コロナと並走するファッションウィーク -vol.2- 「big design award」ファイナリストたちの個性的な発信
ROBYN LYNCH 21SSコレクションムービーより
ROBYN LYNCH 21SSコレクションムービーより
コロナと並走するファッションウィーク -vol.2- 「big design award」ファイナリストたちの個性的な発信
ROBYN LYNCH 21SSコレクションムービーより
オンラインばかりで、少々飽きてきたが、いや、オンラインでの発表は、いいところもたくさんある。物理的な移動が不要だということはその筆頭。東京にこだわらず、海外のコレクションも視聴可能だ。地理的にも時間的にもダイブ可能。それはつまり、東京の発表を海外にいる人が容易に見ることができるということでもある。そう思うと、今回オンラインで発表している日本のブランドの多くは、せっかくのチャンスを生かしているとは思えない。コロナで受けたダメージに引きずられているのか、アフターコロナを“静かな生活”ととらえすぎてはいないだろうか。ファッションは不要不急そのものだという論調があるけれど、だからこそある人々にとって特別なものになりうるのではないか。万人向きではないものに、激しくときめく人がいる、ということはファッションの魅力であり、謎でもある。
で、ファッションウィーク3日目の14日(水)に配信された中で私が注目したのは、昨年9月に発表された第1回big design awardのグランプリ獲得者とファイナリストによる最新コレクション映像である。ウォルター・ヴァン・ベイレンドンクを審査委員長に、アジアを拠点として誕生したユニークなファッションアワード/プラットフォームは、今年3月に公募されるはずだった第2回が、コロナ禍によって中止になってしまったのだったが、サポートの一環で今回のファッションウィークにファイナリストの一部が参加した。
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14日(木)にスケジューリングされていた
・Robyn Lynch(ロビン・リンチ 2019年のBIG グランプリ受賞者 アイルランド出身)
・TISCAR ESPADAS(ティスカー・エスパダス 2019年BIGファイナリスト スペイン出身)
・Fabian Kis-Juhasz(ファビアン・キシュハス 2019年BIGファイナリスト ハンガリー出身)
の3人のデザイナーは、前情報がなくても、個性的な映像に惹きつけられる。
【全ルック】ROBYN LYNCH 2021年春夏コレクション
3人は、新人らしく、コンセプチュアルで初々しい。
中でも、グランプリを取ったロビン・リンチは、アイルランドのニットを組み込んだサイクリングウェアだが、デザイン以上に映像の作り方が、おもしろい。実際の自転車レースの記録映像を使って臨場感を演出することで、月並みなファッション撮影がダイナミックになっている。
ファビアン・キシュハスの「女性であるために女性である必要はない」というメッセージも常識的な女性観を逸脱していて、挑戦的だ。ファッションショーのランウェイを歩くとき、こうは歩かないだろうという動き方や美しいとは言い難いメークにデザイナーが込めたものを読み解くことに興味が湧く。
3つの映像は共に、単なる無観客ショーではなく、服だけでは語ることのできない部分を、強烈なイメージで作り上げているところが、人を惹きつけるのだと思う。服の完成度という点では、発展途上かもしれないが、ファッションは服だけではない、と改めて感じさせられたオンライン配信であった。
興味のある人には、この3人が、ヴォーグイタリアの副編集長SARA MAINOにオンラインインタビューを受けているムービーもYouTubeで紹介されているので、ご覧ください。
【ファッションエディター西谷真理子の東コレポスト】
・コロナと並走するファッションウィーク -vol.1- タークとダブレット
・コロナと並走するファッションウィーク -vol.3- ファセッタズムの記憶の積層
・コロナと並走するファッションウィーク -vol.4- リコール、社会への眼差し
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