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【インタビュー】デザイナー菊池武夫 ブランド復帰と追いかける夢

デザイナー菊池武夫

Image by: FASHIONSNAP

2012.12.03 Mon. - 09:00 JST

デザイナー菊池武夫

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【インタビュー】デザイナー菊池武夫 ブランド復帰と追いかける夢

デザイナー菊池武夫

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2012.12.03 Mon. - 09:00 JST

 およそ50年に渡ってデザイナー人生を歩み、メンズファッション界の第一人者として活躍してきた菊池武夫氏は今、「ファッションは刺激」だと語る。今年、約8年前に身を引いた自身のブランド「TAKEO KIKUCHI」のクリエイティブ・ディレクターに復帰。閉塞感が漂う現代に"活"を入れるべく、再び第一線でファッションの可能性に挑戦しているという。新しい「TAKEO KIKUCHI」を象徴する旗艦店のオープン日に、菊池氏の思いを聞いた。

 ウィメンズの注文服の制作からキャリアをスタートした菊池氏は、1970年に友人とBIGI(ビギ)を立ち上げ、後に設立したMEN'S BIGI(メンズ ビギ)では一世を風靡した。フランスにも展開を広げ、パリや東京でコレクションを発表。1984年にワールドに移籍し、立ち上げたのが自身のブランド「TAKEO KIKUCHI」。軌道に乗せた後、2004年にクリエイティブ・ディレクターのポストを後任に引き継いだ。その後も新ブランド「40CARATS&525」を立ち上げるなどして活動していたが、2012年に「TAKEO KIKUCHI」ブランドに復帰。デザイン・ディレクター福薗英貴氏とともに新体制を組んでブランディングに関わる全ディレクションを担当し、アジアを中心とした世界進出も視野に入れている。

 今から26年前、東京・西麻布に複合商業スペースの先駆けとして安藤忠雄氏の設計で「TKビルディング」をプロデュースした「TAKEO KIKUCHI」のデビュー当時と同様に、菊池氏の復帰後第一弾の大仕事は路面店の出店だ。「TAKEO KIKUCHI渋谷明治通り本店」は、カフェやアトリエを併設して"人と自然にやさしい空気感"を目指したというコンセプトショップ。ここから新しい「TAKEO KIKUCHI」を発信していくという。

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―旗艦店のオープンを迎えた今の心境は?

 店舗の構想は以前からあったんですが、具体的な計画が進んだのは今年に入ってから。なかなか現実的になるのに時間がかかりましたね。ビルの設計では長坂常君(スキーマ建築計画)の独創的な発想に共鳴し、今の姿に着地しました。これまで様々な店舗に関わってきましたが、集大成と言えるものになったのではないでしょうか。

―道路と融合したような自然な空気感を大切にされたそうですが、これまでの経験を生かした集大成として特にこだわった部分は?

 一番気になっていたことは、現代の生活自体の主流がカジュアルになっていることなんです。スーツを着るのは主に仕事の時で、何かあればドレスアップする習慣も残っているのに、それらを1つのショップで両立させることが難しかった。生活スタイルの延長線上として服が存在していて、カジュアルスタイルもビジネススタイルも一貫した感覚で提案できる空間を第一に目指しました。

―販売フロアと同じ空間にアトリエがあるという店舗設計は珍しいですね。

 ここにいれば、大半のことが生で感じることができると思います。自分は過去を振り返らない性格で、いつも新しいことが頭の中でクルクルしているんですよ。この店で時代の空気感を感じながら、未来を見ていきたいと思っているんです。一応、会社にも行きますけどね(笑)。

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―これまでも、あらゆる時代の空気を肌で感じてきたのではないかと思います。現代に対する考えは?

 「閉塞感」を感じずにはいられませんね。先日、アジア諸国を巡った時に感じたのは、日本にはない圧倒的なエネルギーでした。もともと日本は独自の文化を築いてきたんですが、ファッションでは欧米の文化を早くに取り入れて、そして早くに成熟しきってしまったという感があります。カジュアル化と同時に変化も著しい世の中で、一旦リセットする必要性を感じていました。

―それが第一線に復帰した理由のひとつでしょうか?

