ファッションイベント「楽天ファッション・ウィーク東京」に合わせる形で、都内で合同展示会が開催されている。セルリアンタワー東急ホテル(東京都渋谷区)で「PR01.トレードショー(PR01.TRADE SHOW)」、複合施設のカシヤマダイカンヤマ(同)で「新東京(Xin Tokyo)」が行われ、前者は約40ブランド、後者は約10ブランドが2021年春夏シーズンの新作を並べている。実力派デザイナーや若手注目株の出展も多く、意欲的なクリエーションが展開されていた。新型コロナウイルスの感染拡大やセレクトショップの買い付け意欲減退、景気の減速などネガティブなファクターが取り巻く中、有力デザイナーの本音を聞いた。難しい局面でも諦めず、デザイナーたちは前を向いている。
ビアンカ・サユリ「テンダーパーソン(TENDER PERSON)」デザイナー
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ここ半年間は我慢というか、抑えながらデザインをしていた印象です。取引先の注文キャンセルや生産が滞ることもなく、ビジネスは現状維持ができています。アトリエを改装し、週末はショップとして運営することも継続しています。ただ、好きなことができないストレスというか、ファッションデザイナーとして何ができるか、常に考えるようになりました。その中で、リアルなファッションショーへの渇望、発信をしたいと考えるようになったんです。新型コロナが落ち着いたら、日本の状況も変わるのかも知れませんよね。その時にショーができればーー。中国・上海にサンプルを送り、現地で商談を実施しましたが比較的順調でした。2021年秋冬シーズンは、欧州の有力ショールームに出展することも視野に入れています。
飯尾開毅「カイキ(kaiki)」デザイナー
21年春夏シーズンは、オンライン形式で「楽天ファッション・ウィーク東京」に参加しました。前シーズンはショーを急遽中止したので、ようやく参加できたという感じです。14日から「PR01.トレードショー」に出展していますが、やはり対面式の商談に手応えがあります。オンラインだと、素材の風合いや服のフォルム、雰囲気が伝わりずらい。おそらくバイヤーも(新規の)買い付けの判断ができないですよね。デザイナーズブランドは、産地企業と協業してオリジナル素材を製作しますから、生地に対するこだわりも強い。しっかり説明したいし、今季の「カイキ」も触って初めてわかる風合いがあります。オンラインだと服や素材が平面的に見えてしまうので、そこが課題。電子商取引(EC)も画面上で購入を判断するので、デザイナーは判断を促す工夫が必要になります。そうなるとブランドの知名度が重要、併せて会員制交流サイト(SNS)も強化します。バイヤーが地方から東京に来るのは難しい情勢。私がバイヤーに直接説明できる状況になってほしい。
市毛綾乃「ノントーキョー(NON TOKYO)」デザイナー
東京・下北沢に直営店があるので、そこが強みでした。自分たちで運営をコントロールできるので、新型コロナの影響はそれほどありませんでした。素材調達や生産面でも影響は出ていません。しかし、(セレクトショップなど)取引先の状況を聞くと、現状は厳しい。新規の取引先を開拓するのは難しいので、自分たちで出来ることを進めます。自前で運営するECもそうですが、セレクトショップに求められるような商品やブランドでありたい。
>>NON TOKYO 2021年春夏コレクション Women's/Men's
植木沙織「スリュー(SREU)」デザイナー
古着の「KENZO GOLF」を着ているのですが、画像をアップして大丈夫ですか? 前シーズンは悩みに悩んでファッションショーを中止しました。いつかリアルなショーを実施したいし、新しい「スリュー」を皆さんに見せたいですね。その一方で、国内の取引先が広がってきました。ベイクルーズやトウキョウベースといった有力企業が商品を買い付け、その量も増えつつあります。基本は(古着を調達してリメイクするなど)自分たちで生産しているので、手を休めることなく作業し続けています(笑)。元々、海外の売上比率が7割以上を占めていて、海外の取引先では、シャイン(上海)やエクリュ(ソウル)などが継続しています。日本ではシンプルなリメイク服、海外では個性の強いリメイク服が求められます。近年は国内のビジネスが伸びていますが、個性が薄くなってしまっては意味がない。「スリュー」の独自性が大事ということに行きつきました。と、言うことはオリジナリティーのあるクリエーションが必要。手を休めるヒマはありません!
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