D2Cのライフスタイルブランド「フートウキョウ(Foo Tokyo)」が好調だ。主力商品であるパジャマの中心価格は3万円台とD2Cにおいては比較的高価格帯ながら、2019年から今年8月までの毎月の売上は前年同月比を上回っており、年間で約2〜3倍に成長。新型コロナウイルスの流行に伴う外出自粛により自宅時間を充実させたいというニーズが高まったことなどから、特に3月以降の問い合わせが増加しているという。
フートウキョウの創業者で代表取締役の桑原真明氏は東京大学大学院で計量経済学・国政協力学等を研究した後、メリルリンチ日本証券に入社し、企業の財務戦略やM&A、IPO、資金調達に係るアドバイザリー業務を担当。退職後にファッションスクール「Tokyo Fashion technology Lab」のブランドディレクターコースに通い、2018年にフートウキョウを立ち上げた。桑原氏は多忙だった証券会社時代に癒しや休息に費用をかけていた実体験から、フートウキョウでは自宅にいる時間を充実させるプロダクトにフォーカス。衣類は肌に触れ、癒しと寛ぎに密接に関わると考え、パジャマをはじめとしたルームウェア、グッズの展開を決めた。
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ブランドのテーマには「『ただいま』から『いってきます』までをデザインする」を掲げ、夜帰宅して翌朝にまた外出するまでのライフスタイルを、様々なプロダクトによって提案。桑原氏は前職時代を振り返って「多忙になればなるほど、何もせずにいる休息の時間を怠惰だと感じてしまっていた」と話し、「何もしないで贅沢にリラックスできるラグジュアリーな時間を提供したい」と考えたことから、コンセプトを「何もしない=ラグジュアリー」とした。ブランド名は息を吐く時の擬音語「ふぅ」からインスピレーションを得ており、「ブランド名を声に出す時、一息つけるように」という思いを込めた。桑原氏はブランドを立ち上げるにあたり、学生時代に自主団体で行ったファッションショーの運営で関わった人脈を辿って、メゾンブランドに卸しているテキスタイルメーカーや国内屈指の縫製工場との取引を実現。ルームウェア関連の価格はシルクパジャマが2万5900円、コットンパジャマが1万9000〜2万7000円、バスローブが5万4500円で、このほか、化粧水や乳液(各3980円)、美容液(4980円)、タオルギフト(2700〜1万8750円/いずれも税別)などライフスタイル商材も展開している。
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販路は自社ECを中心とし、百貨店の催事への出店やポップアップの開催などリアルな場での販売にも積極的に取り組んでいる。購入客は25〜45歳と幅広く、男女比は半々で特にパジャマやタオルのプレゼント需要が高い。桑原は「百貨店で通常の催事を開催した後は、外商限定の催事に呼ばれることも増え、上質さを求める人たちからフートウキョウの品質が認められてきていると実感している」と手応えを語る。
他ブランドや他業種との協業にも力を入れている。京都の旅館「右源太」ではアメニティとしてオーガニックコットンタオルを提供しており、箱根のリゾート「箱根リトリート fore」とのコラボレーション事業ではブランドのルームウェアやオーガニックコットンタオル、スキンケアが体験できる宿泊プランを展開。「フートウキョウは上質なおうち時間やリラックスタイムの提供を軸にしているため、パジャマが売れるだけではそのヴィジョンを実現できない。旅先で寛ぐ時間のお供として使ってもらえば、僕たちは商品の良さも伝えられるし、施設側も通常とは少し違った価値を宿泊客に提供でき、互いに得るものがある」とし、宿泊施設とのコラボには特に積極的な姿勢を示す。また8月に発売した「モトナリ オノ(motonari ono)」のテキスタイルを使ったコラボパジャマは、百貨店での催事で客からの反応が良く、セレクトショップから2021年春夏シーズン向けに卸の相談を受けるなど好調だという。
ビジネスモデルの参考にしているのは「モンクレール(MONCLER)」。ワンプロダクトに特化してブランドイメージを定着させ、品質やブランド力の基盤を構築しながら商品の幅を広げる戦略に倣い、パジャマを主軸に商品ラインナップの拡充を図っているという。また「モンクレール ジーニアス(MONCLER GENIUS)」を模範例に、協業を増やしていく考えだ。
直営店の出店も視野に入れており、ショールーム型の店舗を検討している。ブランドの商品単価が高いことから、単純に物を売る店ではなく「如何にファンを作れる店にするかが重要」と語る。その一例として、宿泊施設の一室をフートウキョウがキュレーションし、商品の販売も行うなどカスタマーエクスペリエンスに重点を置いた販売方法にも関心を示している。
目標は5年以内に売上100億円規模を達成すること。そのための施策として、年内にも新たに催事を行う計画を進めている。このほかブランドの世界観を体験してもらう取り組みとして、将来的にはファッションショーの開催も視野に入れる。桑原氏は「学生時代にショーの運営を経験し、ファッションショーが持つ力と可能性を実感した。これまで他ブランドによるプライベートタイムをイメージしたインスタレーションなどは発表されていたが、僕たちのようなパジャマブランドのショーでどこまで魅せられるか試したい」と意欲を示した。
■フートウキョウ:公式サイト
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