 それは大きいですね。若い世代に引き継ぐために身を引いた「TAKEO KIKUCHI」だったんですが、その後の8年間で客観的に見ていて気付いたこともありました。一度成功すると、それを維持するために動きづらくなるものです。世の中の閉塞感と同時に会社もブランドも成熟しきってしまったのかもしれません。今もう一度、原動力となるエネルギーを注ぐことが出来るのなら、と思い復帰を考えました。お騒がせのような存在かもしれませんね(笑)。

―デザイン・ディレクターの福薗英貴氏と共に新体制で「TAKEO KIKUCHI」がリスタートを切りました。復帰後の自身の役目をどのように考えていますか?

 変えることや、活気を与えることでしょうか。気になっていたのは「TAKEO KIKUCHI」という名前を聞けば「こういう服があるだろう」と、ある程度イメージできるということです。29年間続いているブランドとして、それはそれで正しい。でも安定だけでは求められているものの本質がつかめず、次への可能性が感じられなくなるでしょう。ファッションはいつでも新しいことを期待させるものでないといけない。若い人と協力しながら提案力を強くして、かつ着る人に対してダイレクトにやっていきたいと思っています。

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―大きな役目を担っての復帰ですね。服作りやディレクションにおいてモットーはありますか?

 モットーというか自分の生き方として、ひとつだけあるのは「リアリティ」なんです。世界や日本、自分が生きている時代の中でどうあるべきかを現実的に感じられなくなったらダメだと思っています。情熱をもって現実を生きること。そして1人のパワーはたいしたことはなくても、チームワークを充実させて同じ方向に発信できれば大きい力になるでしょう。

―新しいチームワークがスタートしてから、方向性や課題などは見えてきましたか。

 まだ走り出したばかりですから、これからです。この仕事にはスピードが必要ですが、ゆったりも必要。でも僕は欲張りなんで、やりたいことがあるとやらずにはいられないんです。これからの課題としては、人材育成でしょうか。優秀な人はいると思いますが、今の時代だとデザインの発展に対して躊躇してしまう部分があるのでは。もっと若い力を外に発信できるようにしたいと思っています。

―73歳で第一線に復帰しました。今後の目標を教えてください。

 まずは今の現状を良くしていくこと。日本の中で活力がなかったら意味がないですからね。「TAKEO KIKUCHI」としては、アジア進出の準備を進めています。それから僕自身は好奇心が多いから刺激がないとつまらないんですよ。ファッションは刺激。それが続く限りはやります。頭にあったことは形にして頭から出したいんですよね。常に夢をもって、それを具現化すること。人生でいろいろ経験してきたので、自分のできる範囲で人の夢の手助けもしていきたい。できるかはやってみなければわかりませんが(笑)。夢は実現しないと楽しくないでしょう。

■菊池 武夫(きくち たけお)

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1939年 東京千代田区に生まれる。 1961年 文化学院 美術科卒業。 1962年 原 信子 アカデミー卒業。 1964年 注文服の制作をスタート。      コマーシャル用のコスチュームデザインやファッション写真の衣装制作を手掛ける。 1970年 パリでの海外生活などを経て友人と(株)BIGI設立。 1975年 (株) MEN'S BIGI を設立。 1978年 パリに(株) MEN'S BIGIヨーロッパを設立。同年パリにてコレクションを発表。 1984年 MEN'S BIGIを退社。同時にワールドに移籍し「タケオキクチ」を発表。 1986年 自らのプロデュースによる複合商業スペースTKビルディングを西麻布にオープン。 1996年 監督・王家衛、主演・浅野忠信による短編映画「wkw/tk/@7'55"hk.net」をプロデュース。 2002年 6年ぶりに東京コレクションに参加。 2004年 「タケオキクチ」のクリエイティブ・ディレクターを後任に引継ぐ。 2005年 自らのディレクションによるブランド「40CARATS&525」スタート。      クールビズ推進協議会共同代表として、"COOL BIZ collection 2006"のデザインを手がける。 2012年 「タケオキクチ」クリエイティブ・ディレクターに再就任。

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この日の装いはカジュアル。「よく歩くので8割はスニーカーなんです。前はもっとアクセサリーを着けてたけど、最近は少しシンプルになったかな。」(菊池)
(聞き手・小湊千恵美)

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