ADVERTISING

「ZARA」のインディテックスがコロナ禍で行った決算対応とは?

「ZARA」のインディテックスがコロナ禍で行った決算対応とは?

ファッション流通コンサルタント ディマンドワークス代表 齊藤孝浩
ファッション流通ブログde業界関心事

先ごろ発表された、ZARAのインディテックスグループの2021年上半期決算(2-7月)に目を通しました。

ADVERTISING

コロナショックの影響により売上高前年比44.3%の減収と同社上場以来初の赤字となった第1四半期に続き、

第2四半期は売上高前年比は31.4%減ながら、営業黒字化(営業利益率6.6%)を果たしました。

まずは、売上が31%減でも損益分岐点を上回っている、営業黒字を出せるなんて、すごい会社だと素直に感心します。

結果、上半期の売上高は累計で前年比37.3%の減収、半期では依然として営業赤字のままです。

一方、足元の8月以降は売上高前年比11%減まで回復して来ているようなので、このまま回復に向かえば、第3四半期累計で黒字化は果たせるでしょう。

この間の4連休に新宿店を覗きましたが・・・ムチャ混みで、フィッティングルームに長蛇の列でビックリするくらいでした。

半期決算の結果だけ見ると、世界一のインディテックスもコロナショックには勝てず、赤字に陥ったとなりますが、

この間、同社は表面的な売上大幅減と営業赤字の裏で、いくつかの先手を打っていることが、決算書を見るとわかります。

ひとつは、以前もブログで紹介しましたが、前期末(20年1月末)にコロナショックの影響を見越して、春夏在庫を評価減したことです。

コロナショックの影響を受けなかった2020年1月期は

売上高  3兆4,028億円(前年比8%増)、

営業利益高 5,749億円 (同9.5%増)

の過去最高益となる増収増益でしたが、

この期は

1)コロナ前から長年進めて来た店舗のスクラップ&ビルドを加速し、前年の2.5倍、売上高対比で言うと10%にも上る減価償却費を計上し大量閉店に備え、なおかつ、

2)1月末から世界各国で表れ始めた新型コロナウィルス影響に備えて、1月末時点の春夏在庫に対して、約355億円の在庫評価減のための引当金を計上しています。

もし、この在庫評価減がなければ、同期の営業利益は前年比16%増の大幅増益となっていたところでした。

ふたつめは、21年第1四半期がコロナショックの直撃で赤字になると見るや、引き続き前年の1.4倍の減価償却費を経費計上し、あえて大赤字を出したことがわかります。償却前の利益(EBITDA)はしっかり黒字だったところを見ると、上半期の業績を犠牲にしてでも、下半期以降の負担を軽くするために、ある意味「膿出し」をしたように思えます。

インディテックスという会社は、消費者の購買行動の変化を見据え、2010年にオンラインビジネスを始め、2013年に「店舗とオンラインの完全統合プラットフォーム(=OMO)」宣言をして以来、店舗のスクラップ&ビルドを進め、オンラインで買って店舗で受け取る、店舗で見てオンラインで買うことができるデジタルトランスフォーメーションインフラを整え続けて来た会社。

現在、出店国は世界96店舗になり、オンライン販売実施国は66か国ながら、世界の202の国と地域にオンライン販売できる体制を整え、宣言から10年後となる2022年にグループ全体でその体制が整うとのことです。

これは、RFIDを含め、10年がかりのIT投資によって店舗、EC倉庫、本社倉庫の在庫情報がリアルタイムに一元化されたことで、オンラインで注文した顧客に店舗在庫からも出荷ができるようになったことの「たまもの」です。この体制であれば、今後、コロナショックのような外出自粛があっても、オンライン活用で全店の店舗在庫を近隣の顧客に届けたり、密を避けて店頭で手渡したりできるようになれば、被害も最小限に抑えられるようになるでしょうね。

そんな10年単位の長期的ビジョンを持ち、危機があるごとに、企業体質を見直し、単年度ではなく3年平均の売上と利益の成長率を考えて来た同社だからこそ成せる業であって・・・上記で述べたような、同社の決算期ごとの調整は決して短期的な財務テクニックの話ではなく、中長期ビジョンに基づく余裕から来るものであることもわかります。

同社の直近のプレスリリースなどによれば、

2000年代は製造小売業と業務の内製化に磨きをかけ、ファッションビジネスのリスクに対する「柔軟性」(=flexibility)を構築した10年。

2010年代は店舗とオンラインの完全統合(=integrated store and online platform)に磨きをかけた10年で、この体制はあと2年で完成するようです。

そして、ここからの10年、彼らの視線はこれからのサステナブル経営(=sustainability)、特に※サーキュラー・エコノミー(=circular economy; 循環型経済)に向かっているとのことです。

世界のトップランナーである同社からは引き続き目が離せませんね。

※「サーキュラー・エコノミー」については、今年から来年以降の、サステナブル経営関連の重要キーワードになりそうなので、またあたらためて、ブログでご紹介したいと思います。

ADVERTISING

JOB OPPOTUNITIES

最新の求人情報(求人一覧

求人

リテール・マーチャンダイジング・コーディネーター

パルファン・クリスチャン・ディオール

リテール・マーチャンダイジング・コーディネーター

年収

500万 〜 700万

詳細を見る

ジャーナル

女性リーダーの育成には、戦略的なソーシング、人材採用とオンボーディングプランが必要。企業の意識...

女性リーダーの育成には、戦略的なソーシング、人材採用とオンボーディングプランが必要。企業の意識...

記事を読む

求人

クライアント・ディベロップメント・マネージャー

BVLGARI

クライアント・ディベロップメント・マネージャー

詳細を見る

ジャーナル

【11/23(土)】「ARC’TERYX CLIMBING DAY」開催のお知らせ

【11/23(土)】「ARC’TERYX CLIMBING DAY」開催のお知らせ

記事を読む

ジャーナル

「人との繋がり」が何よりも大切。楽天イーグルス森井社長が語る仕事の心得

「人との繋がり」が何よりも大切。楽天イーグルス森井社長が語る仕事の心得

記事を読む

ジャーナル

【イベントレポート】BVLGARI名古屋の現役スタッフが語るラグジュアリービジネスの魅力

【イベントレポート】BVLGARI名古屋の現役スタッフが語るラグジュアリービジネスの魅力

記事を読む

コラボパートナーの募集情報
コラボ募集一覧

コラボ

【いろはグランホテル松本駅前】コラボパートナーになってホテル...

IROHA GRAND HOTEL 【いろはグランホテル松本駅前】コラボパートナーになってホテル...

詳細を見る

コラボ

”水辺の宿場町”をデザインコンセプトとするアートホテル「東京ベイ潮見...

東京ベイ潮見プリンスホテル ”水辺の宿場町”をデザインコンセプトとするアートホテル「東京ベイ潮見...

詳細を見る

コラボ

ドイツ腕時計ブランドの"ZEPPELIN"とのコラボレーションウォッチパートナ...

ZEPPELIN ドイツ腕時計ブランドの"ZEPPELIN"とのコラボレーションウォッチパートナ...

詳細を見る

コラボ

自治体の枠にとらわれない幅広いコラボ実績をもつ「サガプライズ!」とのコラボレーシ...

サガプライズ! 自治体の枠にとらわれない幅広いコラボ実績をもつ「サガプライズ!」とのコラボレーシ...

詳細を見る

Powered by

現在の人気記事

NEWS LETTERニュースレター

人気のお買いモノ記事

公式SNSアカウント