
フィンランドの写真家アルノ・ラファエル・ミンキネンの自然と裸体を撮影し た作品(建仁寺・両足院)
2013年に始まり、今や春の年中行事となった国際写真フェスティバル「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭」(以下、KYOTOGRAPHIE)が、今年も京都市内15カ所の特別な会場で4月23日(土)から5月22日(日)まで開催されている。(取材・執筆 西谷真理子)
回を追うごとに注目度が高まっているこのKYOTOGRAPHIEの他にない特徴は何といっても、主催者が個人というところ。フランス人写真家のルシール・レイボーズ(42歳)と照明家の仲西祐介(47歳)の二人が東北大震災の後一念発起し、写真を介しての国際的な情報交換と文化のプラットフォーム作りを目指して、自ら代表となって実行委員会を組織した。彼らの国際的なネットワークを駆使して個人や企業、行政に掛け合い支援者を探し、写真や美術の専門家の協力を得て出品作家を選出。また京都市/京都府の協力を得て美術館やギャラリーはもとより、寺社仏閣や歴史ある町家など京都ならではの場所を会場にするというこの土地ならではの計画を実現させてきた。その結果、現在では日本でも類を見ない写真フェスティバルに成長した。KYOTOGRAPHIEはフェアでなくフェスティバル、写真を売るための場ではなく鑑賞するための場と位置づけ、会期中には教育プログラムも用意。写真の芸術的な位置付けを引き上げ、写真を通して国際的な交流を図りたいという二人の構想は、きめ細かく大胆な会場構成にも行き渡っている。




2016年度のテーマは「いのちの輪 Circle of Life」。「繰り返される歴史、生と死の意味するもの、他とのつながりを、写真をとおして考える」とプログラムにうたっているように、難民の歴史を集めたマグナムのフォトグラファー達が撮り下ろしてきたドキュメンタリー(無名舎)(写真2)があれば、貧民列車と言われるグリーントレーンの中のユーモラスで生き生きした人々の様子を描いた中国の写真家チェン・ハイフェンの作品集(ロームシアター京都)(写真3)があり、不妊治療によって誕生した新生児の1時間以内の顔のクローズアップを、胎内を模した会場で展示したティエリー・ブエット「うまれて1時間のぼくたち」(堀川御池ギャラリー)(写真4)などとアプローチは様々だ。

ファッション好きな人なら「コンデナスト社のファッション写真でみる100年」(京都市美術館別館1階)(写真5)は必見だろう。ニューヨーク、パリ、ミラノ、ロンドンにあるコンデナストの写真アーカイブからキュレーターが特別に選んだ100年にわたるファッション写真が並ぶのは、壮観である。ファッション雑誌に写真を使用したのがコンデナスト氏の功績だったということにも感心させられた。銀座のシャネル・ネクサスホールで展示されたものがさらにバージョンアップして展示されている。

3カ所で展示されているサラ・ムーンの作品(写真6)もぜひ見て欲しい。まず訪ねたいのは、京都大学近くの招喜庵(重森三玲旧宅主屋部)での「Time Stand Still」。土佐和紙にプリントされたモノクロームの風景写真が静かな日本家屋に溶け込んでいる。対照的に、烏丸御池近くのギャラリー素形(すがた)での「Late Fall」は巨大に引き伸ばされた鮮やかな色の鳥や花がほの暗いスペースの中で存在感を放っている。何度もサラ・ムーンの写真展を行い写真集も刊行してきた祇園の何必館・京都現代美術館は、関連企画として新刊の作品集「Sarah Moon 1,2,3,4,5」の刊行記念の個展を開催。古いものと新しいもの、ファッションとランドスケープなど、コントラストの解釈が見ものだ。ファッション雑誌で取り上げられてきたサラ・ムーンとは一味違うサラ・ムーンを京都で満喫してみては?(取材・執筆 西谷真理子)
KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2016
会期: 2016年 4月23日(土) - 5月22日(日)
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フィンランドの写真家アルノ・ラファエル・ミンキネンの自然と裸体を撮影し た作品(建仁寺・両足院)
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