Re:quaL≡ 2021年春夏コレクションより
最後になってしまったが、今回の新型コロナウィルスによる世界的なパンデミックによって、人々は自宅待機を余儀なくされ、経済活動も消費活動も中断を余儀なくさせられたわけだけれど、それは、ファッション界の人々にどんな影響を与えたのだろう。ウィルスの脅威はなくなったわけではないけれど、それが徐々に平静になり、今回のファッションウィークの開催につながった。やっと元に戻った、元に戻さねば、と感じる人たちがいる一方で、もう、同じ所には戻れない、と感じているクリエーターたちは少なくないだろう。
今回のオンライン中心のコレクション発表は、単に新作発表の機会だけでなく、態度表明のいい機会だったのではないかと思う。普段、なかなか立ち止まって言いにくいことを、オンラインなら言える。
ADVERTISING
しかし、パリなどと比べると、そういう改まっての主張は日本ではまだまだ少なかった気がする。
でも、たとえば、最終日(10月17日(土))の「こりしょうプロジェクト(KORI-SHOW PROJECT)」(山口壮大)や「ドレスドアンドレスド(DRESSEDUNDRESSED)」(北澤武志)は、オンラインというより、デジタルだから可能なコンセプトを見せてくれた。
そして、オンライン発表ではなかったが、今シーズンの中で、最も強いメッセージを感じたのが、同じ日の「リコール(Re:quaL≡)」の土居哲也だった。
【全ルック】Re:quaL≡ 2021年春夏コレクション
これまた私の不勉強でこのデザイナーの活動を全く知らないまま、ショーを見た。最初は、マルジェラに影響を受けたゴシックテーストの過剰なコレクション、という印象だったのが、だんだん変化が見えてきて、途中で、子ども2人が出てきたあたりから「ん?」と心に引っかかりだし、そうか、これはこのコロナの時代に人が立ち止まって考えるべきファッションの問題と、それにも関わらず、ファッションに強く惹かれる心を取り上げているのだ、と理解した。それは、流行という形で、次々に服を時代遅れな不用品にしてしまうファッションシステムへの批判であり、大量廃棄への警鐘でありつつ、その中で新しいデザインを探ろうとしている心意気が汲み取れる気持ちのよいコレクションだった。最後に出て来たデザイナーの明るさも印象に残った。
アフターコロナの今、時代を読む模範解答はないような気がする。かつて(といってもほんの1年前)大型店での売れ方でトレンドが決められてしまったり、SNSが流行を左右して、バイヤーまでその後追いをするといった現象があったが、この予期せぬ時間を体験したことで、少なくとも、服やファッション好きな人間は、自分でファッションとの付き合い方を見つける賢明さを身につけたことは確かだと思う。そこでどんな出会いを作れるかが、ファッションブランドに求められることではないだろうか。
【ファッションエディター西谷真理子の東コレポスト】
・コロナと並走するファッションウィーク -vol.1- タークとダブレット
・コロナと並走するファッションウィーク -vol.2- 「big design award」ファイナリストたちの個性的な発信
・コロナと並走するファッションウィーク -vol.3- ファセッタズムの記憶の積層
ADVERTISING
PAST ARTICLES
【西谷真理子】の過去記事
RANKING TOP 10
アクセスランキング
銀行やメディアとのもたれ合いが元凶? 鹿児島「山形屋」再生計画が苦境