2012年のファッション業界
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春らしいシャーベットカラーの流行で穏やかに始まった2012年のファッションシーン。東日本大震災の影響があって、おしゃれ需要が冷え込んだ11年からの気分を当初は引きずっていたが、震災1年あたりを節目にムードが変わる兆しが現れた。12年前半にはレースやシフォン等を使ったやさしげな装いが人気を集めた。この時期に放映された、小篠綾子氏をモデルにしたNHKの連続テレビ小説「カーネーション」も話題を集めた。(文:ファッションジャーナリスト 宮田理江)
世界のモードシーンをざわめかせる新デザイナー就任の報が相次いだ年でもあった。新生「SAINT LAURENT(サンローラン)」のクリエイティブディレクターに元「DIOR HOMME(ディオール オム)」のHedi Slimane(エディ・スリマン) 氏が就任。ブランドロゴも「SAINT LAURENT PARIS」に変わった。John Galliano(ジョン・ガリアーノ)氏が退いた「Christian Dior(クリスチャン・ディオール)」には、「JIL SANDER(ジル サンダー)」を辞任したRaf Simons(ラフ・シモンズ)氏が就き、彼の抜けた「JIL SANDER」には創業デザイナーのジル・サンダー氏本人が返り咲いた。年の瀬になって、「BALENCIAGA(バレンシアガ)」のデザインを、Alexander Wang(アレキサンダー・ワン)氏が務めるという知らせも飛び込んできた。

「CÉLINE(セリーヌ)」が呼び込んだミニマルの流れは世界に波及。無駄をそぎ落としたシンプルなフォルムがもてはやされた。マニッシュとのクロスオーバー傾向も強まって、「ダンディーレディー」の出で立ちも生まれた。シルエット面ではウエストの飾り裾、ペプラムが見直された。半面、アクセサリーで着こなしに表情を加えるアレンジが広がり、コスチュームジュエリーが世界的なブームとなった。また、付け襟やストール、タトゥーストッキングやシアータイツなどのレッグウエアに代表されるような、ちょっとした「プラス1」の小物も関心を集めた。
国内ビジネスの領域では、バーゲンセールの日程変更が波紋を広げた。三越伊勢丹が夏のセール開始日を例年より2週間近く遅らせ、大手百貨店やファッションビルの間で足並みが狂った。大丸と松坂屋を傘下に抱えるJ・フロントリテイリングはパルコを子会社化した。日本進出5年目となった「H&M」は着実に浸透を続け、「Marni(マルニ)」「Maison Martin Margiela(メゾン マルタン マルジェラ)」とのコラボも成功させた。

外資系カジュアルブランドでは「最後の大物」と呼ばれてきた米国発カジュアルファッションブランド「AMERICAN EAGLE OUTFITTERS(アメリカンイーグル アウトフィッターズ)」が上陸。「GAP(ギャップ)」の低価格帯ブランド「Old Navy(オールド ネイビー)」も日本進出を果たした。スウェーデン発の「ACNE(アクネ)」は旗艦店を東京・青山にオープンした。
大型商業施設のオープンが東京都内で相次いだ。「渋谷ヒカリエ」「ダイバーシティ東京 プラザ」「東急プラザ 表参道原宿」「東京ソラマチ」などが立て続けに開業。東京・銀座に「ドーバー ストリート マーケット ギンザ・コム デ ギャルソン」がオープン。百貨店も大丸東京店が増床開業。東武百貨店池袋店はセレクトショップを本格的に迎えた。伊勢丹新宿店もリニューアルを続けていて、ファッションフロアの本館の3階が様変わりした。関西では阪急うめだ本店が全面開業して話題も人も集めた。

ユニクロはグローバル旗艦店「ユニクロ銀座店」を開いたのに続き、ビックカメラと同居する新発想店舗「ビックロ」で世を驚かせた。プランタン銀座にも出店した。「UNDERCOVER(アンダーカバー)」を率いるデザイナー高橋盾とコラボレーションしたコレクション「UU(ユニクロ アンダーカバー)」も展開した(12年秋冬で終了)。
「ZOZOTOWN(ゾゾタウン)」が11月から送料を無料にし、ポイント還元率を10%に引き上げたのは、ファッション通販を巡るネットショップ間の競争が生き残りを賭けたステージに突入したことを物語る。アマゾンや楽天が本腰を入れ、ファッション通販の勢力図は日々、書き換えられ続けている。SNSやコーディネート投稿などと連動する動きも勢いづいていて、スマートフォンやタブレットといった「いつでもショップ」はこれからの主戦場となりそうだ。

13年は景気回復への期待が膨らみそうで、春先から心を弾ませるモチーフ・色が登場する気配。街を染め上げるブームやドラマティックな装いなど、おしゃれ消費が活気づくと期待したい。
(文:ファッションジャーナリスト 宮田理江)
■宮田理江 - ファッションジャーナリスト -

複数のファッションブランドの販売員としてキャリアを積み、バイヤー、プレスを経験後、ファッションジャーナリストへ。新聞や雑誌、テレビなど数々のメディアでコレクションのリポート、トレンドの解説などを手掛ける。コメント提供や記事執筆のほかに、企業・商品ブランディング、広告、イベント出演、セミナーなどを幅広くこなす。著書にファッション指南書『おしゃれの近道』『もっとおしゃれの近道』がある(共に学研)。 http://fashionbible.cocolog-nifty.com/blog/
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