

「DIANE von FURSTENBERG(ダイアン フォン ファステンバーグ)」はファーストルックからホワイトの装いを披露して、清新なムードを漂わせた。白の透けるレースブラウスに、同じく薄手でトランスペアレントなジャケットとスカート、パンツで合わせたホワイトルックはドレッシーで繊細。
フラワーモチーフやペールカラーに楽観を乗せた。しわやドレープ、ひだやたるみなどの布の表情を巧みに取り込んで、装いに深みをもたらした。無造作に1枚布をまとったようなドレスにも、テキスタイルの奏でる調べが響き渡った。シグネチャーアイテムのラップドレスはカシュクールの打ち合わせが深めで、シルエットに優雅さがさらに加わった。白枠の横長スクエア型サングラスもクールなフェースルックを生み出していた。
■TORY BURCH(トリー バーチ)

「TORY BURCH(トリー バーチ)」のショーは、白い水玉模様が映えるコーラルカラーのスリーブレス・ワンピースで幕を開けた。自らがソーシャライツであるトリー・バーチ氏のアッパーなライフスタイル哲学に裏打ちされた気取らないエレガンスは60年代風のノスタルジックな装いにも貫かれていた。
縦と横のラインを自在に操った。波を打つ細いボーダーは視線を揺らし、動きを演出。白地に細いストライプが涼しげなパンツスーツはフォーマルとリゾートの境目を行き来するかのよう。デコルテを艶やかにさらしたストラップ・ロングドレスはバスト下から幅の不均等なティアードが裾まで続くゴージャスな仕立てで、縦に長いシルエットを描いていた。
左右の袖で柄の異なるブラウスや、丸いラフィアをたくさん配したトップスなど、しゃれっ気を感じさせる提案も相次いだ。フリンジで飾ったバッグは次のイットバッグを予感させる。
■Thom Browne(トム ブラウン)

「Thom Browne(トム ブラウン)」のウィメンズショーは、膝まで届きそうに着丈の長いジャケットがギャングの代名詞的存在になっている「ズートスーツ」をアレンジ。禁酒法時代のギャングが似合いそうな白ストライプの太襟スーツを、レディース仕様にひねり返した。
服のかたちにとどまらず、スタイリングでも常識をひっくり返した。ストラップが異常に長い斜め掛けバッグは膝の位置にバッグ本体が来るトリッキーなこしらえ。太いプリーツスカートの足首からは、パンツの裾がのぞく。肩に過剰なボリュームを与えて、猫背っぽく見せるいたずらは奇抜で茶目っ気たっぷり。足元は白いふくらはぎ丈ソックスを紳士靴に合わせ、不思議なコケット感を立ちのぼらせている。
マティーニグラスや吸い口付きたばこをモデルに持たせて、ダークなイメージも添えた。蝶ネクタイ、カマーバンド、サスペンダーなどのダンディー小物を持ち込んで、フェミニンをかえって引き出す裏技。自らの愛するアメリカントラッドをいじり倒す姿勢には、アバンギャルドが本来持つ批評精神やフロンティアスピリットが感じ取れる。
■Boy. by Band of Outsiders(ボーイ バイ バンド オブ アウトサイダーズ)

「Boy. by Band of Outsiders(ボーイ バイ バンド オブ アウトサイダーズ)」は白をキートーンに、布の風合いでおしゃれに奥行きを出した。襟とベルトだけが黒で、全体がホワイトのスリーブレス・ミニワンピースはイノセントでありつつ、ほのかにセクシー。膝上丈のボックスプリーツスカートは正面よりも両脇が短いサーキュラー風の仕立て。ロングスカートも裾の丈を変えて、膝周りの景色を華やがせた。
丈を巧みに操って、布の陰影を引き出した。床まで届きそうなスーパーロングの白ジャケットは風にたなびく裾がダイナミックに揺れる。白い3段ティアードのストラップドレスは広がった裾が爪先まで覆い隠す。プリーツやドレープ、ギャザーが装いに深みを増していた。
7ブランドそれぞれのアプローチは異なるものの、いずれもおのおのの「軸」をぐらつかせないで、力いっぱいの直球を投げ込んでいるところに共通点がある。「トレンドよりもスタイル」という言葉が無言のうちに聞こえてきそうなクリエーションはこれら7ブランド以外からも感じ取れた。9.11から10年の節目にNYデザイナーたちが示したのは、時を超えて愛されるブランド、消費者の「共感」を呼び込むブランドを目指す意志だったように見えた。
(文:ファッションジャーナリスト 宮田理江)
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