■アメリカでは11月の第4木曜日が「感謝祭日(Thanksgiving Day:サンクスギビングデー)」となり、2020年は11月26日が祝日となる。
ADVERTISING
もともとはイギリスからの移住者が神の恵みに感謝したことが始まりとされている。今では宗教的な意味合いは薄れ、親族が集まり七面鳥を食べる「大切な家族行事」に変わっている。
10年前から年末商戦の買い物客をより多く、より早く取り込もうと翌日のブラックフライデーセールをサンクスギビングデーに前倒しして営業する小売りチェーンが増加した。
数年前にはサンクスギビングデーの午後4時からオールド・ネイビーやゲームストップが激安セールを開始し、午後5時にはメイシーズやベストバイ、トイザらス(ベビーザらス)、ビクトリアズ・シークレット、コールズがドアバスターという時限セールを開始した。
ウォルマートやターゲット、シアーズ、ディックス・スポーティング・グッズは午後6時にセールを開始、これが習慣化していた。
しかし今年は新型コロナウイルス感染拡大を受けた衛生対策として多くのチェーンストアが今年のサンクスギビングデーは店舗を休業すると発表している。それだけではない。ブラックフライデーのセールが店からオンラインストアに大きく移行するのだ。
店で大々的なセールを行えばお客が殺到する。パンデミックの影響で入店制限や時短営業もあり、多くが店に入れないことになる。しかもソーシャル・ディスタンシングで入店行列も通常よりも長くなってしまう。
安全性を求める上ではブラックフライデーでは店舗でのセールは控えめにせざる得ないのだ。
これに対応するようにウォルマートは23日、新型コロナウイルス感染の世界的大流行を受け、これまでとは全く異なる年末商戦を発表した。
まずクリスマス商戦の開始期間を感謝祭日後に縛らず前倒しなどを行い期間を長くする。
ニューノーマルを反映した巣ごもり現象によりセール対象品をエクササイズ器具やアウトドアグリル、自転車、キッチン家電に拡大する。
アパレルもアスレジャーやラウンジウエア、スリープウエアなど自宅で長時間過ごすライフスタイルに合わせた衣料品を特価にしていくのだ。
自宅でペットと過ごす時間も増え、塞いだ心の癒やしとなるペットを新たに迎える家庭が急増していることもあり、ペット用品もセールの対象に広げる。
最近始めたサブスクリプションの「ウォルマート・プラス(Walmart +)」などネットスーパー需要の急増も見込まれるため、ウォルマートは季節的な一時雇用として2万人を採用する。
ウォルマートは国内各地のフルフィルメントセンター等、オンライン注文に対応する臨時スタッフを増やし、競合のアマゾンとの競争に備えるのだ。
そのため一時雇用のスタッフ時給は15.75ドル(約1,660円)から、最高で23.75ドル(約2,500円)となる。一時雇用はの期間は2021年1月1日までとなるが、一部にはレギュラーポジションを得られる機会も提供するという。
バーゲンハンターはそれでも店に行って買い物をしたがるかもしれないが、大半はオンラインで買い物を終わらせ店に行くことを敬遠することになる。
チェーンストアにとって課題となるのは、コロナ終息後もこれが続くかどうかということだ。
トップ画像;ウォルマートブラックフライデーセールにならぶ行列。店の裏側にまで行列は伸びていたが、前の人と1.8メートルの距離をあけるソーシャルディスタンシングをこの行列に導入したら、とんでもない距離の行列となる。入店制限に加えて時短営業を考慮に計算をすれば、ウォルマートに入れるのは年明けだ!?
⇒こんにちは!アメリカン流通コンサルタントの後藤文俊です。今年のクリスマス商戦は最後まで静かなままになりそうです。一番大きなポイントは、激安セールでもお客が店に殺到すれば入場制限がかかってしまい店に入れないということです。しかも行列は前の人と距離を開けなければならないので長~いフェンスに沿ってジグザグ通路をひたすら歩かなければなりません。こういったネガティブ情報はすぐにSNSで拡散するので「じゃあ店に行くのは止めよう」となるかもしれません。入場制限をかけねばならないのでチェーンストアにとって店売上の伸びは例年ほど望めません。それまで見越して大手チェーンはセールを前倒しでオンラインでやってしまいます。アマゾンのプライムデーも10月~12月にあるのでチェーンストアもそれに合わせて早め早めに前倒しセールにならざる得ないでしょう。サイバーマンデーは一つのピークになるのでしょうが、いつもどこかでオンラインセールと集中を欠くというか、メリハリのないものになりそうです。
寒空の下、誰もが行列には並びたくないので店売りはかえって穴場になるかもしれません。
ADVERTISING
PAST ARTICLES
【激しくウォルマートなアメリカ小売業ブログ】の過去記事
RANKING TOP 10
アクセスランキング
銀行やメディアとのもたれ合いが元凶? 鹿児島「山形屋」再生計画が苦境