春夏のキーワード5
Image by: FASHIONSNAP
〜アシンメトリー〜
◆mintdesigns(ミントデザインズ)
左右や前後が不ぞろいの「アシンメトリー」は今回の主役級ディテールとなった。これまでは左右の裾丈をずらす程度の生かし方が多かったが、片側だけにプリーツを配したり、ドレープを片寄せしたりといった、凝ったアシンメトリーが増えてきた。「mintdesigns(ミントデザインズ)」は左がストライプ布で右が光沢マテリアルという、左右で全く異なる質感の素材ハイブリッドを提案。ウエストあたりから左脇だけにカラフル布を垂らすトリッキーな遊びも目を楽しませた。

◆Ujoh(ウジョー)
異なる3枚のスカートを重ねばきしたかのように見える重層的なレイヤード風ボトムスを披露したのは「Ujoh(ウジョー)」。ワンピースも斜めのカッティングが身頃を長く横切り、動きを引き出した。薄手のワンピースはあえて身頃を覆い尽くさない形にしたことで、レイヤードの鮮度を上げた。左右を対称にそろえすぎない、計算された「食い違い」が装いに不規則なリズムとウィットフルな気分を忍び込ませていた。

◆divka(ディウカ)
東コレで初のランウェイショーを開いた「divka(ディウカ)」の作品はもはや左右対称という約束事を忘れてしまったかのようにフォルムを自在に操った。巧みなドレープで布の表情を際立たせ、斜めに打ち合わせるカッティングでドラマを組み上げる。胸の前で布を重ね、裾で分かれる「逆カシュクール」がテキスタイルの音楽を奏でた。布の動きに自由度が増した分、レイヤードにも深みが出ていた。

〜ラッフル〜
◆LAMARCK(ラマルク)
「LAMARCK(ラマルク)」はラッフルを打ち出した。トップス裾のペプラムのような古典的なポジションではなく、トップスの両脇やスカートのウエストに配して、劇的な見栄えに導いている。イエローの飾りラッフルがフレッシュなエナジーを注ぎ込んだ。背中側の丈を長くしたワンピースは、ピンクの裏地にロマンティックを語らせた。布をたっぷり使って優美な雰囲気を呼び込んでいる。

◆DRESSCAMP(ドレスキャンプ)
壮麗なラッフル使いを披露したのは、グラマラスを持ち味とする「DRESSCAMP(ドレスキャンプ)」。大ぶりのラッフルを服のあちこちに咲かせて、大輪の花に包まれたような着映えに仕上げた。ネック周りをぐるっとラッフルで囲んだり、袖にラッフルをずらりと連ねたり。さらには、肩口に巨大なラッフルを迎えて、「過剰」の美とたわむれた。ケミカルなつやめきも程よいキッチュ感を帯びていた。

◆beautiful people(ビューティフルピープル)
「beautiful people(ビューティフルピープル)」は定位置のトップス裾にラッフルを置いたが、張り出し加減はかなりたっぷりめ。ラッフル以外はコンパクトに仕立てて、ボディーラインを引き立たせている。レースを多用してロマンティックを薫らせた。ウエストをシェイプする半面、ボトムスをふくらませ、ボリュームを操った。

〜垂らす〜
◆KEITA MARUYAMA(ケイタ マルヤマ)
帯やリボン、紐(ひも)を「垂らす」というディテールが着姿に躍動感をもたらした。「KEITA MARUYAMA(ケイタ マルヤマ)」はチョーカー風に巻いたリボンを首から長く垂らした。背中にも細い紐を垂らし、バックショットを彩った。スカーフは髪ごと巻いて「真知子巻き」風に。1970年代ブームで復活したフリンジはショルダーバッグにどっさりあしらった。クラッチバッグや靴もフリンジで華やがせていた。

◆Hanae Mori manuscrit(ハナエ モリ マニュスクリ)
ベルト使いが巧みだったのは「Hanae Mori manuscrit(ハナエ モリ マニュスクリ)」。ワイヤーロープ状のねじった細ベルトは端を長く垂らし、リラクシングな見え具合に整えた。ボディーの素肌に直に巻いたり、アンクレット風に足首に巻いたりするスタイリングも見せた。着物ライクに巻いた帯は無造作っぽく遊ばせた。ワンピースの裾からはフリンジを長く躍らせている。

◆FACETASM(ファセッタズム)
「FACETASM(ファセッタズム)」はシャツ身頃の布地をわざと余らせ、ノンシャランと結んで垂らした。シャツ裾からはみ出したような、ひとつながりの垂れ下がりパーツがユーモラスな表情を生んだ。身頃や袖にはまるでおみくじをたくさん結びつけた柱みたいに短い紐を結わえつけてある。ウエストからは何本も紐を垂らして動きを演出。結び目や垂れ下がりを組み合わせて、装いに朗らかでいたずらっぽいムードを招き入れていた。

健康的で程よいエロスはグローバルトレンドでもグラマラスやロマンティックと連動する形で勢いづいている。ディテールへのこだわりは、プレイフルの流れとも調和して、加速する傾向にある。かつての東コレはテイストの幼さが指摘されていたが、参加ブランドの厚みが増し、マーケットへの目配りも行き届いてくる中、大人っぽさや上質感が求められるようになっていて、今回の東コレのディテール志向はこういった変化が背景になっているようだ。
【2016春夏東コレ総括】
・初参加ブランドが続々、次代を担う若手が台頭
■宮田理江 - ファッションジャーナリスト -

複数のファッションブランドの販売員としてキャリアを積み、バイヤー、プレスを経験後、ファッションジャーナリストへ。新聞や雑誌、テレビなど数々のメディアでコレクションのリポート、トレンドの解説などを手掛ける。コメント提供や記事執筆のほかに、企業・商品ブランディング、広告、イベント出演、セミナーなどを幅広くこなす。著書にファッション指南書『おしゃれの近道』『もっとおしゃれの近道』がある(共に学研)。 http://fashionbible.cocolog-nifty.com/blog/
ADVERTISING
最終更新日:
ADVERTISING