かつてファッションブランドの魅力を伝える主役は写真だった。しかし、動画共有サイトやソーシャルメディアの浸透に伴い、動画がその王座に取って代わろうとしつつある。物語性や特別感を託しやすいことから、ブランド側も動画をファストファッションとの差別化手法として重視している。単に新作をイメージカット的に映すのではなく、ブランドや作品のオリジナリティーを印象づけるような凝った映像が増えてきたのも近頃のブランド発信動画の傾向と言える。(文:ファッションジャーナリスト 宮田理江)
■LACOSTE
たとえば「LACOSTE(ラコステ)」が流したテレビCM「The Big Leap」は、恋人同士の甘酸っぱいショートストリーに仕立てられている。主人公の男性はカフェの片隅で好きな女性と向かい合って座り、おそらく彼女とは初めてのキスをし始める。勇気を振り絞って彼のほうから、唇を寄せていく。嫌がられてしまうかも知れないとおじける彼の内心は、巨大なビルの屋上からジャンプする無謀な跳躍で表現される。墜落しかけ、もうだめかと思われた瞬間、彼女が応じる。最後に「LIFE IS A BEAUTIFUL SPORT」の名コピーが映し出され、このショートムービー風のCMを締めくくる。
主人公の男性はポロシャツを着ているが、大写しはない。人生をポジティブに生きる選択をした彼のアプローチを「スポーツ」と位置付け、そんな素敵なスポーツに満ちた人生を共に歩むのにふさわしいパートナーとしてブランドを静かに引き合わせる。誰もが経験したことのありそうな、勇気と決断が求められる瞬間。それを詩的に映像化してブランドの価値と重ね合わせた。テニスをしなくても、ポロシャツ派でなくても、自然とブランドに好感を抱くような、演出はさりげないが、心に残る映像だ。
ブランドの世界観を代弁する表現として映像作品に力を入れる取り組みが増えてきた。ファッションブランドのプロモーションは従来、写真が柱だったが、SNSや動画投稿サイトの定着を受けて、映像を通じてクリエーションやブランド哲学を伝ようとする例が相次ぐ。写真に比べ、動きや音楽で立体的にアピールしやすいうえ、感情を揺さぶる効果や物語に引き込む力に優れているところも、映像プロモーションが選ばれる理由だ。
■STELLA McCARTNEY
「STELLA McCARTNEY(ステラ マッカートニー)」は2014-15年秋冬向けにモデルのKate Moss(ケイト・モス)を起用したムードフィルムを公開した。「KATE DREAMS」と題されたこの映像は、ケイトが眠っている間に見た夢を追体験するような構成。非現実的な夢の世界が新コレクションの着想と交錯する映像詩に仕上がっている。
■CHANEL
「CHANEL(シャネル)」も映像に力を入れるブランドの筆頭格に挙げられる。デザイナーを務めるカール・ラガーフェルド氏が撮ったショートフィルムでは100年の創業当時を再現。女優のキーラ・ナイトレイが主演した。フレグランス「N°5」の新しい広告でも映画『ムーラン・ルージュ』『華麗なるギャツビー』のバズ・ラーマン監督が新フィルムを手がける。スーパーモデルのジゼル・ブンチェンを起用した映像は2014年末に公開される見込みだ。
次のページは>>リーバイスリーバイス、ユナイテッドアローズ、伊勢丹オリジナルダンス動画など
ADVERTISING
最終更新日:
ADVERTISING
F/STORE
新着アイテム
1 / 5
様々なファッション動画
現在の人気記事
NEWS LETTERニュースレター
人気のお買いモノ記事