TAAKKの会場に向かう人々。新宿御苑で。
今年3月に、新型コロナウイルス感染症拡大という現代日本人にとっては未知の災禍に対応して開催を断念した2020-21年秋冬の東京ファッションウィークだったが、2021年春夏の今回は、感染の恐怖が多少薄らいだこともあり、オンライン配信と一部リアルなショーという混合で、なんとか実現にこぎつけた。
オンライン配信を使うやり方は、6月のパリメンズから実施されていて、無観客のショー形式があれば、バックステージを見せるもの、デザイナーのメッセージで構成されたもの、プロモーションビデオのようなイメージワークなど、ブランドごとに実に多彩な方法を編み出しているのが、見方によっては、通常のリアルなショー以上に受け取るものが多く、ファッションの可能性という意味で、ジャーナリストとしては大変刺激された。7月のパリ・オートクチュールを経て、9月以降のニューヨーク、ロンドン、ミラノ、パリと、この形式は続いている。パリでは、シャネルやルイ・ヴィトンのように、巨大な会場を使って、観客の間隔を空けたショーを開催したところもあった。
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そんな期待を込めて臨んだ東京ファッションウィークであるが、その初日印象に残ったのは、TAAKKとdoublet。皮肉なことに、どちらもリアルなショーを貫徹したのだった。とはいえ、私がインビテーションを持っていたのは、TAAKKだけで、doubletはリアルなショーの記録映像を見ただけだけど。
最近メンズブランドをあまり熱心に見ていないので、それぞれどんな作風なのかは事前に予習した。今やネットを通じて、アーカイブがプレスを通さずに視聴できるのは、驚くべき進化だ。実物に触れたことがないというハンディを持ったまま、どのくらい近づけるか、挑戦してみたいと思う。
【全ルック】TAAKK 2021年春夏コレクション
TAAKKは、新宿御苑の大木戸門から入った丘の上にある温室が会場。続々と集まった観客(通常よりははるかに少ないのだろうけど)が日を受けて丘を登っていく姿は、どこか象徴的だ。温室内の観覧用の通路がランウェイになり、その両側に観客はぽつぽつと立つ。乾いたパーカッションの音が鳴り響く中早足で登場するモデルたちの印象も悪くない。何よりもコレクションの内容―特に色調や繊細な素材感を確認するには、この近さが必要だと実感。植物が生い茂る中、ベストマッチなコレクションだったのではないかと、ここに居合わせた幸運を感じたものだ。
もう一つのdoubletについては、私が適当なことを書くより、この記事を読んだ方がいいと思うのだけど。TAAKKとdoubletをずっと見てきたFASHIONSNAPの記者による分析である。
【注目コレクション】タークとダブレットの妙な縁 - 2021SS -
まず、ゾンビたちの響宴(狂宴?)をテーマに、謎の館の中で繰り広げられる様子を楽しみながら映像を鑑賞。登場するのが、プロのモデル&一般人で、メーキャップと特異な動きで、全員がゾンビに見える。寺山修司ばりの物語で、いちばん注目したのは、ここでゴシックなどの装飾性を排した服が選ばれていることだ。服の着方はなにせゾンビだから、めちゃくちゃなんだけど、そこがスマートなショーとは一味も二味も違う奥深さで、これが単なる新作発表を旨とするコレクションだというところに、ファッションのおもしろさを感じたものだ。
ショーに登場するのが特権的な外人モデルばかりというのに辟易している私などは、こういう方向がやっと出てきたと感動している。
【全ルック】doublet 2021年春夏コレクション
【ファッションエディター西谷真理子の東コレポスト】
・コロナと並走するファッションウィーク -vol.2- 「big design award」ファイナリストたちの個性的な発信
・コロナと並走するファッションウィーク -vol.3- ファセッタズムの記憶の積層
・コロナと並走するファッションウィーク -vol.4- リコール、社会への眼差し
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