ドリーミーな色使いやポジティブなデザインで、2012年春夏の東京コレクション(10月16〜22日)はピースフルなトーンに華やいだ。前回は東日本大震災のあおりを受けて中止となっているだけに、各ブランドはそれぞれの持ち味をあらためてはっきりと打ち出し、前向きムードの服に元気を込めた。世界的にクラシカルなトーンが主流となった2011-12年秋冬トレンドとは様変わりして、エナジーやハピネスをまとうという次なる潮流が見え始めた。
今回の東コレで目立ったのは、ハッピーでロマンチックな色。ピンクやイエロー、グリーンなどがランウェイをにぎわせた。色の味わいにもパステル調やネオンカラー、トロピカル色、シャーベットトーンなど、気持ちを浮き立たせるようなアレンジが加えられていた。

モチーフや柄にもエナジーがあふれた。ワイルドなアニマル柄をはじめ、植物モチーフ、ドット(水玉)柄、ボーダー(横縞)、マリン模様などがあしらわれた。

異なるプリント同士でスタイリングする「柄on柄」の提案も多く、「着るハッピー」を印象づけた。ビーチアイテムやリゾートテイストを持ち込むブランドも相次ぎ、日本を覆う暗さを吹き飛ばそうというデザイナーの気概が感じられた。
軽快なスポーティー感を、モードに落とし込んだ作品も現れた。フーディーやジップアップなどと組み合わせたり、手の込んだマテリアルや異素材とミックスして、スポーツテイストをひねり返した。

シースルーやシャイニー素材を使った、まばゆいサマーレイヤードの提案も目立った。これまでのカワイイ的なレイヤードとは異なる、大人っぽいムードを放つ、軽やかで涼やかな新しい夏の装いを演出していた。

シノワズリ(中国趣味)や南国情緒を盛り込んだエキゾチックなデザインが増える一方で、和の素材感や、日本のものづくりをキーにした作品も見られ、エスニックでオリエンタルな雰囲気が濃くなった。国内ならではの織りや染めの技を生かした作品からは、日本からしっかりとファッションを発信していきたいという願いも感じ取れた。
ニット使いが得意なブランドはニットを掘り下げ、アートやクチュール、ダークファンタジーが持ち味のブランドはその世界観をさらに突き詰めた。東日本大震災を受けて、「今、うちのブランドは何を発表すべきか」を問い直す必要に迫られた各デザイナーはおのおののブランドコンセプトや手法、テイストに立ち返り、パワーアップして1年ぶりの東コレに帰ってきた。

その提案はどれも、自分たちの立ち位置を再確認できたという頼もしい自信に満ちていた。ファッションにできることは確かに存在していて、おしゃれを通して日本を元気づけることはできるし、穏やかな日々が戻るのを早める力にもなれるはずだという、クリエイターの想いは、ランウェイを彩ったカラフルでチアフルな作品たちが彼らに代わって雄弁に物語っていた。

(文:ファッションジャーナリスト 宮田理江)
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