地方・郊外百貨店が今後も続々と閉店すると考えられるが、一方で継続を模索する動きもある。
当方は、地方百貨店はギフトフロアと食品・銘菓売り場くらいしか需要がないと思っていて、その考えは今も変わらないが、それだけでは集客はままならない。
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オフィステナントを集めると言っても、地方ではそれもなかなか難しいのではないかと思う。
そんなときにこんなツイートを見かけた。
ちょっとご紹介させていただく。
地元百貨店の福田屋が撤退した跡地に市役所と東部百貨店(ワンフロアのみ)が入居しているという。これはなかなか良いアイデアではないかと思う。
父が亡くなってから、なんやかんやで月に何度も町役場に行くが、小さな町でも毎日何人かはどの時間帯でもかならず利用者がいる。
待ち時間が長くなれば、例えば飲み物とか食べ物とかも欲しくなるし、ちょっとした雑貨も欲しくなる。クリップとかメモ帳とか忘れ物をした際、役場でそれが買えたらかなり便利になる。
そう考えると、この役場に何某かの売り場を併設するのは利用者にとっても便利である。
そういえば、母がなくなるまで10年間くらいは大きい病院には行ったことがなかったが、母が入院するようになって地元の大病院に行くようになった。
そのときに驚いたのが(当方が世間知らずなだけであるが)、病院の中にコンビニやカフェが併設されていたことである。
実は小さい頃に少々病気をやってしまって、定期的に大病院に通院していた。その時はせいぜい、キヨスクみたいな売店くらいしかなかったので、病院というのはその程度のものだとずっと思っていた。
それがドトールとかタリーズがあったり、街と同じ規模のコンビニが入っていたりと、その様変わりに驚かされた。
今回の場合は、百貨店と役所がセットになっているわけだが、相当の補完効果があるように思う。
これで思い出したのが、近鉄枚方店跡地にできた枚方Tサイトである。
オープン後しばらくして、実際に見学に行った。
以前にもレポートしているが、売り場面積は狭い。
ハッキリ言って狭い。各フロアにだいたい3~4店くらいしか入れない。閉店した四条河原町のマルイみたいな感じの広さである。
正直なところ、多少の目新しい店を導入したところで、近隣に似たような施設もすぐにできるし、見慣れて陳腐化してしまう。
かつて、2016年に三越伊勢丹の大西洋・前社長をインタビューした際、前社長は、この枚方Tサイトに非常に注目していた。
理由は、テナントのラインナップではない。
6階と7階にそれぞれ、りそな銀行と三菱UFJ銀行が入店している点である。
銀行という公共施設があることで、人が集まりやすい理由になる。そのため、単純な物販施設よりも集客しやすいのではないかというのが前社長の考えだった。
今回の市役所もこれと同じ発想でプランニングされているといえる。
仮に、当方が主張するようなギフト売り場と食品売り場のみの地方百貨店になったとして、やっぱり、集客はままならないだろう。
そうすると市役所、銀行、あと郵便局なんかを併設するのが効果的な施策ではないかと思う。
たしか、前社長もインタビューの席上では郵便局も併設施設の選択肢の一つとして挙げていた。
今のご時世、ユニクロくらいでないと、衣料品のみで大衆を集客することは不可能だろうと感じる。いろいろと言われているが、多くの人はもう洋服なんてすでにたくさん持ってしまっている。
そりゃ、特定ジャンルで少数に人気の高いブランドはあるが、大衆を集めることは難しい。
そして、それが人口が少ない地方・郊外になるとなおさらである。
となると、役所、銀行、郵便局などの公共性の高い施設と抱き合わせにする方が効果的だと考えられる。
2016年当時にこれに目を付けていたという点では、枚方Tサイトは慧眼だったと言えるし、この点については大西・前社長も慧眼だったといえる。
残念なことに、この手の施策はメディアはあまり取り上げない。
理由は、恐らく「地味」だからだろう。メディアはあまり深く物事を考えないので、媒体映えする打ち上げ花火みたいな施策を取り上げたがる。
地方百貨店の場合なら、「話題の〇〇ブランドを導入したことで集客力アップ」みたいな感じである。
しかし、世の中にそんな一発逆転満塁ホームランみたいな事象はほとんど存在しない。また、一足飛びのイノベーションでピンチを切り抜けられることもほとんどない。そんな物は漫画かドラマの中だけである。
だが、本当の有効手段は、こういう「地味」で「手堅い」ものがほとんどである。
本来、こういう取り組みを伝えることこそが、メディアの役割だと思うのだが。
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