

皆さま、こんにちは。前回に引き続き、東京コレクションのレポートを書かせて頂くことになりました。ご一読頂けますと、とても嬉しいです。どうぞよろしくお願いします。 さて、ショーや展示会を観る際には、「視点」を一つ見つけて、そこから分析するようにしています。とは言っても、自分のなかで便宜的に設定する分析視角です。ですので、作り手の意図とは異なる場合もあるのですが、とりあえずの視点を設定し、そこから判断できるものとできないものとを選り分けながら、情報を整理していきます。判断できないものに対してはまた別の見立て方を探っていきます。このレポートでは、ショーや展示会の詳細を報告するというよりも、そうした一つの視点から考えたことを少し書きたいと思います。
今回取り上げるのは、「ミントデザインズ(mintdesigns)」についてです。会場に着いてまず目に飛び込んできたのは、ゲルハルト・リヒターの8枚のガラスを重ねた作品でした。次いで、冒頭で登場したコートに「SANDWITCH(サンドイッチ)」という文字が書いてあったのが、何となく引っかかりました(これは、あまり関係ないと思いますが...)。そんなところから、「層(レイヤー)」という視点から見ていくことにしました。光沢のある生地の上に切り絵を重ねたようなルックや、銀箔や生地をプレスして貼り付けたルックなどが気になりました。

そもそも、ミントデザインズの特徴にもなっている「プリント」は、生地の上に刷って載せるという点で、工程自体にレイヤーを含みます。加えて、プリントの上にプリントを重ねたり、フロッキープリントや透明な樹脂プリント、粘土質の高い顔料を使ったりなどして、奥行きや厚みを表現してきました。そうした多層構造を作り出すことは、「smoke」(2015-16AW)や「prism girl」(2015SS)といった近年のショーにおいて、更に強調されていたのではないでしょうか。重ねていくということ。それがミントデザインズの方法論ではないかと僕は考えます。

ファッションというのは、本質的にレイヤーを作り出す行為です。糸と糸を織り重ねて布を成形する。身体の上に衣服を重ねていく。そうすることで、表面を作り出し、身に纏うことで、外見を獲得する。ミントデザインズの指針に、「ファッションをプロダクトとして提案していく」というのがありますが、生地のレイヤーを設計する、あるいは服のレイヤーを設計するという観点から見ていく必要がありそうです。また、その仕事を通じて、ファッションの本質について改めて考えてみるのも面白いのではないでしょうか。 ちなみに、今シーズンのテーマは「The Garden」ですが、そのイメージとしてデザイナーの2人は、アンディ・ウォーホルの花やデレク・ジャーマンの庭をショー後の取材で挙げていました。

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