターしているニューヨーク不動産協会(REBNY:The Real Estate Board of New York)によると2019年のレベルから最大で25%も賃料が下落している。
さらに家主が要求する募集賃料(もしくは希望賃料)と大手チェーン等のお店が実際に契約を交わした賃料では平均で20%の差が生じているという。
とくに酷いのがソーホー地区だ。2020年初めの空室率が19.5%だったソーホー地区では12月末になんと33%まで下落した。ソーホーの募集賃料が1年前に比べて25%も下がってしまったのだ。
ソーホーでは賃料が1平方フィート(約0.028坪もしくは約0.09平方メートル)当たり367ドル(約4万円)となり、ピーク時の2015年春から62%も下落した。
ソーホーといえば海外企業による米国進出店やオンライン・ストートアップのリアル店舗、さらに有名ファッションブティックが立ち並ぶ国内でも有数な商業街でもある。
ニューヨークでも不要不急のサービスがすべて一時的に停止するよう発令されたことで、32ヶ所が恒久的に閉鎖に追い込まれたのだ。
世界的に知られているショッピングエリアのフィフス・アヴェニュー(五番街)でも、パンデミックの影響でチェーンストアが営業停止に追い込まれる状況にあり、空き店舗が目立っている。
高級デパートメントストアのサックスフィフス・アヴェニューや高級ブランドのカルティエ、ヴェルサーチ、ティファニーなどが並ぶ五番街でも49丁目と59丁目の間でも1年で8%も賃料が下落した。
下落したといっても1平方フィート当たり2,618ドル(約27万円)にもなり、コロナ禍では五番街に旗艦店を出店することも以前ほど意味をなさなくなっている。
ニューヨーク不動産協会によると五番街の賃料がピークとなった2018年春から現在までに32%も下落している。
問題はコロナ終息後もニューヨーク・マンハッタンでさえ不動産賃料がすぐに回復しないことだ。
コロナの巣ごもりが習慣化したニューノーマルでは、おめかしをしてまでお店に行って買い物をすることが以前ほど少なくなると見られている。
オンラインでの買い物に慣れてしまって消費者は出歩かない。高い賃料まで払ってマンハッタンに店を構える意味が薄れていく。
国内や海外からの旅行者が増えても、マンハッタンの商業不動産が以前のように回復するまでに数年の時間がかかりそうだ。
トップ画像:五番街と52丁目にあるナイキの旗艦店。道を挟んだところにはカルティエがある。コロナの影響で有名ブランド店が並ぶ49丁目から59丁目の間でも1年で8%も賃料が下落した。
⇒こんにちは!アメリカン流通コンサルタントの後藤文俊です。新型コロナウイルスに関して以前より若干、後藤は悲観的に見ています。つまりパンデミックはまだ当分続くと見ています。ワクチン接種が拡大し夏にかけて感染拡大が収まるようになるとは思いますが、問題はコロナ変異種です。ワクチン接種後もコロナウイルスに感染する事例がでると思いますし、再感染事例も出てきます。以前ほど多くはないとは願いたいところですが、それでも秋から冬にかけては再び警戒体制となるでしょう。つまりソーシャルディスタンシングやマスク着用の義務はまだまだ残ることになります。それではどうしても必要というわけでもなく、急いでする必要もない不要不急のサービスを提供するビジネスは回復できません。海外の旅行者がアメリカを訪れることもなく、国内の旅行も戻りません。エントリー記事にあるようにニューヨーク・マンハッタンの小売りチェーンもまだまだ我慢していかなければならないでしょう。オンラインショッピングも残りそうですし。
腐ってもマンハッタン。ただ五番街にダークストアが出てくるようになったら面白いのですけどねぇ...
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