ファッション不毛の地を活性化させる
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アマノジャクの新店が谷中千エリアにオープン
Covid-19をきっかけに、変わるファッション消費。
1980〜90年代、今は大手セレクトショップと呼ばれている店の多くは、繁華街の大通りから一歩外れた辺鄙な場所に出店することが多かった。わざわざ行かなければならない場所。これは当時の尖ったセレクトショップに共通していた意識で、やがて感度の高い人たちが集まるようになり、感度の高い店の出店が増え、そのエリアがメジャーになっていく……そんな流れが確かにあった。
実は5つの大学のキャンパスがある北千住。ファッションのセレクトショップにとってはブルーオーシャンだった!
2018年8月に東京・北千住にオープンしたセレクトショップ「アマノジャク(Amanojak.)」は、そうした流れを汲んでいるように見えて、だいぶ違う。北千住駅の西口を降りて歩くこと10分。何の変哲もない2階建の一軒家を改装したお店の外観は、良くも悪くも普通で、なんら違和感なく住宅街に馴染んでいる。でも、店に一歩足を踏み入れたら、ほとんどの人は立地と品揃えのギャップに腰を抜かすことになるだろう。国内の旬なブランドはもちろん、この店には「MARNI(マルニ)」や「Maison Margiela(メゾン マルジェラ)」などのトップメゾンの服が並んでいるのだ。地方都市にこうした個店は珍しくないが、都内のファッションとは縁遠い街でこういう店はなかった。
同社を創業したのは、廣川輝一さん、小山逸生さん、大津寿成さんの3人。東京の個人経営のセレクトショップでともに働き、その後は別々のアパレルでキャリアを積み、独立にあたって再合流した。不思議なのは、北千住というセレクトショップとは縁遠い街を1号店の場所に選んだことだ。ディレクターの小山さんはこのように説明する。
「3人とも三軒茶屋に住んでいて、生活圏は東京の西側のセントラル。北千住とは縁もゆかりもなかった。表参道や渋谷には同じようなお店がたくさんあるし、街として完結しているから新規参入しても喜んでくれるお客さんが少ないと思った。それで、ブルーオーシャン的な場所を探して、ピンと来たのが北千住。バッティングなしで自由に編集できるし、ビジネスとしての勝機を感じた」。
狙いどおり、北千住のお店は瞬く間に話題となり、順調に売り上げを伸ばしてきた。4、5月の緊急事態宣言中は、実店舗は閉めたものの、ECで15%オフのクーポンを付けたところ、在庫は順調に消化。6月の時点で春夏の在庫がほぼない状態になった。今春夏の前年比の売上高は、店舗とECを合わせて2倍になったという。
都心と郊外のブリッジにあたる谷中〜根津〜千駄木エリア。実は出版関係者も多く住み、新旧が入り混じったユニークなまち。
その勢いのまま、2020年9月に東京・千駄木に2号店を出店。店舗面積は北千住の2倍近い80平方メートル。前出の2ブランドの他、「J.W. ANDERSON(ジェイ ダブリュー アンダーソン)」「PLAN C(プランC)」「Stone Island(ストーンアイランド)」などのインポートブランド、「エイトン(ATON)」「バトナー(BATONER)」「カルマンソロジー(CALMANTHOLOGY)」などのジャパンブランドを扱う。
谷中銀座からほど近い場所で、人通りは北千住よりはるかに多いが、ファッションと縁遠い場所であるのは共通している。出店の経緯は、取り扱いブランドが増えて北千住の店舗が手狭になり、顧客を分散させたいと思ったから。オープン後の商況は順調で、計画通りに売上が分散して、両店とも順調に伸びているという。2020年10月の月次売上高は、コロナ禍にもかかわらず2店舗合計で1500万円を記録している。ファッション不毛の地であることを考えると、驚異的な数字と言える。
「北千住も千駄木も似たような感覚があって、飲食を中心とした古くからあるお店が健在な一方で、かき氷屋とかモダンなレストランとか新しいアイデアのあるお店が増えてきている。でも、その中にファッションはなかった。ファッションは食に準ずるくらい身近なもので、食で新しいものが受け入れられる街なら、ファッションも受け入れられる可能性があると思っている。千駄木でも『この場所でこういうラインナップを見られるのは新鮮だし嬉しい』という反応が多く、ファッションエリアにお店がひとつ増えるよりも、貢献度は遥かに高いと感じている。ファッションの分野では先駆者なのかもしれないが、今後はこういう形が自然になっていくと思う」(小山さん)。
ECがデフォルトの今、「来店客数」はそれほど大切じゃない。1人ひとりのお客さまとのコミュニケーションが大事。
もちろん、両店ともに来店客数は決して多くないという。でもそれは想定内で、ゆっくり時間をかけて接客することで、顧客数を積み上げてきた。「僕らはブランドの本質的な価値をお客様に伝えられる店を目指している。置いておくだけで売れるような単価ではないので、接客は懇切丁寧にしないとダメ。遠方から来てくれるお客さんが多いので、ほったらかしにしてお店にいる時間が5分だけなら二度と来てくれない。もちろん、話しかけてほしくないというお客様もいるけど、以前はヘッドフォンをしていた人が、今では2時間以上も滞在してくれたりする。僕らは服が好きでお店をやっていて、お客様も服が好きでお店に来てくれる。ならば、一緒に服の話をして試着して、ちょっと得したな、詳しくなったな、欲しいものが増えたな、って思ってもらえるようにしたい」(小山さん)。
現状の課題はどこにあるのだろうか?
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「北千住は遠方からわざわざ目指して来てくれる方が多く、地元のお客様が少ないのが課題。千駄木は最初からご近所さん率が高いが、北千住はもう少し地元の人が気軽に入れる雰囲気にしていきたいと思っている。あとは、ECの売上比率を上げること。現状ではECが30%、店舗が70%だが、ECは店舗に比べると認知に時間がかかるので、もう少し全国的な認知度を上げたい。インスタグラムの広告を使って、全国にリーチするようにしていて、実店舗で地域に根ざしつつも、可能性は狭めないようにしたいと思っている」
ほんの数年前まで、家賃の高い東京では、仕入れのみのセレクトショップを成り立たせるのは難しいと言われていた。そんな常識をアマノジャクは軽々と飛び越えて見せた。アマノジャクの今後と、東京の個店のさらなる発展が楽しみでならない。[取材・文/増田海治郎(ファッションジャーナリスト)]
*1/1 元日よりオンラインストア、1/2 初商いより全店舗店頭にて、WINTER SALE開催中!対象商品は全て40%off!!!*さらに、千駄木店では、1月10日まで「SISE(シセ)」のPOP UP STORE開催中。
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Amanojak.千駄木店所在地:東京都文京区千駄木3-31-12 ワコーレ千駄木ビル1階電話番号:03-5834-7879営業時間:11:00~20:00(水曜休)
Amanojak.北千住店住所:東京都足立区千住龍田町8-4時間:12:00~21:00定休日:不定休
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