■ネット通販最大手のアマゾンが開発した食品スーパー「アマゾン・フレッシュ」がロサンゼルス郊外の富裕層地区にもオープンすることがわかった。早ければ今年12月から遅くとも来年初めにも宅配やカーブサイド・ピックアップのネットスーパーにスーパーマーケットとしても営業を開始する。
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アマゾン・フレッシュの出店先(140 Promenade Way Westlake Village, Thousand Oaks, CA 91362)はロサンゼルス・ダウンタウンから東へ車で約50分のところにあるサウザンド・オークス地区のライフスタイルセンター「プロムナード・アット・ウエストレイク(Promenade At Westlake)」だ。
サウザンド・オークスは白人層が9割近くを占め、世帯年収も10万ドル近くとなる富裕層地区。
プロムナード・アット・ウエストレイクはロサンゼルス近郊にある「グローブ(The Grove)」や「アメリカーナ・アット・ブランド(Americana at Brand)」のライフスタイルセンターを所有するカルーソ・アフィリエイテッドの高級ショッピングセンターだ。
アマゾン・フレッシュが出店する31,000平方フィート(約870坪)の物件には昨年3月まで高級スーパーの「ヴィンテージ・グローサー(Vintage Grocers)」があった。
ヴィンテージ・グローサーはウォルマート創業者サム・ウォルトン氏の弟であるバド・ウォルトン氏の孫娘、ペイジ・ローリー氏がオーナーだった食品スーパーだ。
ヴィンテージ・グローサーは2016年10月のオープンから2年ほど営業していたが突然、閉鎖された経緯がある。
なおヴィンテージ・グローサーが入る前は、プロムナード・アット・ウエストレイクのオープン時から2016年まで営業していたブリストルファームだった(同店はウッドランド・ヒルズに移転)。
アマゾン・フレッシュが出店する場所は、道を挟んで競合の老舗スーパーのラルフスがある。ラルフスと同じショッピングセンター内にはトレーダージョーズも出店しているのだ。
さらに車で4分程度のところには高級スーパーのゲルソンズもあるのだ。ゲルソンズの隣にはアルバートソンズ系列のボンズもある。
先月17日にオープンしたアマゾン・フレッシュ1号店とは客層が大きく異なる。アマゾン・フレッシュ・ウッドランドヒルズ店の周辺はアパートメントやコンドミニアムが占めている。1号店の隣には建設中となっているラグジュアリー・アパートメントもあり、若い客層が多くを占めるのだ。
一方、アマゾン・フレッシュ・サウザウンドオークス近くの住民は年齢が比較的高く富裕層となる。
アマゾン・フレッシュはロサンゼルスだけでもアーバイン、ノースリッジ、ノースハリウッド、ロングビーチにも出店を計画している。
アマゾン・フレッシュは全米でもトップクラスとなる食品スーパー激戦区で一気に店舗数を増やすのだ。IT企業が作った食品スーパーは、ネットスーパーを生かして競合状態に食い入るのだ。
トップ画像:アマゾン・フレッシュ・ウッドランドヒルズ店。アマゾン・フレッシュは富裕層が集まる地区にも出店するのだ。
⇒こんにちは!アメリカン流通コンサルタントの後藤文俊です。アマゾン・フレッシュが出店予定している場所はロングビーチと同様、ちょっとした訳あり物件です。以前あった食品スーパーのヴィンテージ・グローサーはサム・ウォルトンの親族が経営していたお店。しかし、オープンからわずか2年と半年で閉鎖となったいわくつきです。突然の店舗閉鎖に何も知らされていなかったスタッフのレイオフは表向き、この30代の女性オーナーが「高級スーパーのエラワン・マーケット(Erewhon Market)と提携(買収?)」とのことでした。プライベートカンパニーなので内情はよくわかりませんが、実際のところは売上不振による撤退でしょう。周囲には老舗スーパーに囲まれていますから。テコ入れや立て直しができるなら、店名を変えてでも続けているはずです。で、ヴィンテージ・グローサーは現在も超がつくほどのお金持ちが集まるマリブ地区にだけあります。アマゾン・フレッシュは競合スーパーがマネできないネットスーパーにネット通販を生かしたエコシステムで富裕層地区に割って入るのです。
アマゾンの場合、食品スーパーで儲けるという発想はありません。スーパーもアマゾンCEOジェフ・ベゾス氏にとっては「成長のフライホイール(Flywheel:弾み車)効果」のツールの一つでしかありません。
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